392.欠片を取ったその後の村
星々の欠片が実る木はすぐ見つかった。【鑑定】で『星々の欠片の木』って出た。まんまだよ。
『それにしても怖いな本当に。なんかぐいぐい来るし』
『めちゃくちゃお誘いいただいちゃったわね。あれじゃない? 冥界の王から差し出されたザクロの実的な』
『絶対食べちゃいけないやつでござる』
『黄泉の国から帰れなくなっちゃったイザナミさんみたいになりたくないでござる』
満場一致で彼らから食べ物は買わないという話になった。
木は常緑樹な感じで丸っこい葉っぱがわさわさついている。つぼみすらないので夜むくむくと実が出てくるタイプだな。
そして、今このあたりにモンスターはいない。きれいなものだ。
『多分夜になると実を狙って出てくるのだろう』
『なんかカエルと戦った時もそうだった……』
『あー、親分!』
八海山の言葉に俺は思い出したよ。舌を伸ばしてきたやつらのことを。
ソーダが懐かしい懐かしいと笑っている。
かなり昔の話だな。
『もうすぐ夜だし、待ちましょう』
『街に帰るの嫌だしねッ!』
どうせあと一時間ほどだ。
太陽が沈み、次第にあたりが暗くなってきた。
【気配察知】が働く。
『土の中からなんか出てきたでござる』
『にょろにょろしてるわ~』
オレンジ色の蛇がぞろぞろ現れたのだ。木に巻き付いているやつもいれば、こちらに攻撃を仕掛けてくるやつもいた。
無論返り討ち。
だが、数が多い。
『柚子ちゃんのフロストサークルが恋しいわぁ~』
『せめて【薄氷】しますね。なんかスキル怖いし』
『MP補充任せてッ!』
とはいえ、【薄氷】て、貫通しないといけないんだよ。地を這うにょろにょろさん……。
『ちょwww 今までに見たことのない剣の振り方だな』
しゃがんですいっと地面近くに振るってみました。
『木の上にいるのどうしよう』
『拙者が集めるでござるね~』
ソーダが【一身集中】してはいるのだが、木の上から飛びかかろうとしている。そういったヤツには半蔵門線の石が飛んだ。ものを投げつけられたらそいつに飛びかかる。
「【水付与】【針雨】」
前方に雨を降らせることにした。木には不思議と影響がないのだ。これは前に実験したときにわかっている。
「水バフをちょっと本気で取りにいかないとかな」
とは八海山。針は物理なのでなんとも。
「火以外の全体魔法……やっぱり氷……とるべきか」
火はかっこいいんだけど、延焼が怖い。
といいつつ、発動の早い【ダークストライク】と、【アイスアロー】でびしばし始末している魔術師はかっこいい。
周囲のヘビをあらかた始末したところで、木に実が生りだした。
枝の途中にぽわんと光る部分が現れ、それがだんだん大きくなってくるのだ。
が、また蛇だ。
「リポップ早すぎだろお!! 【薄氷】はいいや。全部【針雨】に突っ込ませよう」
と、森の奥の方から人影が現れる。
「レイス来たぞ-、八海山!」
「普通のレイスだな、任せろ」
普通のレイスは慣れたらしい。ビシバシ退魔師として活躍していた。数が多いからRP部分は省略です。
そうやって、ヘビとレイスを始末しつつ、【鑑定】で『熟した星々の欠片』と出たものを、俺が採って回った。【鑑定】使えて素早いし、ここは俺のお仕事。俺が必要な物だしね。
親方の分も、と思ったがどの程度必要なのか聞いてこなかったので、採れるだけ採って行くことにした。
気づけば二時間くらい狩りをしていた。
これだけあれば足りるだろうという分を確保できたので帰ることにする。マップの形上、どうしてもあの村の側を通るのだ。
今日はお祭りがあると言っていた通り、たくさんの照明とともに露店がやまほど。村は小さいからそんなに人数はいない。
「おや、さっきの冒険者さん。よっといでよ。美味しいパイもあるよ」
「パイッ!」
ダメだって言ったのに反応する案山子はピロリに腕をとられていた。
「痛い……」
ダメージ判定は出てなかったからセーフだと思う。
たくさんの明かりと提灯と、お面をした子どもたち。大人たちもみんなこちらを見ている。
それらに影はない。
つまり完全に幻である。
「申し訳ありませんが急いでいますので」
急いでるんだよ。普段だったらマップからぴょいっとクランハウスに帰ることができるのに、今回できなかった。たぶん、これもイベントの一環。
次のマップに出たらきっとボタンをぽちっとなできると思うんだ。
「そんなこと言わずに。一つだけでもいいからさ。買っていっておくれよ」
「何でもいいんだ。私たちの村のものを」
追いすがってくるから怖くて俺たちは走り出す。
「俺っちも、おんぶしてッ!!」
「無理です」
「身長低くしてきて!」
屋台にいた村人たちもこちらへ向かってきた。
怖いよー!!
「待ってくれ!」
「何でもいいから買ってくれ!」
「買ってくれないと、買ってくれないと……!」
「今年もまた無理なのか……」
「ああ、神よ!」
え、ちょっと悲壮感が。
村の敷地からは出られないらしく、村を示す柵の向こうで地べたに這いつくばって絶望していた。
だいぶ後日。
どうやらこの村は星が落ちてきたときに観光名所として栄えたらしい。金がどんどん入ってきて、湯水のように使う日々。あるとき旅人がやってきた。彼は持ち合わせがなかったが、飢えて疲れきっていた。
村人は言った。
「金がないならここへ来る資格なんてない」
「ほらみてごらん、これだ。金を出せ。金がないならとっとと帰るがいい」
旅人は、とある星座神の化身だった。
「金に執着し、無駄に使うお前らは、金を稼ぐことの大変さを忘れてしまったようだ。それだけ持っていて、まだ欲しがるとは。飢えて死にそうなものにまで金を要求するとは。1シェル稼ぐことがどれだけ大変か、思い知るがいい」
そう旅人が言うと、空から星々が落ちてきた。村は一夜にして全滅してしまった。
一年に一度、村が復活する。そのとききた旅人から1シェルでも稼いで受け取れば生き返れると言われた。
それ以来、一晩だけ現れる村人たちは、やってきた旅人へなんとかして商品を売ろうとするのだが、失敗し続けている。
と。
「これ、復活させたらよかったってこと?」
「いや、なんかしら妨害が入って買い物ができないらしいんだよね。それでもなんとかくぐり抜けたらいいイベントに出会えそう」
「来年また行くでござる」
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一夜だけ浮かび上がる街。
なんとかして人に物を買ってもらおうとする。
この話をどこで読んだのか未だに思い出せない。知ってる人がいたらぜひ。
どちらかというと西洋風だったと思うのですが。




