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理を越えし担い手たち  作者: いがらしつきみ
第十章:ノクシェルド国編
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ep.8 波乱の始まり

 正面にいるレクスはアシェルとレイヴを睨みつけていた。

 完全に敵対している目であるとすぐにわかった。


「レクスには関係ないことだ。俺たちは偶然に出会って話していただけだ。悪いがそこを通りたい。道を開けてくれ」


 シリウスはそう言うと、アシェルたちに目配せをした。

 アシェルたちはシリウスの後ろに隠れるように後をついて行った。


「何を計画しているんだ?」


 シリウスが横を通る前に、レクスが口を開き、道を塞いだ。


「なにがだ?」

「賢者の弟子たちと何かこそこそと話していただろ?……ああ、そういえば昨日の夜も母上と接触を図っていたそうだが……お前たちの目的はなんだ?」

「おい、レクス、その言い方はないだろ」


 シリウスはレクスを睨みつけたが、レクスは気にする様子もなく、アシェルたちを見つめていた。


 その空気を破るようにダレクが笑った。


「いやはや、あなた方はあの賢者の仲間としてこの国に入ったそうですが……本当なのですかな?本当の目的はこの国の混乱に乗じて、この国を乗っ取ろうとしているのではないのですか?」


 その言葉にレイヴが前に出た。


「そんなことするわけねぇだろ!お前の方が……むぐ!!?」


 アシェルは急いでレイヴの口を塞ぎ、首を横に振った。


(下手に刺激すれば、師匠に迷惑がかかる……!)


 レイヴは納得がいかないといった表情だったが、小さく頷いた。

 小さな抵抗としてダレクを睨みつけている。


「ほぉぉ、怖いですなぁ。しかし、現にあなた方が来てから魔物の目撃情報が増えたのですよ。……レクス様、外部の者は自由にさせておくよりも我らの目が届く場所に閉じ込めておいた方がよろしいのでは?」


 レクスが答える前にシリウスが前に出た。


「ちょっと待て。それは俺が許さない」


 ダレクはシリウスの言葉に反応することなく、懐から黒い玉を取り出した。


「レクス王子、ご覧ください。私が預かっている《邪視の玉》を……。古い対魔族の遺物でしてね。正式な儀で使うものではありませんが……これが光るということは、魔族である“可能性が高い”証」


 ダレクはニヤリと笑いながら、玉をアシェルたちの方へ伸ばした。

 すると、玉は大きく光を放った。


「そんなの後出しだろ!そんな玉、信用できるか!」


 レイヴは叫んだが、ダレクは首を横に振った。


 レクスは唇を噛んだ。

 視線が一瞬シリウスを捉えたが、すぐに逸らされ、そして下を向いた。

 アシェルにはその瞳が揺らいでいるように見えた。


 しかし――


「いい、ダレク俺が許可する」


 レクスの言葉にダレクは満足そうに頷くと、右手を挙げた。


「兵たちよ。この者たちを捕えろ」


 その言葉を合図に、通路の両端から兵たちが姿を現した。

 気づけば、通路の奥にも背後にも、兵の影があった。

 最初から、逃がすつもりはなかったのだ。


「おい!俺は許可してないぞ」


 シリウスは兵たちをかき分けながら叫んでいたが、その声は誰にも届かなかった。


「兵たちよシリウスも捕えろ。……そして、俺についてこい」

「……は?」


 シリウスは言葉を失った。

 次の瞬間、兵たちはシリウスの腕を掴んだ。


「おい!お……お前ら、やめろ!」


 シリウスが兵の拘束に抵抗していると――

 鈍い音が響いた。


「ぐっ!!」


 一人の兵がシリウスの腹に重い一撃を入れた。

 兵は躊躇することなく意識を手放したシリウスを担ぐと、レクスを見た。


「おい!いくらなんでもやりすぎだろ……!シリウス王子はこの国の第二王子だろ!」

「俺はこの国の第一王子……そして未来の王となる者だ。俺の命なのだから、兵がしたことは許されることだ」


 レイヴの叫びに対し、レクスは冷ややかな視線を向け、そして兵に「ついて来い」と命じると、城の中に姿を消した。


 アシェルとレイヴはシリウスから引き離され、抵抗する間もなく、別の場所へと案内された。

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