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理を越えし担い手たち  作者: いがらしつきみ
第五章:レイヴとロシュベルの出会い
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ep.1 トルメリアの最後1〜レイヴの記憶に残るもの〜

 トルメリアは田舎の小さな村であった。

 外から見ればただの辺鄙な村だが、その実、戦士たちの里として知られていた。


 昔からガーディアンの選抜では、トルメリア出身の戦士が選ばれてきた。

 王国の騎士長など、戦いの頂点に立つ者の多くもまた、この村の生まれである。


 レイヴは幼きころからガーディアンになる夢を強く抱き、村の子供の中で最も強く成長した。

 その成長の速さは大人を焦らせ、ついには一国の騎士長をも打ち倒してしまうほどであった。

 訓練の余興ではあったが、この時誰もがレイヴを次のガーディアン候補に入れたいと思ったのである。


――このとき、レイヴはまだ四歳だった。




「レイヴ!お前は父さんと母さんの誇りだ!お前ならガーディアンになれる!」

「ほんとか!」


 レイヴの父は明るく、熱血な男だった。

 強く、どんなことにも突き進む父の姿にレイヴは憧れを抱いていた。

 夕暮れ、父の肩の上で見た沈む夕日は、今も彼の記憶に深く刻まれている。


「まったく、ガーディアンの選抜なんていつ来るかわからないのですよ」


 後ろからレイヴの母の声がした。

 厳しくも、優しい人だった。


「いつ来るかわからないからこそ、それに備えるんだ」  


 父はレイヴを肩から下ろし、正面に抱えた。


「こいつはガーディアンになれるほどの力を持っている。レイヴの強さも大樹の導きにある気がするんだ。だがレイヴ、周りが期待する通り無理してガーディアンにならずともいい。お前の強さは引く手あまたのはずだからな」


 父は歯を見せて笑い、レイヴも父の真似をして笑った。

 母はやれやれと微笑んでいた。


 その日の風は、どこか冷たかった。

 それでも誰も、それを不吉の兆しだとは思わなかった。


 そして、この幸せな時間は、ほんの数分で崩れ去った。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


「おい、あれなんだ」


 ある一人の村人の声で、全員がその男が指差す方向に目が向いた。

 空は黒く、それは徐々にこの村に近づいてきていた。


「魔物だ!魔物の大群がこっちに向かってきているんだ!」


 その一声で周りの者たちは速やかに剣や盾、そして弓を取り、魔物の襲撃に備えた。


「あなた……」


 母は真っ青な顔をしながら父を見た。

 父は抱えていたレイヴを母に託すと家へ向かっていった。

 レイヴを抱えて母が父の後を追うと、父は戦闘の準備をしていた。

 そして準備が終わると二人を見た。


「レイヴを頼んだ!子供は俺たちトルメリアの未来だ」


 そう言うと父はレイヴの頭を撫でた。

 そして、父はにこりと笑うと迷いなく外へ駆け出していった。


 母はレイヴを抱えたまま後を追い、外に出たが、すでにトルメリアは魔物の襲撃を受け、混沌と化していた。

 

 二人を見つけた魔物がすぐさま飛びかかってきた。 母は恐怖を押し殺し、近くにあった鍬を振り抜いた。

 魔物は一撃で倒れたが、もうどこにも逃げ場はない。


 母は家の中に引き返し、部屋の端に置かれているものを全てどかした。

 するとそこには大きな板が床に置かれていた。


 板をどかすと、地下へと続く階段が現れた。

 母は剣を手に取り、レイヴを抱いて――その闇の中へ降りていった。

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