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理を越えし担い手たち  作者: いがらしつきみ
第十章:ノクシェルド国編
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ep.7 嵐の前の静けさ

 窓から差し込む朝日でアシェルは目を覚ました。


「おはようございます。アシェル」


 アシェルは寝ぼけ眼を擦りつつ、体を起こした。

 横を向くと、イゼルはベッドの上で本を開いたまま、こちらを見ていた。


「アシェル、昨日の夜どこに行っていましたか?」


 その言葉にアシェルの心臓は飛び跳ねた。

 どうしようかと目を泳がせるが、イゼルから逃れられるはずもなく、昨日あった出来事を素直に話した。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


「なるほど……女王と」

「ごめんなさい、勝手に」

「……」

「……師匠?」


 イゼルはしばらく沈黙した後、ゆっくりと首を横に振った。


「いえ、むしろその方が良かったのかもしれません」


 イゼルは立ち上がると持っていた本を机に置いた。

 振り返るとニコリと微笑んだ。


「あちらにも話が伝わっているようであれば、話もしやすいですし……思ったよりも問題は早く解決するかもしれませんね」


 アシェルはホッと胸を撫で下ろした。


「しかし、この話をするのはしっかりと人を選ぶことですよ。誰にでも言っていいわけではありません。今回は女王陛下だったから良かったのですが……」


 アシェルはイゼルの言葉に何度も頷いた。

 アシェルがしっかりと理解したと判断したのか、イゼルは微笑んだ。


「さぁ、レイヴを起こしましょう。王族の方々は今日は忙しく、私たちも部屋での朝食になるそうです。昼過ぎに女王陛下のもとに向かいましょう。それまで、私たちは自由に過ごしましょう」


 アシェルは頷き、レイヴを起こした。

 レイヴを引きずりながらも身支度を整えさせると、朝食をとり、アシェルは再び城の探索に出かけた。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


「本当に広いんだな。鍛錬ができる場所たくさんありそうだな」


 レイヴはあたりを見回していた。

 レイヴはアシェルの護衛としてついてきていた。


 アシェルたちは今、昨日アシェルと女王が話した噴水の広場まで来ていた。

 わかってはいたが、今は女王の姿はなかった。

 

「あっ……あなた方はイゼル様のお弟子さん」


 アシェルたちの進行方向から声をかけられ、噴水から視線を正面に戻すと、そこにはシリウスがいた。


「……お、おはようございます」


 アシェルがぎこちなく挨拶をすると、シリウスも短く会釈を返した。


「……イゼル様はいらっしゃらないのですね」


 シリウスは表情こそ変わらないが、声のトーンから落ち込んでいることがアシェルにも分かった。


「イゼルさんなら今この城の図書館にいるよ。何か調べ事があるみたいでな」


 レイヴが答えるとシリウスは「そうですか」と一言残し、正面を見た。


「昨日は、大変申し訳ございませんでした。私も取り乱してしまい、お客人であるあなた方に醜態を晒してしまいました」


 シリウスは深く頭を下げた。


「いえ……確かに初めは驚きましたが、昨日の夜、女王陛下と話をして、事情は少し知りました」

「母上と夜、話したのですか?」


 シリウスは驚いたように目を見開いていた。


「あ……」


 アシェルはつい口を滑らせてしまったことに血の気が引いた。

 今ここで修正しようにも、シリウスは真剣な表情で、完全に話の続きを聞く姿勢であった。

 

 アシェルは頭の中で言葉を選ぶように、唇を噛んだ。

 今朝、イゼルに言われたことが頭をよぎる。


――この話をするのはしっかりと人を選ぶことですよ。誰にでも言っていいわけではありません


 この話をどこまでしていいのか、正直わからなかった。

 しかし、目の前のシリウスの表情は真剣そのものだった。


(シリウス王子は確か女王陛下と情報を共有していたはず……)


 アシェルは意を決して、深呼吸した。

 

「……はい、あの、その時話した内容をシリウス様にも話します」


 シリウスはあたりを警戒するように見回し、頷いた。


「ありがたいです。どんな話をしたのか、差し支えない範囲で構いません。聞かせてください」


 アシェルは頷き、昨日女王に話した内容をシリウスにも同じように話した。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


「なるほど、アシェル殿たちから見てもダレクは怪しいと感じるのですね……」


 シリウスは考え込むように沈黙していた。


「……もし、ダレクから感じる気配が魔族の気配であった場合は我々もすぐに対処しなければいけません。だけど、どうすれば……」

「魔族ならよ、魔障石があいつの体に埋まっている可能性があるんじゃないか?」

「魔障石……?」

「魔族の命みたいなもんだよな。魔障石が壊れりゃ、奴らは姿を保てなくなる。あ、だけどあのダレクってやつを裸にしねぇとだめだな」


 レイヴはアシェルに事実を確かめるように、ちらっと見た。


「もし、違かったら僕たち牢獄行きだね……」


 アシェルはゾッと身を震わせた。


「なにか、他には方法はないのですか……?」


 シリウスも打つ手なしのようで、アシェルたちに不安と期待の眼差しを向けていた。


 しばらくの間、三人は考えごとに集中していたためか、後ろから近づく二人の存在に気づけずにいた。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


「こんなところで何をしている?……ずいぶん楽しそうだな」


 声の主の方へ振り向くと、そこにはレクスとダレクが立っていた。

 いつからそこにいたのか、誰も気づいていなかった。

 アシェルとシリウスが何も言えず固まっていると、レクスの目が一瞬だけ細められた。


「おや……これはまた、珍しい顔ぶれですねぇ。……偶然とは思えませんなぁ」


 ダレクは不気味な笑みを浮かべながら、アシェルとシリウスを交互に見た。


 アシェルたちの間に緊張が走った。

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