ep.7 策を練る
パチパチと拍手する音が玉座から聞こえる。
自然と全員の視線が玉座に向いた。
すると、そこにはダレクが不気味なほどの満面な笑みで拍手をしていた。
「師の教えで成長する弟子の姿……十分な人間物語を見せていただきました。人はこうして手を取り合いながら成長していくのですな。なんとも――」
ダレクは目を細くし、嘲笑した。
「無駄なことでしょうな。人も魔族となれば、このような苦労をしなくて済むというのに」
ダレクはレクスを見た。
「そうですな、ここであなた方にお見せしましょう。人が魔族になることでどれほどの進化を遂げるのかを……」
ダレクの手がゆっくりとレクスに伸びていく。
「っ……!させるか!」
イゼルはそう言うと、光魔法でダレクの手を弾いた。
「ぐあっ!」
光は矢となりダレクの手に直撃した。
ダレクは手を押さえながら、その場で前屈みになっていた。
「……おのれ」
ゆっくりとイゼルを視線で捉えると、恨みがましく睨みつけた。
その額からは汗が流れている。
「……まだ私が話している最中というのにっ……!ふっ、まぁいいでしょう」
ダレクはそう言いながら玉座の前に立ち塞がった。
光の矢を受けたダレクの手は、紫色に変色し始める。
まるで焼かれたように皮膚がひび割れ、干からびたように崩れていった。
ダレクはその様子を眺めていた。
「面白い……だが、この程度では私には届かない」
崩れていたダレクの手は再び修復し始めた。
「効かないのか……」
イゼルの額に汗が滲んだ。
「……アシェル、手を貸してください」
イゼルはアシェルをまっすぐ見つめた。
「まずは、私がシリウス王子と女王陛下のもとまで道を切り開きます。アシェルは二人のもとに行き、祝福の力で二人についた闇の力を払って欲しいのです」
「僕にそんなことができるかな……」
アシェルは目を伏せた。
「アシェルは一度、禁域で歪み人を消したでしょう。その力で二人を正気に戻せるか試してほしいのです……ネリーが動きを止めているうちに」
アシェルがネリーに顔を向けると、ネリーは歯を食いしばりながら、小さく頷いた。
「私もいつまで保てるかわからないから……!早くしてちょうだい」
イゼルにとっても、今はこの提案しかないのであろう。
ここで、断ることなどアシェルにはできなかった。
「……わかったよ。でもできなくても文句は言わないでよ……」
アシェルは深く息を吐いた。
「そんなことしませんよ。できなければ、また他の方法を考えればいいのです。ダレクのことは気にせずアシェルはアシェルのすることだけに集中してください」
イゼルはニコリと微笑んだ。
その様子にダレクが鼻を鳴らした。
「なんとも余裕のある言い分ですな。そんなこと私がさせるわけないでしょう」
ダレクはそう言いながら、風魔法を発動した。
突風が吹き荒れた。
その圧力だけで床が抉れ、壁に亀裂が走る。
そして、アシェルたちの体にいくつもの傷を刻んだ。
しかし、致命傷にならないのは、イゼルの防御壁のおかげであった。
「くっ……!アシェル、女王陛下たちが巻き込まれる前に、急いでください……!」
アシェルはイゼルを信じ、女王とシリウスのもとへ一直線に進んでいった。
ネリーに動きを止められている二人はまるで石のように固まっている。
その視線だけが、アシェルを捉えていた。
「今、助けます」
アシェルは二人に触れ、目を閉じ、祝福の光を発した。
目の奥から意識が吸い込まれるように、光の中へアシェルの意識は沈み込んでいった。




