ep.5 レイヴの師匠のもとへ
敵の襲撃から一夜明けた朝。
アシェルたちは、イゼルのかつての仲間、戦士ロシュベルに会うため、宿を後にした。
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「俺なら今日一日かければ、師匠のもとに辿り着くんだけど、あんたたちは大丈夫なのか?」
「……大丈夫って?」
アシェルは軽く息を切らしながら返答すると、レイヴは立ち止まり、頭を掻きながら答えた。
「いやー、だってあんたら魔法使いと賢者だろ?体力あるのかって話さ。師匠いるところまで結構道が険しいんだよ」
レイヴはそう言いながら、前を指差した。
「あの先に師匠の家があるんだ」
レイヴの指す先には、斜面を覆い尽くす木々が濃い緑に染まり、まるで森の壁のように連なっていた。
「ロシュベルは今あの森の中で生活をしているのですか?」
イゼルの質問にレイヴは答えた。
「俺の師匠、あまり人との関わり持ちたくない人だからな。森は心を落ち着けるし、鍛錬の場にもなるからいいってよく言ってたけど……」
三人はレイヴの話を聞きながら、流れ落ちる汗を拭った。
ネリーはため息を吐き、レイヴを見た。
「とりあえず、私たちはあなたに頑張ってついて行くわ……だけど、初めての道だからあなたがペースを合わせてよね……」
ネリーの言葉にレイヴは「わかった」と素直に頷いた。
森の中に入ると上に行くにつれて険しさを増していく。
人が通るための道はないため、凸凹となった獣道を通って行かなければならない。
湿った土に足を取られ、何度か転びそうにもなり、体力は奪われるばかりであった。
アシェルは上から垂れ下がる木の根を掴み、斜面を登って行った。
「ふぅ……思ったよりも険しいんだね」
アシェルが足を止めていると、レイヴが上でアシェルに手を差し伸べてくれていた。
そのおかげで急な斜面も何とか登ることができた。
しかし、全員の身体に疲労が溜まり、自然と無言が続いていた。
植物をかき分け、歩き続けていると、レイヴが笑顔で振り向き、前を指差した。
「ほら、見えたぜ」
レイヴの指差す場所には木造の家があった。
レイヴは家まで駆け出し、ノックをした。
アシェルたちも遅れをとりながら、よろよろとした足取りでレイヴに追いついた。
ガチャリとドアノブを回す音が聞こえ、ドアは軋みながら開いた。
中から大柄な男が顔を出した。
「よっ!師匠。帰ってきたぜ」
レイヴは手を挙げ、ロシュベルに元気に挨拶をした。
ロシュベルは特別な反応をすることもなく、ただ無言のまま頷き、そしてイゼルを見た。
「……俺は幻でも見ているのかと思ったが、本物か?」
「ええ、本物ですよ」
ロシュベルの問いにイゼルは頷き、微笑んだ。
「そうか……まだ生きていたのか。ここではなんだ、中に入ってくれ。茶でも出してやる」
ロシュベルの後に続いて、レイヴは家の中へ入った。
アシェルとネリーは躊躇しながらもイゼルに背中を押され、続いて中に入った。
扉の向こうから、かすかに茶の香りが漂ってきた。
それは、長い道のりを越えた体に沁みた。




