ep.3 魔との戦い
オルフェンは正面からイゼルを斬りつける。
それに対し、イゼルは防御壁で対抗するが、オルフェンの一撃は重々しく、イゼルの防御壁を破壊する勢いであった。
「そんな防いでばっかで俺に勝てるはずがないだろ」
オルフェンはそう言うと、地面に沈むように姿を消した。
「あ!ギョロ目の力、ずりぃな!」
イゼルは警戒し、オルフェンがどこから出てくるのかあたりを見回した。
「大体こういう時は、後ろから……」
「残念だな。上だ」
イゼルの頭上に黒い穴ができ、そこからオルフェンが姿を現した。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「おりゃあぁぁ!」
イゼルが反応するよりも早く、レイヴがオルフェンに向かって攻撃を仕掛けた。
オルフェンは読んでいたかのようにレイヴの攻撃を受け流し、後退するとレイヴを見つめた。
「へっ!そっちが複数で来るならこっちも複数でいってもいいよな」
レイヴはニヤリと笑った。
「アース・バインド」
アシェルの声と共に地面の砂が渦を巻き、オルフェンに向かった。
オルフェンは剣で弾くようにその攻撃を流したが、砂は形を変え、オルフェンの体に纏わりついた。
「……っ!」
オルフェンが砂の拘束を解こうともがいている隙にレイヴが駆け出し、拳を握った。
「殺すわけにいかねぇから、これで眠っとけ」
レイヴがオルフェンに拳を振り下ろした瞬間、レイヴの拳は突如、空をきった。
そして気づけば、その場にオルフェンの姿はなくなっていた。
「ひひひ、まったくぅ。一人でやると言いながら私の手がなければやられてしまうところでしたぞぉ?オルフェン」
アシェルの背後から声が聞こえ、振り向くとそこにはオルフェンとロラミィがいた。
ロラミィの力なのかオルフェンの動きを止めていた砂が崩れていく。
オルフェンは服についた砂を払い、ロラミィを見た。
「我らの目的は聖導師を連れ帰ることぉ。それだけ達成すればいいのですぅ。昔の仲間との戦いはその後でぇ」
「そうだな……」
オルフェンは頷き、正面を見た。
オルフェンと目が合った。
そして、オルフェンが静かに剣を構えた瞬間、アシェルの体が突然浮いた。
「えっ……!?」
「アシェルを奪いたいってんなら!まず俺を倒さなきゃなぁ!」
アシェルはレイヴの脇に抱えられていた。
オルフェンは呆れたようにため息をついた。
「ばかか……何も考えてないな。聖導師を抱えていたらお前の片手は塞がるだろ」
「俺はそれでも戦える!」
レイヴは余裕のある笑みを浮かべた。
そしてチラリとアシェルを見た。
「アシェル……!すまねぇ、そういうことだからお前は俺の左手になってくれ」
「え」
「だから……!お前今フリーだろ。魔法使って俺の補助してくれ」
レイヴはオルフェンに対して啖呵を切っていただけのようである。
アシェルは呆気に取られつつも頷き、杖を構えた。
しかし、体勢が揺れるため、魔法の正確性が落ちることがわかっていた。
「レイヴ……やっぱりこの体勢は魔法が……」
アシェルが言葉を言い切らぬうちにオルフェンがレイヴに向かって駆け出した。
レイヴはオルフェンの攻撃を受け流すが、防戦一方であった。
「ぐっ……!つえぇ!こんな速いやつの相手、お前にはできないだろ……!」
レイヴはアシェルを抱えながらもオルフェンの攻撃に反応していた。
アシェルはレイヴを援護しようと魔法発動の準備をしたが、思ったよりも動きが激しいため、杖が手から滑り落ちてしまった。
(しまった!)
レイヴも気づいたのか、杖のある方へ近づこうとするが、オルフェンがそれを許さない。
杖までの進行方向に立ち塞がっていた。
(こうなったら……)
アシェルは手を組み、祝福の力を発した。
光があたりを包み込んだ。
「うっ!?」
オルフェンは祝福の光を受けると目を抑え、後退していった。
その隙にレイヴが杖のもとまで走り、アシェルは杖を手にした。
急いでオルフェンの方へ体を向けると、オルフェンは目を抑え、体を微かに震わせていた。
地面の黒い穴からロラミィが顔を出し、不気味に笑っていた。
「ひひひ、聖導師の力、厄介ですなぁ…」
「ぐっ……」
「おやぁ?祝福の力をもろに受けてしまったようですなぁ?ひひひ、光側だったあなたが光の力を受ける立場になってしまうなんてぇ、なんて皮肉でしょうかなぁ?」
ロラミィは笑っていた。
「早く終わらせる……!」
オルフェンは邪魔なものを払うように、剣で空を切った。
次の瞬間、オルフェンたちの頭上に光の矢が雨のように降り注いだ。
「くっ……!イゼルか!」
ロラミィは黒い穴に逃げ込み、オルフェンはすべての光の矢を弾き斬った。
「オルフェン……」
イゼルは、どこか諦めたように目を伏せた。
その表情には深い悲しみがあった。
「あなたに、魔を撃退する光の力を向けなければならないことがすごく悲しいです……」
「偽善者が……」
「……ええ、私は偽善者ですよ」
イゼルは間髪入れずに次々と攻撃魔法をオルフェンに仕掛けていく。
アシェルとレイヴはただ呆然と眺めていることしかできなかった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「おやおやぁ?そんなよそ見をしていて大丈夫ですかぁ?」
レイヴの足元からロラミィが顔を出した。
「しまった!」
レイヴは避けようと飛び退いたが、それよりも早く、地面から鋭い刃が突き出した。
アシェルとレイヴは吹き飛ばされ、地面に倒れた。
「ぐっ……!レイヴ、僕のことはいいから君は自由に動いて。自分の身は自分で守る」
アシェルは起き上がり、レイヴを見た。
レイヴはフラフラと立ち上がり、頷いた。
突然、レイヴの背後から癒し魔法の光が傷ついた体を包み込んだ。
「私もいるから」
ネリーが癒し魔法をレイヴにかけ終えると、レイヴは腕を回し、そしてロラミィへと剣を構えた。
ロラミィはその様子を見て、ただ不気味に笑っていた。




