ep.2 救出
アシェルたちは長い城の階段を駆け上り、別塔への渡り廊下を走って行った。
その先にも続く階段を、再び駆け上がり、一同は息を切らしながらも足を止めず、先へ進んで行った。
前からくる兵たちはノルドが次々と打ち倒していく。
開けた場所にやってくると、そこには一つの扉があった。
扉の見張りであろう兵士がこちらに気づくと、持っていた槍を構えた。
「ノルド騎士団長……!?お止まり下さい!これ以上はダレク様の許可がなければ」
「悪いな」
そう言うとノルドは剣を鞘に入れたまま、一歩踏み込んだ。
次の瞬間、兵士の体が崩れ落ちた。
「すげぇ……」
レイヴは瞳を輝かせながらノルドの姿を見ていた。
倒れた兵士を壁にもたれかけさせると、ノルドはドアノブに手をかけた。
「この中にイゼル殿とネリー殿がいるはずです」
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
ノルドを先頭に、扉をゆっくりと開けると、そこには手を拘束されたイゼルたちがいた。
「アシェル!?」
イゼルとネリーは驚いたようにアシェルたちを見ていた。
「師匠、ネリー!無事でよかった」
「アシェルとレイヴも……怪我はありませんね」
イゼルの元へ駆け寄り、アシェルとレイヴは頷いた。
ノルドが剣で拘束の鎖を断ち切ろうとしたが、バチッという音とともに、ノルドの剣は根元からひび割れ、二つに折れた。
それはまるで、鎖に触れるものを拒むかのようであった。
「な、なんだ!?」
ノルドは動揺し、後ろによろめいた。
「何か魔法がかけられているのかもしれません。私もいろいろ試したのですが、解読不可能な魔法でした……」
「イゼル殿でも……!?」
ノルドが恐る恐る、鎖に触れようとすると、イゼルは鎖を自身の方へ引き寄せた。
「もしかすると、魔族の力である可能性があります。……あなた方に何か害があるかもしれません。直接触れないように」
「しかし、どうすれば……」
誰も答えを出せず、時間だけが過ぎていった。
アシェルは鎖をまじまじと眺めていた。
そして、そこには見たことのない紋が描かれていることに気づいた。
よく見ると、その紋から黒い靄が発せられている。
それは以前見た、大樹にまとわりついていた黒い靄にも似ていた。
(もしかしたら、僕の祝福の力でこの力を相殺できるかもしれない……だけど)
アシェルは自身の手を見て唇を噛んだ。
(僕が聖導師であることがバレる可能性だってある。……だけど、ここで師匠たちを置いて魔族と対面しても僕の力だけでは太刀打ちできない……なら)
アシェルは立ち上がり、イゼルの前までやってきた。
「アシェル……?」
アシェルはそっと鎖に手をかざした。
「アシェル!触れてはダメです!魔族の力かもしれないのですよ!」
「大丈夫……」
アシェルの手から温かく、静かな光が溢れ出した。
溢れる祝福の光を確認し、アシェルは鎖を掴み、思い切り左右に引いた。
鎖は砕け、鎖に刻まれていた紋は消えた。
後ろからガタリと音がし、音のした方へ振り向くと、そこには腰を抜かしたように座り込むエルディの姿があった。
「い、今の力はなんですか……!?光の魔法……?しかし、光の魔法具でも、こんな光は見たことがない……!」
エルディは驚きと興味の目をアシェルに向けていた。
アシェルはなんと言おうかとまごついていると、イゼルがアシェルの肩を叩き、任せろといったような瞳を向けた。
「これは光の魔法ですよ。光の魔法と言っても一種類ではないですからね」
イゼルはそう言いながら、流れでネリーや自身の手首についた枷を魔法で外した。
「いえ、違う……!私は八十年、この目で魔法を見てきました。魔法に憧れを持ちながらも、魔法を使えない者だからこそ、私の魔法への憧れ、探究は奥深い……!これは譲れません!その力は魔法ではない……微かな魔力も感じませんでした」
エルディは指を刺しながら、鋭い目つきでアシェルとイゼルを見た。
「あなた方、何か隠しておられるな?本当のことをおっしゃっていただけない限り、先には通せません。……あなた方が本当に信頼にたる者たちなのか、今ここで証明していただきたい。これはノクシェルドの臣下であるものの務め。国の安寧を守るためなのです!」
エルディはそう言い、立ち上がり、道を塞ぐように前へ出た。
「困りましたねぇ……今はここで立ち止まっている暇はないのですが」
イゼルは困ったように頭を掻いていた。




