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理を越えし担い手たち  作者: いがらしつきみ
第七章:ゴルヴァンテ国編
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ep.5 離れていても仲間

 王の間に戻るとイゼルたちが心配そうにこちらを見ていた。

 王は誰よりも早くカイゼルのもとまでやって来た。


「おう、意外と早かったな。カイゼル、どうだ?ゴルヴァン様には認められたか?」


 カイゼルは胸を二度叩き礼をした。


「はい、継承者として認められました」

「そうか!よくやった、カイゼル……お前は俺の誇りだ」


 グレオル王は満足そうに大きな声で笑い、カイゼルの肩を叩くとイゼルを見た。


「イゼル、今日はこの国で盛大に宴をする。お前も参加していくだろ?」


 イゼルは驚いたように目を見開き、そしてアシェルをチラリと見た。

 アシェルが満面の笑みを返すと、イゼルもアシェルが試練に成功したのだと察したのか、グレオル王の誘いに快く頷いた。


 その夜、ゴルヴァンテではカイゼルが新たな継承者として認められたことを祝い、盛大な宴が国中で開かれた。

 アシェルたちは席に座り、食事をしながらその様子を見ていた。


「アシェル、本当におめでとうございます」


 イゼルは満面の笑みを浮かべていた。


「ほんとよかったな!これでアシェルも一人前の聖導師様に一歩近づいたってことだもんな!俺も負けてられないぜ」

「ちょっと!レイヴ、声がデカすぎるわ!そのことは内緒だって言ってるでしょ!」

「大丈夫だよ……こんなにうるさいんだし」


 レイヴはネリーに叱られて萎んでいた。


「みんなありがとう。だけど、僕の力だけじゃなかったよ。カイゼルさんたちの力がなかったらあの試練は突破できなかったから」


 アシェルの言葉を聞き、イゼルは笑顔で頷いていた。


「仲間の大切さに気づけることはとても良いことです。この旅の先はどうなるかわかりません……ですが、彼らは今後もアシェルと深く関わっていく存在となります。彼らとはここでさよならではなく、もう少し話しをしてからここを立ちましょう」


 イゼルはそう言うと、ある方向をじっと見た。

 アシェルも釣られるようにイゼルの見ている方角を見ると、そこにはカイゼルがいた。


「お楽しみ中のところすまない、少しアシェルを借りてもいいか?」


 イゼルは「どうぞ」と言い、カイゼルとともに去っていくアシェルに手を振っていた。

 アシェルはどうしたのかわからず、カイゼルをじっと見た。

 すると、カイゼルは気まずそうに頭を掻いた。


「仲間と会話中にすまなかった。だけど、明日の朝出発すると聞いて、もっと話しておきたいと思ったんだ。こっちにライオスとガルドもいる」


 しばらく歩くと、周りから目立たない端の席でライオスとガルドが食事をしていた。

 ライオスはこちらに気づくと手を振っていた。

 ガルドは料理を口にしながら、こちらを見て軽く頭を下げた。


「アシェルさん!こっちの席に来てもらってすみません。どうぞ、遠慮なくご飯食べてください」


 ライオスはアシェルの方へ料理を寄せた。


「ありがとうございます。ライオスさん」

「ライオスさんだなんて、俺のこと呼び捨てで呼んでくださいよ。こいつのこともガルドでいいですよ!俺もアシェルさんのことアシェルって呼んでもいいですか?」


 アシェルは頷いた。


「俺もカイゼルでいい。お前には感謝しても仕切れないんだ。共に試練に挑み、今回はお前の柔軟な魔法の助けがなかったら厳しかったかもしれない」

「僕も……カイゼルの助けがなかったら無理だったよ」


 アシェルとカイゼルは笑い合った。


「アース……バインドでしたっけ?俺が言ってからすぐ編み出した魔法ですよね」


 アシェルは少し照れ臭くなり、俯いた。


「咄嗟にだよ。名前に関しては何も言わないで……」

「なんだよ、いいじゃないか。覚えやすくて」


 そう言ったカイゼルの表情は初めて会った時と比べて、明らかに柔らかかった。


「あ、そういえば。アシェルの目的は果たせたんですか?」


 ライオスの質問にカイゼルもそういえばといったような表情でアシェルを見た。


「あー……僕の目的は達成できたよ。僕、魔法初心者だから実践経験を積まなくちゃいけなくて……」


 アシェルは苦笑いした。


(本当は言いたい……けど、絶対言えない……話した瞬間、この楽しい時間が壊れてしまうんだろう――)


 アシェルはカイゼルたちと心が打ち明けたからこそ、聖導師であることを秘密にして、嘘をついていることに胸が締め付けられた。


「お前の魔法はすごかったよ。だけどそれで守護神の試練を受けたのか。何も得られなかったのに、すごい挑戦をしたな」


 カイゼルはそれで納得したように頷いていた。


「俺たちの国は試練に関してはガバガバなところがありますよね。外部から力試しで入ってくるやつは一人だけなら入れてもいいってルールですけど……他の国からしたら異質ですよね」


 ライオスは笑っていた。


「まぁ、俺たちは戦士としての強さを求める者が多いからな。力を伸ばそうとする奴には甘いんだ」


 カイゼルはアシェルの方をじっと見つめた。

 

「アシェル、お前の旅は続くのだろう。なかなか会えないとは思うが、俺たちは共に仲間として戦い、固い絆で結ばれている。これからは友として、お前が困っている時は助ける。だから遠慮なく俺たちを頼ってくれ」


 カイゼルが手を差し伸べ、アシェルはその手を取った。

 手から熱が伝わるように、胸の奥がじんわりと温かくなり、アシェルとカイゼルたちは夜深くまで語り明かした。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 提供された宿のベッドに戻るとアシェルはあの光の空間のことを思い出した。


(そういえば……あの、光の子供は誰だったんだろ……)


 眠気に誘われながら、アシェルの頭の中にはあの空間のことが心残りであった。


 そして翌日、アシェルたちは再びアリスティアに向けて歩き出した。

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