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理を越えし担い手たち  作者: いがらしつきみ
第四章:戦士の弟子
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ep.7 過去の仲間同士の会話

「……戦士の仲間がいてくれるのはとても心強いです。ですが、この旅を共にするなら知っておいてほしいことがあります。……少し、ロシュベルと二人で話してもいいですか?」


 ロシュベルは頷いた。

 レイヴは状況を察したのか、アシェルたちとともに外に出た。

 アシェルたちが外に出たのを確認するとイゼルは口を開いた。




「ロシュベル」

「ん?」

「私が旅をしている少年を見て、何か感じませんでしたか?」

「あ?何か特別な人間なのか?すまねぇが、俺は察する能力がお前より低いんだ。何が言いたいんだ?」


 イゼルは黙り込み、しばらく沈黙すると覚悟を決めたように頷き、口を開いた。


「実は……私が今、旅を共にしている少年は聖導師なのです」

「……」


 ロシュベルは言葉を失い、深く息を吐いた。

 薄く閉じていた目をゆっくりと開くと、その表情に動揺が滲み始めた。


「は?どういうことだ?聖導師は今、一人は魔界にいて、もう一人は聖域にいるはずだぞ。それにお前、弟子って……」

「聖域から連れてきたのです」

「……」


 ロシュベルは沈黙したまま、背もたれにもたれ、天井を見て眉間に手をおいた。


「お前はどうしてそんな面倒なことをしているんだ。……何がしたいんだ。わかっているのか、自身が重罪を犯していることを」

「わかっています。……しかし、あなたもわかっているでしょう?今、この世界で新たな勇者が生まれることはないということを……我々だけでは魔王は倒せない。ならば聖導師を動かさなければならないのです」

「なら、まずは聖域に話をつけるべきだろ」

「守人たちは話が通じません」

「おい、どうした。お前らしくない言動だぞ」

「……はは、それほど煮詰まっているのかもしれませんね。……アシェルは人間です。もちろん我々とは少し違う、祝福の力を持った人間です」

「珍しいなお前がそこまで他人を気にしているなんて……」

「実は私、まったく動かない聖導師に対して始めは怒りすらあったんです。だけど、アシェルに出会ってわかりました。彼は聖域という箱に収めるべきではないと」

「人だからか?」


 イゼルはロシュベルの言葉に首を縦に振った。


「聖域のシステムではアシェルの成長は促すことができない。アシェルは歴代の聖導師と違うからこそ、導き手が必要だと思うんです」

「まぁ、聖域の理に反して生まれているからな……今まで通りにはいかないだろうな」

「本来、勇者も聖導師も、守人も森の精も、大樹のもとから生まれた存在は最初から特別な力をもち、扱えることが当たり前、けれど……この世界の流れのままに生きる彼らにはそれ以上がないんです」

「おい、罰当たりだぞ」


 ロシュベルは顔をしかめた。

 しかし、イゼルは気にせず続けた。


「アシェルは聖導師が持つ祝福の力を持ちながら半人間の異例の存在なのです。今まで歴代の聖導師にはない成長をみせる可能性があります。私はそこに賭けます」

「賢者がギャンブルか……」

 

 ロシュベルはやれやれと言ったように溜息をついた。

 

「……ってことは、あいつもお前の罪に付き合うことになるってわけか」

「……私は、彼があなたの弟子であるのなら仲間に入れたいと思っています。ロシュベルが見込んだほどの少年ですからね。近接の仲間が増えるのは今のパーティにとって、とてもうれしいことです」


 ロシュベルは考え込むように沈黙したあと、一息つき、口を開いた。


「……レイヴにはこの話は俺からしよう。あいつがそれを踏まえたうえで旅をするのか……それを決めるのはあいつだ」

「わかっています」


 ロシュベルはイゼルの返答を聞き、頷いた。


「あの聖導師はこの旅には自分からついてきているのか?だましているわけじゃないよな」

「……事情は話しています。私は彼に無理強いするつもりはないので」

「ふん、昔に比べてずいぶん自信消失してるじゃねぇか」

「あなたに言われたくありませんね。こんな場所で隠遁生活をしているのですから」

「こんにゃろ。毒吐く口は変わってねぇな」


 イゼルはふっと笑い、ロシュベルも口元を緩めた。

 外では、レイヴたちの笑い声が微かに聞こえた。

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