表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/3

②カミラとロディ

私立京王学園 英語科室 朝8:45


英語教師カミラこと神谷恭子は、今日の打ち合わせをALTのロディと終えた。


ロディの本名は、ロデリック・ラングフォード。彼はALTことAssistant Language Teacher(外国語指導助手)だ。イギリスののどかな田舎から来日したばかりの青年だ。


顔は素晴らしく整っていて、少女が夢見る王子様のような金髪碧眼の外国人だった。もちろん女子生徒からの人気は抜群。廊下ですれ違う生徒はみなロディに笑顔を見せる。


ロディ自身は日本語は3単語程度しか話せないが、それで不便を感じるものはいない。カミラも、ALTが日本語を話す必要はないと考えていた。日本語でも英語でも、生徒が外国人と、心の交流を持つ練習ができれば、ロディの存在意義はある。


カミラはロディの整った風貌をちらりと観察した。窓から刺す太陽の光に輝く彼の金髪は、遠目で見ても、行方不明になったジェシカ・ヴェイルとは違う色と質感をしている。


カミラは、ジェシカ・ヴェイルがロディと親しく話していた様子を思い出した。


ジェシカもまたフランス人形のような金髪碧眼の持ち主だった。最近はアジアのルーツをもつ生徒は増えてきたが、ジェシカの容姿はクラスでは大変めだつものだった。


しかしカミラを含めて、詳しい生い立ちを知るものはいない。必要以上に多くを語らない性質と、時にKY気味に発動する正義感。多くの生徒たちは、「あの子には日本語が通じないから・・・」とどこか遠巻きにジェシカを眺めていた。ジェシカの国語のテストがクラスでトップだったにもかかわらずだ。


英語もそれほどうまいわけではないが、自分の居場所を確保するかのように、授業中も熱心で、教師に協力的だった。いい子ぶってるだの、外国人のくせに英語が変だのと一部の生徒から噂されているのを聞いたことは、何度かある。


カミラ「ねえところで、ロディ、あなたジェシカと仲が良かったわよね。なにか変わった話を聞いたこと、ないかしら。」


ロディは協力的だがいぶかしがるような顔つきでカミラを見た。


ロディ「変わった話、って、どういうこと?」


カミラ「そうねえ、彼女に宿泊先を提供しそうな、親せきや友人について。」


ロディ「彼女は先月から行方不明だ。彼女の保護者が、警察に捜索願を出したって君から聞いたよ。それ以上のことは何も知らないね。」


カミラ「そうね・・・ねえ、でもロディ、今回の彼女の失踪について、きっと私たち、もっと何かできることがある気がするの。それがなんだかわからないんだけれど。彼女がどこかで、私を呼ぶ声が聞こえるような・・・」


ロディ「カミラ、君は責任感のある良い教師だ。だけど、あまり一人で歌舞伎町みたいな繁華街に行かないほうがいい。人が多いところほど、人狼が紛れ込みやすいんだぜ。」


ロディのラップトップパソコンには、あの歌舞伎町のラウンジ嬢惨殺事件のニュースが出ていた。


カミラ「そういうあなたは、深入りしようとしすぎていないわね?イギリスが古くから人狼と戦ってきた歴史を生かして、日本の人狼被害を食い止めるために、日本で名探偵になるのが、あなたの夢なんでしょう?」


ロディ「深入りって、どこから?」


カミラ「ロディ、あなたがやろうとしていることを説明をせずに、私に程度を判断させるのはずるいわ。」


ロディは笑ってそうだね、と、うなづいた。


一時間目の予鈴が鳴った。二人は教室へと向かった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ