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理を越えし担い手たち  作者: いがらしつきみ
第十一章:王宮クーデター編 ― 崩れる均衡
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ep.6 ネリーの成長

 女王とシリウスは一直線に走り出し、剣を大きく振りかぶった。


 イゼルとネリーが咄嗟に防御壁を張り、攻撃は防ぐことができたものの、その衝撃にネリーの防御壁にヒビが入った。


「くっ!」

「ネリー、すぐに次の攻撃がきます」


 弾かれた女王とシリウスは後ろに後退しながらも、再び剣を構え、何度も攻撃を重ねてきた。


「くっ!すごい力……」

「人の底力を引き出しているのでしょう。自分たちの体が壊れていくことを知らず、彼らは動き続ける」


 イゼルは前に出ると、風を纏った一閃で二人を弾き飛ばした。

 体勢を崩した二人は、すぐに構え直しこちらを睨みつけていた。


「アシェルはエルディ様をお願いします。……ネリー、結界は張れますか?」


 ネリーはイゼルの言葉にピクリと反応したが、下を向いた。


「ネリー?」

「前の戦いで私の力が全く魔族に通用してなかったの、イゼル師匠は見てないでしょ?私のこの力じゃ相手の動きを止めることができないのよ……」


 ネリーは悔しそうに唇を噛んだ。

 イゼルは考えるように沈黙したあと、ネリーを見た。


「ネリー、あなたの力は誰にでも通用する力ですよ。私が教えた結界なのですから、私が責任を持ってそう言います」


 ネリーはそれでも不安そうにステッキを握りしめた。


「あなたはここまで、努力を積み重ねてきたでしょう。魔族に通用しなかったのは、悔しいですが、その時は力の差があまりにもあったから……けれど、あなたはここにきてからもその努力を惜しまなかった。大丈夫です。自信を持ってください」


 ネリーは迷いを残しながらも、頷くとステッキを構えた。


「まずは、女王陛下とシリウス王子の周りに結界を展開するのです」


 ネリーは言われた通りに女王とシリウスの周りに結界を展開した。

 すると、行き場を失った二人は結界を破ろうと激しく暴れ始めた。


「っ……!」


 結界が大きく歪んだ。

 ピシッ――という音とともにヒビが走り、それは瞬く間に広がっていく。


 押し潰されそうな圧力に、ネリーの手が震えた。


「あっ……!イゼル師匠、このあとは……どうすれば」

「落ち着いてください。押さえ込もうとしなくていいです」


 イゼルの声は落ち着いていた。


「相手の動きに合わせるのです。流れに逆らうと弾かれます」

「流れに……」

「目を閉じて相手の気と魔力の流れを感じるんです。あなたならできます」


 ネリーは息を飲み、ゆっくりと目を閉じた。


 気持ちを落ち着けようにも、二人は荒れ狂う波のように結界を叩きつけてくる。


(押さえ込むんじゃない……合わせるのよ……!)


「んっ……!」


 結界が大きく歪み、形を変えていく。

 女王とシリウスの体を包み込んで、絡みつくように。


 そして――


 一瞬、全ての音が消えたようだった。

 ネリーがゆっくりと目を開くと、二人の動きが、ぴたりと止まっていた。


「……止まった……」


 ネリーは荒い息を吐いた。

 震える手を見つめ、そしてゆっくりと握りしめる。


「……やった……」

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