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③ジェシカとウィル

202ⅹ年 新宿


新宿駅、歌舞伎町東宝ビル近くの、なかば廃ビルのような不気味な建物の1階と2階に、昔からやっている漫画喫茶がある。その2階まではトー横キッズも無防備に入っていける場所だ。3階には、こわもてのおじさん達ばかりがたむろする古い喫茶店が入っていて、そこには若者はひとりもいない。


さらにそのビルの、いまにも崩れそうな4階に、看板の出ていない占いの館が入っている。エレベーターもないので、4階まで階段で登らなければならない。グーグルマップにも載っていない、知る人ぞ知る占いの館だ。


一回百万円という都市伝説級の占い料もさることながら、占い師ウィルの愁いを含んだ美貌と重たくリアルな口調、そして占った相手が人狼だった場合の分厚い危機管理マニュアルが、面白半分に人狼占いをしがちなトー横キッズに刺さり、話題を呼んだ。


ぴえん系や地雷系と呼ばれる女子たちは、気に入ったホストや推しができたら、相手をこの占いの館に連れてきて、ふざけ半分に、ウィルに人狼かどうかを占わせた。そしてウィルの深刻な占い結果を二人で聞く遊びが一部の間でひそかに流行っていた。


占いはラインで完全予約制、しかも一人一回のみだ。占いの結果やこの館の情報をSNSに投稿しないことが占いを引き受ける条件だったので、主に口コミでトー横キッズの間に広がっていった。


今朝、幸運にもこの占いの予約を勝ち取ることができたのは、ジェシカだった。彼女は4階まで急な階段を駆け上がり、銀の鈴をカラン!と鳴らして、古い扉を開けた。


ウィル「いらっしゃい。」


この占いの館は、おそらくかつてはショットバーだった内装を、ほぼそのまま利用したつくりになっている。ウィルはカウンターの付け台に水晶を置き、手を組み合わせて、ジェシカと対峙した。


ジェシカは、カウンター越しにウィルを見つめ返した。


ジェシカ「やっと、会えた・・・!あなたが占い師ウィルね。人狼に殺されたメアリーの真の姿が、人狼に追従する狂人だったことを見抜いた、あの占い師ね。」


ウィル「よくお勉強してきたようだが、大人に野暮なことを聞くのは良くないぜ。知らなくていいことは避けて通るほうが安全なこともあるんだ。」


ジェシカ「ううん、あたしは、どうしても知る必要があるの・・・」


ウィル「俺を雇いたいなら、金を見せな。」


ジェシカは、ピンク色のカバンから、札束を取り出した。


ウィル「ふん、本当にそんなものを持ってくるとはな。なにを占ってほしいんだ?」


ウィルは、そっと水晶を引き寄せた。



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