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理を越えし担い手たち  作者: いがらしつきみ
第四章:戦士の弟子
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ep.3 聖域からの追跡者

 鎧の継ぎ目がわずかに鳴る金属音が静かな森の中にこだました。


「ついに見つけました。聖導師様……」

 

 離れた高台で、白き鎧のガーディアンがアシェルたちの様子を見つめていた。


「今、貴方様をお救いいたします」


 降りようとした瞬間、背を射抜く殺気を感じた。

 ガーディアンは足を止め、柄に手を添える。


「裏切り者が一人……私に何の用だ」


 ガーディアンは後ろに視線だけを向けた。


「聖導師をお前たちに渡すわけにはいかない。あれは我が主、魔王様の鍵だ」

「主を誤った者に、生を許す道理はない。聖導師様は聖域のもの。回収対象だ」

「……俺の役目は足止め。聖域に入られたら、魔族が手を出せなくなってしまう」


 暗い森から一歩、赤い外套と黒鎧の青年が月明かりに出た。

 夜風が彼の短い黒髪をさらった。


「聖導師様をお連れすることが私の任務であるが……“現場判断”を命じられている。優先はひとつ――裏切りの掃討だ」


 抜き放たれる白刃が、月を映す。


「覚悟はいいか、裏切りの勇者――オルフェン」


 オルフェンはガーディアンに応えるかのように剣を抜いた。


「ガーディアン相手に、今の俺がどこまで通じるか……だが今日は勝ちに来たんじゃない」


 ふたつの影が重なり、火花が散った。

 初撃でオルフェンの骨が軋んだ。

 オルフェンは刃をいなし、流した。

 

 圧倒的に力はガーディアンの方が上であった。

 横薙ぎ一閃、オルフェンは吹き飛ばされた。

 だが着地の連続の踏み替えで死角へ滑り込み、枝、地面、そして背後へ刃を忍ばせる。


 しかし、すべて流され、胸元を掴まれ、森へ投げられた。

 木柱が折れ、肺が焼けるようであった。


「ぐっ……げほっ!……はっ、強えな。どこかで一度、息を乱さねえと」


 オルフェンは仰向けのまま夜空を見た。


「星空は綺麗だな……」


 そんなことを思いながら、ガーディアンがこちらに来るのを待っていた。

 闇の向こうから、光の花の軌跡がふわりと伸び、その主が月明かりの下に現れた。


 オルフェンは立ち上がった。

 体があちこち軋み、動くたびに全身に痛みが走った。

 

「オルフェン、大人しくしていれば痛みなく逝かせてやろう。穢れた魂を大樹は受け入れないだろうが、これも大樹から力を受けた者としてのせめてもの配慮だ」


 言い終わると同時にガーディアンは踏み込み、オルフェンに剣を振り下ろした。


「もう、ガーディアンの動きには慣れた」


 オルフェンはそう言うと、身を翻しガーディアンの剣を跳ね除けた。

 体勢を崩したガーディアンに、オルフェンは蹴りを入れ、後ろに吹き飛ばした。


 やったと思ったのも束の間、空気がひび割れ、次の瞬間ガーディアンは目の前にいた。


 上から振り下ろされた剣を瞬時に受け、斬撃を流したがすぐに振り上げられた。

 体勢を崩しそうになりながらも、オルフェンはその反動を利用して宙を飛んだ。


 ガーディアンの乱撃を受けながら、その後ろを取ると、左手から闇の波動をガーディアンの体めがけて打ち込んだ。


 白い巨体は波打つようにドクンと揺れ、そのまま力なく地面に崩れた。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 森に静寂が落ち、オルフェンの荒い息づかいだけが響いていた。

 しかし、ガーディアンはむくりと何事もなかったかのように起き上がった。


「はは、やっぱり魔族以上のばけものだな……」


 オルフェンは苦笑いした。

 森を包む風が、ふたりの間を切り裂くように吹き抜けた。

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