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理を越えし担い手たち  作者: いがらしつきみ
第四章:戦士の弟子
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ep.5 レイヴの師匠のもとへ

 敵の襲撃から一夜明けた朝。

 アシェルたちは、イゼルのかつての仲間、戦士ロシュベルに会うため、宿を後にした。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


「俺なら今日一日かければ、師匠のもとに辿り着くんだけど、あんたたちは大丈夫なのか?」

「……大丈夫って?」


 アシェルは軽く息を切らしながら返答すると、レイヴは立ち止まり、頭を掻きながら答えた。


「いやー、だってあんたら魔法使いと賢者だろ?体力あるのかって話さ。師匠いるところまで結構道が険しいんだよ」


 レイヴはそう言いながら、前を指差した。


「あの先に師匠の家があるんだ」


 レイヴの指す先には、斜面を覆い尽くす木々が濃い緑に染まり、まるで森の壁のように連なっていた。


「ロシュベルは今あの森の中で生活をしているのですか?」


 イゼルの質問にレイヴは答えた。


「俺の師匠、あまり人との関わり持ちたくない人だからな。森は心を落ち着けるし、鍛錬の場にもなるからいいってよく言ってたけど……」


 三人はレイヴの話を聞きながら、流れ落ちる汗を拭った。

 ネリーはため息を吐き、レイヴを見た。


「とりあえず、私たちはあなたに頑張ってついて行くわ……だけど、初めての道だからあなたがペースを合わせてよね……」

 

 ネリーの言葉にレイヴは「わかった」と素直に頷いた。


 森の中に入ると上に行くにつれて険しさを増していく。

 人が通るための道はないため、凸凹となった獣道を通って行かなければならない。

 湿った土に足を取られ、何度か転びそうにもなり、体力は奪われるばかりであった。


 アシェルは上から垂れ下がる木の根を掴み、斜面を登って行った。


「ふぅ……思ったよりも険しいんだね」

 

 アシェルが足を止めていると、レイヴが上でアシェルに手を差し伸べてくれていた。

 そのおかげで急な斜面も何とか登ることができた。

 しかし、全員の身体に疲労が溜まり、自然と無言が続いていた。


 植物をかき分け、歩き続けていると、レイヴが笑顔で振り向き、前を指差した。


「ほら、見えたぜ」


 レイヴの指差す場所には木造の家があった。

 レイヴは家まで駆け出し、ノックをした。

 アシェルたちも遅れをとりながら、よろよろとした足取りでレイヴに追いついた。


 ガチャリとドアノブを回す音が聞こえ、ドアは軋みながら開いた。

 中から大柄な男が顔を出した。


「よっ!師匠。帰ってきたぜ」


 レイヴは手を挙げ、ロシュベルに元気に挨拶をした。

 ロシュベルは特別な反応をすることもなく、ただ無言のまま頷き、そしてイゼルを見た。


「……俺は幻でも見ているのかと思ったが、本物か?」

「ええ、本物ですよ」


 ロシュベルの問いにイゼルは頷き、微笑んだ。


「そうか……まだ生きていたのか。ここではなんだ、中に入ってくれ。茶でも出してやる」


 ロシュベルの後に続いて、レイヴは家の中へ入った。

 アシェルとネリーは躊躇しながらもイゼルに背中を押され、続いて中に入った。


 扉の向こうから、かすかに茶の香りが漂ってきた。

 それは、長い道のりを越えた体に沁みた。

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