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理を越えし担い手たち  作者: いがらしつきみ
第六章:修行
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ep.1 修行あるのみ

「オハヨウゴザイマス、聖導師サマ!……って言うのもなんか違ぇな。俺はアシェルで覚えたし、そっちのが言いやすいな。今日から俺も仲間だ。よろしくな」


 レイヴは満面の笑みでアシェルに手を差し伸べた。

 

「なんで僕が聖導師って知ってるの?」

「それは、師匠が教えてくれた。お前と旅するなら知っておけってな」

「そうなんだ……」


 アシェルはレイヴの手を取り、イゼルの方を見た。

 レイヴが仲間になることに関して何も言わないところを見ると、事前に知っていたのだと理解した。

 イゼルは、アシェルとレイヴが挨拶を済ませたのを確認するとこちらに近づき、レイヴと握手した。

 

「レイヴ、これからよろしくお願いします。さぁ、すぐに出発しましょう!……と言いたいのは山々なのですが、ロシュベルがこの場所を貸してくれるということで……アシェル!」

「はい!」


 突然名前を呼ばれて、アシェルはびくりとした。

 イゼルを見ると、にこりと笑っている。


「ここで魔法の特訓をしてから出発しましょう」 

 


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 場所を移動し、開けた場所までやって来た。

 アシェルとイゼルはその真ん中に立ち、遠くからレイヴ、ロシュベル、ネリーが見ていた。


「さて、魔法の特訓ができるのは久しぶりですね。聖域にいた時以来でしょうか。私が教えたこと覚えていますか?」

 

 アシェルは微妙な顔をした。

 イゼルが聖域に来て、アシェルが旅を決意するまで、確かに特訓はあった。

 しかし、その時は旅に出るかどうかばかりを考えていて魔法の特訓には集中できていなかったのが本音だ。


「すみません。正直あまり覚えてないです」


 イゼルは頷いた。


「まぁ、そうでしょうね。あの時はそんな雰囲気になれませんでしたし、アシェル上の空でしたもんね」


 イゼルは笑っていたが、アシェルは申し訳なさに肩をすぼめた。

 そんな様子をネリーは不思議そうに見つめていた。


「そういえば、私あまりアシェルが魔法使ってるところ見たことないけど……苦手なの?」

「苦手ではない……ただ、見せる相手がいなかっただけ」


 アシェルは不服そうに返した。


「ネリーも見ればわかりますが、アシェルの基礎魔法は驚くほど完成されています」

「へぇ〜、そうなの……!見せてよ」

「そんな簡単に見せられるもんじゃないよ」


 アシェルはネリーから顔を背けた。


「いいですか、基礎はあらゆる魔法の根幹です。炎も水も風も、結局は同じ“理”を持っています。基礎の完成度が高い者ほど、応用の伸びも桁違いです。アシェルはこれからも基礎を大事にしてくださいね」


 アシェルは照れくさく、頬がほんのり熱くなるのを隠すように頷いた。


「あの時、わかってよかったのは、アシェルの基礎が完璧だということ。あとは中級魔法を身につければ、極大魔法まであと一歩です」

「師匠が前使ったのは極大魔法?」

「そうです。私は詠唱なしでも使えますが、アシェルは念のため詠唱を。中級以上は複雑ですからね」


 そして、イゼルの魔法の特訓が始まった。

 まずは基礎魔法のおさらいから始まった。


 そして中級魔法の最初に挑んだのは、炎の柱だった。

 始めは思ったよりも魔力を使うことに驚き、手が震えてうまく発動ができなかった。

 しかし、何度か繰り返しているうちに、コツを掴み、そのまま水、雷、土の中級魔法も難なく発動することができた。

 気づけばすでに日は沈んでいた。


「はぁぁぁぁぁ……」


 アシェルは魔力をほぼ使い果たし、乾いた地面に背中を預けた。

 沈む夕陽の光が瞼をかすめた。


「飲み込みが早いですね……!さすが聖導師です。それに、魔力量も私より多いです。中級魔法も順調ですし、あとは旅で磨いていけばいいでしょう。……ですが、その前に実戦も大切ですね」


 ぐったりするアシェルをよそにイゼルはロシュベルを見た。

 ロシュベルは頷き、座っていたレイヴの腕を掴むとその場に立たせた。


「いてて、なんだよ師匠」

「お前も、これから修行だ」

「は?」


 レイヴは状況を理解できず、首を傾げていた。


 アシェルは嫌な予感がし、イゼルを見た。

 すると、イゼルは「アシェルもだよ」と言わんばかりに微笑んでいた。




 やがて一行は、結界が張られた森の前に立った。

 

「これから、アシェルとレイヴにはこの森の中に入って、魔物たちが持つ“魔障石”を取ってきてもらいます。魔障石は魔物の生命の核となる石のことです」


 イゼルは小さな石を取り出した。


「なんだ、簡単じゃねぇか。そこらの魔物が身につけてるちっこい石だろ。禁域に入らなくても――」

「ええ、しかし二人にはこの結界の中にいる中級の魔物の魔障石をお願いしたいのです」

「え、中級……!?俺も!?結界の中は禁域だぞ!? 中級の魔物って、俺ら死ぬぞ!?」

「ごちゃごちゃ言うな」


 レイヴの抗議が終わるより早く、ロシュベルの拳が頭に落ちた。


「いってぇぇ!……くそ、師匠のこういうとこ嫌いだ!」

「いざという時はこの“魔法弾”を打ち上げてください。魔力を込めれば弾なしでも上がります」


 イゼルはそう言って、アシェルに銃を渡した。

 二人の師匠に背中を押され、アシェルとレイヴはしぶしぶ、結界の中へと入って行った。


 結界の内側は、わずかに光が歪んで見えた。

 二人の初めての試練が、静かに幕を開けた。

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