表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
理を越えし担い手たち  作者: いがらしつきみ
第四章:戦士の弟子
21/62

ep.4 わかり合うことはない

 不気味な森にそぐわぬ、金属が打ち鳴らされる乾いた音が、夜気を震わせていた。


 オルフェンとガーディアンは、どちらも一歩も退かず刃を交え続けていた。

 だが、刃がぶつかるたびにガーディアンの一撃はオルフェンの腕を痺れさせ、一歩、また一歩と後退させていた。

 外から見れば互角の攻防。しかし、確実に均衡はガーディアンへと傾いていた。


 ガーディアンの一撃がオルフェンの剣をはじき飛ばした。


「くっ……」


 刃は闇の中を舞い、ガーディアンの背後へ転がっていった。


「オルフェン、これで終わりだ」


 オルフェンが目を逸らした瞬間、ガーディアンが目の前に立ち、剣を振り上げていた。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


――ひひひ……困っているようですなぁ、オルフェン?私が助けて差し上げましょうぅ


 頭に響いた不気味な声と共に、四方から黒い壁が迫り、ガーディアンを押し潰すように閉じ始めた。

 次の瞬間、白い鎧の姿は中心に吸い込まれるように消えた。



「ロラミィか……」


 オルフェンの足元に黒い穴ができた。

 そこから這い出てきたのは痩せ細った小柄な魔族だった。

 魚のようにギョロリとした目。ピンクの乱れた髪に、青白い顔。頼りなさと狂気が入り混じっていた。


「こんなところで終禍の徒の一人がやられると面目立ちませんからなぁ?私の”ディメンション・コフィン”は役に立つでしょう?空間を切り取り、人を接触不可な亜空間へ閉じ込める術にござりますぅ」

「……別にお前がいなくても俺は勝てたさ」

「ひひひ、そうでしょうかぁ?まぁ、あなたに死なれると私は魔王様から消されてしまいますからねぇ〜なんせ、あなたは魔王様のお気に入りぃ」

「何が言いたい」

「いや別にぃ。唯一、魔界を繋ぐことができる私の方があなたよりも優れているという証明にはなりましたかねぇ?魔界の門が封印されようと、私の”歪界(わいかい)の門”で出入りできてしまうこと、聖導師も予想外なことでしょうしぃ。しかし、私の生気を吸うので、魔王様以外の命なしでは使えませんがなぁ。ひひひ」


 ロラミィは気味悪く肩を揺らして笑っていた。


「では、オルフェン、私は先に失礼しますぅ」


 ロラミィは、気味の悪い笑いを残して黒い穴に沈み、姿を消した。




 ロラミィが消えたのを確認するとオルフェンは再び宿屋が見える高台にやってきた。


「あれが、聖導師アシェル……セラフィーナの子、双子の片割れか……だが、まだ弱い。その光が魔界に届くことはない」


 そして、オルフェンはアシェルからイゼルに目線をずらした


「イゼル……懲りないな、相変わらず偽善者のままだ。何も守れないお前が誰かを導こうなんて烏滸がましいんだよ」


 オルフェンは冷たい眼差しでアシェルたちを見下ろし、そして闇の中に消えていった。

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 怪我人たちの怪我を癒していたイゼルはふと懐かしい気配を感じ、高台の方へ目を向けた。


 しかし、そこには誰もいなかった。


「師匠……どうしたの?」


 布を運んでいたアシェルがイゼルの様子を不思議に思い尋ねるとイゼルは首を横に振った。


「いや気配がしたような気がしたのですが……。まさかね……いえ、何でもありません。さぁ、早く怪我人たちを治してしまいましょう」


 イゼルはそう言い、自身の疑問を胸の奥にしまい込んだのであった。


――かつての仲間の影を見た気がしたことを、気づかぬふりをして。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ