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理を越えし担い手たち  作者: いがらしつきみ
第十章:ノクシェルド国編
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ep.6 見ていた者たち

 月明かりだけが夜の部屋を照らし、その窓際にはノクシェルド国第一王子であるレクスが中庭の様子を眺めていた。


――コンコン


 控えめなノックが響いた。

 レクスが「入れ」と告げると、姿を現したのは側近のダレクだった。


「ダレクか。どこに行っていた?」

「少し夜の散歩に……。実はそこで面白いものを目にしまして」

「……中庭か?」

「おや、もうご存知で?」


 ダレクはわざとらしく、驚いたように目を見開き、レクスを見た。

 レクスは噴水のある中庭を見ると、歯軋りをした。


「なぜ、母上は今になってあのような者を入れるのだ?それにこんな時間にあのような場所で何を話しているんだ?」

 

 その様子にダレクはニヤリと笑うと咳払いを一つした。


「その件ですが……偶然、耳に入ってしまいまして、女王陛下……と()()()()殿()()はあの賢者たちと何やら裏で動こうとしているようです」

「なに……!?シリウスもいるのか?」


 ダレクは静かに頷いた。


「やはり、母上は俺に継承権を与えるつもりがないのではないか!シリウスとこそこそと……それにあの賢者を呼んだ理由も後押しのために違いない」


 レクスは壁を強く叩いた。


「落ち着いてくださいませ。まだ確証を得たわけではありません。ここは落ち着いて行動するのです。あなたは王に相応しい……その器はすでに整っております。あとは、余計なものを取り除くだけでよいのです」


 ダレクはそう言い、レクスの前まで移動すると深くお辞儀をした。

 その口元には、わずかに歪んだ笑みを浮かべていた。


「この国に蔓延る闇を照らすことができるのはあなたしかおりません」

「ダレク……。そうだな、すまなかった。少し取り乱してしまった」

「よいのです、あなた様は自由に、私は調整役にございますから」


 レクスは頷き、柔らかく微笑んだ。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 ダレクはレクスの部屋を後にし、静かに扉を閉めると、暗い廊下で口角を上げた。


 懐から黒い石を取り出すと、それを口元に持ってきた。


「……魔王様、このノクシェルドを堕とすのもそう遠くありません。それに、聖導師もこの国におります。貴方様へ献上できる“献上物”が増え、私も嬉しい限りでございます」


 石はその言葉に応えるように、脈打つような黒い光を放ち、やがて静かに収束していった。

 ダレクはその石を懐に大切にしまい、夜の闇に消えて行った。

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