402.【番外編】緊急事態発生!ポーラの花粉地獄!!3
夜分遅くなので、ヴァージルを残して早々に退散。くしゃみをするミュスを狩りながら再びアランブレへ移動した。
柚子:
花粉の異常発生には必ず原因があるって、あるのじゃ。
ソーダ:
例えば?
柚子:
書いてないのじゃ! というか、その本を探すのに手間取ってるのじゃ。ラインナップが違うのかもしれないのじゃ。
八海山:
そういえばセツナ君、【鑑定】結果はあるか?
セツナ:
たいして役に立たない結果でしたね。
ポーラの木。花粉は咳症状を引き起こす。現在異常状態。です!
ソーダ:
まんまだな。
セツナ:
ただ、最後に空白があったから追加情報ありそう。【鑑定】のレベルはだいぶ上げてるから、どちらかというと条件クリアで見える形のものかもしれない。
案山子:
その場合の条件ってなんだろねッ!
ソーダ:
セツナは、貸本屋で本を読めば出てきそうだけどな。
ピロリ:
そうだけど、普通のルートだとどうなるのかしらね。薬師経由?
八海山:
ありそうだな。NPCから情報が引けないか色々探ってみるか。
俺は大人しくミュス狩り。いくらヤーラ婆だからといってさすがに夜中越えて叩き起こすのは悪いなと。老人はいたわらないとね!
そんなこんなでクランチャットではなんだかんだと騒がしくあちこち探しまくっていたが、俺はミュス狩り平常運転。夜が明けて、しばらくしたところで冒険者ギルドに納品に向かった。
「おはようございます」
「おはようございます、セツナ様……くしゅん」
ここにも被害者が。
「ミュスの尻尾ですね、くしゅ……いつもありがとうくしゅん」
ひどい有様だ。
「だいぶ症状が出てきていますね」
「本当に困りました。百年に一度あるかないかのことらしいです」
「それは、本当にまれなことなんですね」
そんな稀なことが起こったのはなぜなんだろう?
アランブレの朝市でご飯を食べて、ぶらぶらと露店を見ているうちに九時になった。みんなくしゃみをしながらも商売をしている。働かないとご飯食べられないもんなあ。
「おはようございます」
「いらっしゃいセツナくん。準備しておいたわよ」
そう言うアンジェリーナさんの手には本が二冊。
俺は代金を払って席に座ると読み始めた。
なんでもポーラの木に関してと、花粉の人体への影響について。木肌があのように硬いのは、虫型モンスターからの攻撃を防ぐためだそうだ。
花粉が可燃性なので、火気厳禁。特にポーラの木の群生地では爆発を起こすこともあるという。
「虫型モンスターいたかなあ?」
木は結構密集して並んでいた。植林されたようなきれいな並びだった。
モンスターから身を守るために花粉を飛ばしているのか? ここで死ぬなら子孫を作らねばみたいに。
と、突然店の外で大きな音がした。
聞いたことがあるそれは、ウロブルのモーゼスさんの咳の音に、セバスチャンの咳の音に似ている。
アンジェリーナさんと一瞬顔を見合わせて外に飛び出すと、見知ったドワーフが道ばたで膝を突いて苦しそうにしていた。
「ハザック親方!!」
慌てて駆け寄る。親方の家はここからすぐそこだ。
「発症してしまったのね。とにかく家の中へ。外よりは花粉もマシよ」
俺が親方をおぶっていければよかったのだが、親方背は俺より低いくせに筋肉多くて重いんだよ! 肩を貸して引きずるように運ぶ。
家の中に入ると、キッチンでコップに水を入れて持ってくる。この家のキッチンは熟知している! 親方と家飲みしたこともあるからな。
「親方、これ、コーララ草から作った咳止めです。飲んでください」
血反吐を吐きそうなひどい咳の合間に包み一つ分の薬を放り込む。震える手で水を飲むと、ピタリと咳が止まった。
怖いって、この効果。
「た、助かった、セツナ、ありがとよ……」
「いえ、タイミングがよかったですよ、親方。でも今は、外に出るのはあんまりよくないです。家にいてください」
「俺もそう思ってたんだがな、王城の仕事があったんだよ」
はあ、と大きく息を吐いてソファに寝転がっている。
「こんな日に行かないといけないなんて、大変でしたね」
「次頼まれている仕事があってなあ。それに必要な木の調達でちょっともめてるんだよ。いつも使ってる種類が、ケランビュスに軒並みやられてな。それで材料の話し合いだのなんだのだ。早く建てさせろ、って感じだが、材料がないとなったらさすがの俺も動けねえ」
「ケランビュス?」
「虫のモンスターよね、確か。色が派手だった気がする。それをモチーフにした宝石のペンダントが一時期流行ったのよ」
スカラベ的な? 愛され甲虫枠なのだろうか。
「やることはえげつねえけどな。木の幹を食い破るし、地中で根を切ることもある。木に卵を産み付けて増えるんだ。今年はケランビュスを好物にしているヒルンド鳥の繁殖が上手くいかなかったようだ」
「ヒルンド鳥、群れで子育てをする鳥だったわね。ああ、巣を作るあたりでモンスターが大量に発生したって話は聞いているわ」
モンスター大量発生でヒルンド鳥が数を減らし、捕食者がいなくなったケランビュスが増えすぎたのか。それで硬い木肌になり、身の危険を感じて花粉を振りまいていると。
大迷惑だなあ。
「ケランビュスに関する本はありますか?」
「そうね……」
親方の症状が落ち着いてきたので、俺とアンジェリーナさんは貸本屋に戻った。探してくれた二冊の本を読む。
ケランビュスは手のひら大の昆虫型モンスターらしい。手のひら大。けっこう大きいぞ?
日中は地中に潜っており、真夜中に地中から現れ木を囓る。
ケランビュスは枯れ木に卵を産み付け繁殖するようだ。そのため木を枯らして産み付ける木を作ることまでする。予想通りポーラの木も彼らにとって好みの木であると記述がある。
そうして害された防衛反応が、木肌を硬くし、子孫を残すぞと花粉を飛ばしまくる。
大迷惑である。
つまり、ポーラの木というより、ケランビュス討伐戦!
柚子:
こっちもやっとそのケランビュスの情報に辿り着いたのじゃ~!
ピロリ:
夜中まで暇よねえ。
案山子:
土ほじくり返したら出てくるんじゃないの!?
半蔵門線:
せっかくだしプレイヤーみんなでやってみるでござるか? 暇だし。
ソーダ:
暇だしなあ。やるか!!!
俺は昼間は本屋にいたいからパスした。
クランチャットでわーきゃーしていて大変楽しそう……かな。
柚子:
ショッキングピンクの虫は拒否!! 本能が拒否するのじゃっ!
セツナ:
それを模したアクセサリーが流行ったそうですよ。つまり、香水瓶にも取り入れて!!
柚子:
拒否じゃーっ! ……いや、瓶ならありなのじゃ?
ほじくり返したら結構出てきたようだ。
ある程度現場のみんなで虫を退治していると、とうとうエリア全体にステータスバーが出たらしい。
ソーダ:
ひゃく……まんだと……。
百万匹のケランビュスを始末しろとのこと。
結局夜中現れる時間に効率よく戦わなくてはならない模様。しかも火はなし。
案山子:
弱点属性が風だよ~
柚子:
ウィンドカッターちまちまやるのじゃ。
火と氷の魔術師たちがしょんぼりしている。
半蔵門線:
セツナ殿ぉー!! 風付与をくだされぇ。
ピロリ:
私もーっ!!
セツナ:
午後五時まで待ってくださいね~
読書タイムは外せない。どうせ一日じゃ終わらないだろう。百万だよ!?
あの特設会場はかなり広かったが、それでも何日か頑張るイベントなんだなって思いました。
結局、リアルで三日間かかった。驚きなのはポーラの木が範囲風魔法でびくともしないこと。そして、落ちた花粉が舞い散る。デバフやばかった。スキルはほぼ出せない。魔術師たちの詠唱キャンセルが多々あった。【鑑定】の空白の部分には、『ケランビュスの発生により防衛モードに入った』とあった。
ケランビュスからはたまに魔石がとれて、これが冒険者ギルドの高額買い取り。お金にはなった。
『おかげでセバスチャンも元気になったよ、ありがとう』
ヴァージルからお礼のメールも届いていた。
可愛くくしゃみをしていたアンジェリーナさんの姿もよかったが、やっぱり元気に微笑んでるアンジェリーナさんが最高でしたとさ。
リアル花粉症のユーザーの間で、ヒルンド鳥保護の動きが起こり、生息地を特定、その地にいるヒルンド鳥の巣を襲うモンスターを総出で狩ったそうだ。
同じ過ちを起こさないため……といってるが、生態系破壊しているので、また何かおこりそうだなと思いました。
ブックマーク、評価、いいね、感想、ありがとうございます。
誤字脱字報告も助かります。
スギの花粉飛ばさない子には期待しているのですよ……色々問題もあるだろうけど、国民病と言われるくらいになってきているし、頑張って何とかしようと考えてくれる方々には感謝しきりです。
来週から本編に戻ります。




