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理を越えし担い手たち  作者: いがらしつきみ
第四章:戦士の弟子
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ep.8 師弟の会話

 外はすでに夜の闇に飲まれていた。

 部屋の中は燭台の光だけで、頼りない灯がゆらゆらと壁を照らしている。

  

 静かな空間で机を挟み、向かい合っているのは、ロシュベルとレイヴだけだった。

 呼び出された理由がわからず、レイヴは落ち着かない様子で足を揺らしていた。


「おい、師匠どうしたんだよ。ずっと黙り込んでんじゃねぇか」

「レイヴ……お前、イゼルたちと一緒に旅に出る覚悟あるか?」

「え?旅?」

「イゼルがお前を連れて行きたいそうだ」

「ああ、さっきの話のことか!まぁ、ここにいても暇だしな。けどよ、師匠はどうするんだ?」

「俺はいかねぇよ。お前ひとりで行け。イゼルは俺よりもできたやつだ。……お前の感情の制御の仕方も教えてくれるだろう」

「……おう」


 いつもと変わらぬやり取りのはずなのに、なぜか胸の奥がざわついた。


「お前が旅に出るなら伝えておかなければならないことがある」

「なんだよ、改まって」

「お前がこれから旅をともにするアシェルという少年は……聖導師だ」

「……は?」


 レイヴは息を呑んだ。

 自分の聞き間違いかと思い、ロシュベルをじっと見たが、その表情は真剣そのものだった。

 いつもの冗談ではない。


「聞き間違いじゃねぇよ。俺もさっきイゼルから聞いたときは驚いた。……だがな、この旅は聖域を敵に回すことになるそうだ。お前はどうする?」

「……」


 レイヴは沈黙した。

 旅の先に何が待つのか、恐怖よりも好奇心が勝っている。

 だが、ガーディアンを目指す者として、聖域を敵に回すのは将来を捨てるようなものだった。

 レイヴは腕を組んだ。


「難しい話だな。でも……俺は難しいこと考えんの苦手なんだ。聖域を敵に回すって言っても、一番上の聖導師が旅に出てるんだろ?だったら、そっちのほうが面白ぇし、意味がある気がする。俺は行くよ」

「……ふん、そうか」


 その声は低く、どこか安堵の響きを含んでいた。

 ロシュベルはわずかに口角を上げ、静かに立ち上がった。


「明日、イゼルたちは出発するらしい。朝も早い。今日はもう寝ろ。……ちゃんと挨拶して行けよ」

「ああ、わかってるよ」


 ロシュベルは背を向け、扉の前で一度だけ立ち止まった。

 振り返ることはせず、そのまま部屋を後にした。

 その背中に、レイヴは小さく頭を下げた。


 その夜、窓の外では風が吹き、燭台の炎が小さく揺れた。

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