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理を越えし担い手たち  作者: いがらしつきみ
第七章:ゴルヴァンテ国編
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ep.4 光を巡らす

 岩の巨人ゴルヴァンはまず初めにカイゼルを見た。


「……久しいな、人の子らよ。何度目の巡りか、もはや我も覚えておらぬ。お前は、次の継承者となる者か……」


 ゴルヴァンはそう言うとゆっくりと手を組んだ。

 その手を広げるとともに光をカイゼルに向けて放った。

 カイゼルの胸に黄色い光が吸い込まれていく。


「うっ……!?これは……?」


 カイゼルは苦悶の表情を浮かべ、腕を抑えた。

 カイゼルの腕には花の蕾のような紋様の跡がついていた。


「カイゼル……お前を継承者として認め、我が力を与えた……我が地の力」


 カイゼルの手が黄色い光を帯びた。

 カイゼルが瓦礫に向かって手を伸ばすと、瓦礫が浮き、そして勢いよく壁にぶつかり砕けた。

 

「すごいこれが地の力……。力が溢れてくる」


 カイゼルに力を与えたゴルヴァンは次にアシェルに目を向けた。


「お前は……。そうか、光を持つ者を見るのは久しいな……」


 アシェルは聖導師であることを隠そうと、首を必死に横に振った。

 すると、ゴルヴァンは察したのか頷くと、大きく手を叩いた。


 低い音が空間にこだまする。


 風の流れが止まり、空間が静止したのかカイゼルたちは微動だにしなかった。


「今、我が神殿の時間が止まっている……。それで、聖導師が来たということは、祝福の力を強めるべく、我が力を欲すると言うことだな」


 アシェルは頷いた。

 ゴルヴァンはしばらくじっとアシェルを見つめていた。


「……うむ、よかろう。我はお前を認め、我が力を授ける」


 ゴルヴァンはそう言うと、先ほどのように掌から光を生み出し、アシェルに放った。


「あっ……!?」


 同時にアシェルの背中が焼けるように痛みだし、アシェルは耐えきれずうずくまった。

 額から汗が伝い、しばらくすると痛みが引いた。

 体の奥底から力が溢れてくるのを感じた。


「神の力を得るとは、この世界とは異なる力を己の身に刻むこと……痛みを伴うのは当然だ」


 ゴルヴァンはそう言い、自身の背後にある扉を指差した。


「あの先に行け、聖導師よ。我が力を直接大樹に伝えることは、闇の力が邪魔で我にはできない。光の力を持つお前が我が力を大樹に行き渡らせるのだ」


 アシェルは頷き、ゴルヴァンの指した扉を抜けた。

 するとそこには黒い靄を出し、黒く萎れた大樹の根が天井から垂れ下がっていた。


 アシェルは不思議と自分がやるべきことがわかった。

 大樹の太い根に手を置き、そして深く祈り、祝福の力を注いだ。


 一瞬だが、アシェルは温かな風に包まれた。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 目を開けると、周りは何もない白い世界であった。


 音が消えた白い世界。

 自分が立っているのか、浮かんでいるのかすら判別ができなかった。

 そして、そこには人の形をした小さな光があった。


 光は小さな子供のように無邪気に揺れ、アシェルの方を見ているようだった。


 声はない。ただ……胸の奥に何かが触れた。


 呼びかけようとしたところで、身体が引っ張られるように視界が揺らめいた。


 ふと意識が戻った時、アシェルは白い世界から抜け、ゴルヴァンの試練の間でしゃがみこんでいた。


 気づけばアシェルの体には大樹の根が巻き付いていた。


 軽く払うとすぐに解けたが、いつの間にとアシェルは驚きを隠せずにいた。

 目の前には生気を取り戻し、光を放つ大樹の根がある。


 そして、アシェルはほんの一瞬だけ自分が意識を失っていたのだとわかった。


 やることを終えたアシェルはゴルヴァンのもとに戻った。


「役目を終えたようだな……聖導師」

 

 ゴルヴァンは鎮座していた。

 そしてそのまま、ゴルヴァンはアシェルの首元に一瞬目を向けた。


「聖導師よ、再びアリスティアへ赴くのだ。微かにだがお前のかけている首飾りから風の守護神の気配がした。お前を呼んでいる」


 アシェルはゴルヴァンの言葉に目を輝かせ、頷いた。

 そしてゴルヴァンが再び大きく手を叩くと、時間が進み始めた。


 カイゼルたちは何事もなかったように動き出す。




「それではゴルヴァン様。お会いできて光栄でした。我々は国へ戻ります」

「うむ……ならば、出口を出してやろう」


 ゴルヴァンが手を叩くと、広場の中心に大きな石の手が現れた。

 

「それに乗れば出口まで行ける……」


 アシェルたちは礼を言い、その掌に乗った。

 手はアシェルたちを包み込み、そして地面の中に潜り込んだ。

 手が開いた時、アシェルたちは試練の扉の目の前にいた。


 石の手はアシェルたちが完全に降りたのを確認すると、地面の中に再び潜っていってしまった。


「父上に報告だ」


 カイゼルを先頭にアシェルたちは階段を登って行った。

 背中にほんのり残る熱と、胸元で微かに揺れる風の気配。神に認められたという実感が、アシェルの足取りを自然と軽くしていた。

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