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理を越えし担い手たち  作者: いがらしつきみ
第九章:闇に堕ちた勇者
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ep.2 本当のこと

「し、師匠……オルフェンって、勇者のこと?」


 アシェルは動揺しながらもその事実を確認した。

 しかし、イゼルはただオルフェンを見つめたまま固まっていた。

 アシェルの声はイゼルには全く届いていないようであった。

 

「なんだ、イゼル。久しぶりの再会なんだから何か言うことがあるんじゃないのか?」


 オルフェンは嘲笑するかのようにイゼルを見た。


「……っ」


 イゼルは口を開いているが、詰まったように言葉が出てこない。

 オルフェンはその様子にがっかりといったように肩を落とし、ため息をついた。


「お、おい!お前なんで勇者なのに、師匠やイゼルさんたち仲間を裏切ったんだ!」


 レイヴの言葉にオルフェンは冷たい眼差しを再び向けた。


「師匠……?お前の師匠が誰だかは知らないが……まぁ見たところ、戦士のような身なりからロシュベルのことか?……あいつもまだ生きてるのか」


 オルフェンは笑った。

 そしてこちらを睨みつけるように冷たい視線を向けた。


「俺が裏切った?この世界の理に縛られていないお前らはそうやって好き勝手言える。こちらの事情も知らず、ただのうのうと生きてるお前らにこの苦しみはわからない!……だよな?聖導師アシェル」


 オルフェンの視線がアシェルに移った。

 アシェルは肩をびくりと震わせ、杖を構えた。


「聖導師のお前がなぜ外に出た?自由を求めたからだろ?本来ならお前は使命のため、聖域に居なければいけない存在だ。自由を求めた理由はなんだ?家族に会いたいからか?守人の束縛から逃れたいからか?」

「……」


 アシェルは何も言わず、オルフェンをただ見つめ返した。


「……ふん。まぁ、いい。……そうだ、お前の母セラフィーナのことを教えてやろうか」


――オルフェン。それは魔王様から許されてませんぞぉ


 どこからともなく、低い声がアシェルたちの頭の中に響いた。


「黙ってろ、ロラミィ」


 オルフェンは殺気に満ちた低い声で命令し、声の主ロラミィは黙り込んだ。

 しばらく沈黙が続き、オルフェンは再びアシェルたちに目を向け、話し始めた。


「お前の母セラフィーナはもうすぐこの世から消える。さすがの聖導師でも魔王の呪いには耐えられないらしいな」


 オルフェンは薄く笑っていた。

 アシェルはオルフェンを睨みつけたが、オルフェンは何も気にしていないような素振りで話を続けた。


「魔王はお前の正体にも気づいてる。俺が今回ここに来た理由は聖導師のお前を魔界に連れて帰るため。悪いが、痛い思いをしたくなければそのまま大人しくしていろ」


 オルフェンはそう言うと、鞘から剣を抜き出し、ゆっくりとアシェルに近づいてきた。


 アシェルが身構えた時、イゼルがアシェルの前に立った。

 オルフェンは歩みを止め、イゼルを睨みつけた。


「なんだ?今更動き出したのか。まぁ、お前は今後邪魔になる存在だからな。――先に消すことにしよう」


 オルフェンは刃をイゼルに向けた。

 イゼルは静かに、深く息を吸った。


「……オルフェン。私は、あなたに謝らなければいけない」

「……謝罪なんていらない。お前と俺は今は敵同士だ。会話は必要ない。交えるのは刃だけだ」


 オルフェンはそう言い、地面を強く蹴ると間髪入れずにイゼルに攻撃を仕掛けた。


「……仕方ないですね」


 イゼルは防御壁でオルフェンの攻撃を弾いた。

 オルフェンは後ろに飛び退き、そして再びイゼルには焦点を定め、剣を構えた。


「あなたを倒し、こちらに連れ戻します。話はそれからでも……」

「やれるもんならやってみろ」


 二人の間に緊張が流れた。

 アシェルたちはイゼルの邪魔にならぬよう後ろに下がり、控えた。

 

――かつて共に世界を救おうと旅に出た二人の意思と関係は、今は決して交わることはない。

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