287.星座神の加護
まあわからないものはわからない。贄だけじゃヒントが少なすぎて困る。とりあえず置いておいて、次へ行くかということに。第11都市は小人族たちの本拠地だ。通りを歩いて行くと確かに小人族とのすれ違いが多くなる。
『柚子早く来れるといいな。この一帯から帰ってこなさそうだ』
『店が、3軒に1軒が酒屋な件について』
『わかりやすくていいわね』
『この辺り覗くのは楽しそうだし、ユーザーが求めていた場所かもしれないな』
『報告しておく』
完全に先乗りしているのがバレたし、ちょうどいいから観光案内や拾ったクエストなんかをスレに投下しているという。
『何か情報開示しない方がいいことがあれば早めに言ってくれ』
『本関係は確認お願いします!』
『それは承知してる。あとはヴァージル関係もだな』
そうだな、パイセンたまにすごいこと漏らしてくるからな……。
そしてたくさんの小人族と一緒に塔へ。ここは蟹座。
『蟹座はアレだよね、踏まれてた』
『ヒドラがヘラクレスにやられそうになっていたからと助けに行って踏まれたんだ』
『蟹座は勇気とか友情、縁切り、餌食』
そういえば以前本で読んだ情報が知識にあったと調べればそんな単語が並んでいた。
『参考までに先ほどの牡羊座は?』
『納付、農業の神、犠牲、生贄だね。あったね、贄』
『そこら辺が関係してそうだねッ! てことは、蟹座は友情アピールしたらいい?』
『何かいいことあるかもね』
ということでそれぞれ友情を交えてお祈りをすることにした。
蟹座もそのまま、大きなカニが台座にのっかって、天井から降り注ぐ陽光を浴びている。右の爪の方が大きくそれを天に向かって突き出していた。
順番が来た俺たちは跪いて祈る。
『友人と一緒に楽しくゲームしてたくさん金を稼ぎたいです』
『友人と一緒に楽しくゲームをしながら市場調査や確率を調べたり、金を上手く回して膨らませたいです』
『友人と一緒に楽しくゲームをしながら強い敵をボッコボコにして爽快感ヤッホーしたいので強い武器も欲しいです!』
『友人と一緒に楽しくゲームをしながら忍者道をひた走って最終的には水の上を走りたいでござる』
『友人と一緒に楽しくゲームをしながら美味しいもの作りたいから新しい材料見つけたいッ!』
前半おまけじゃん。定型文になってるよ。まあ俺も乗っかる。
『友人と一緒に楽しくゲームをしてアンジェリーナさんの助けになりたいです』
『ちょっとセツナだけいいこといってるし』
『欲望ぶちまけなさいよぉ!』
結局蟹座の神様からは何も言われませんでした。
みんな欲望乗せすぎたんじゃね?
塔から出たところで、いい匂いがしてきた。と同時にパーティーチャットに連絡が入る。
『おまたせなのじゃーっ! みんな一緒?』
『お、お疲れさん。今第11都市の塔にお参りに行ったところ。この周り、柚子の天国だぞ。酒屋、武器屋、店、酒屋、防具屋、店みたいな並びになってるぞ』
店の中には食べ物屋が多い。
『にゃーいくのじゃ~!!』
『ただ、その手前の第12都市の塔で、宝珠ください、て祈ったらお告げ来たからあれには来訪者来る前に寄っておいた方がいいと思う』
『ぬぬぬぬ……』
『じゃあ、私たちも周辺の武器屋とか防具屋見てるから、どっちも塔に寄ってからいらっしゃいよ』
『そうしよッ!』
柚子が来るまではそれぞれ店を物色するということで解散だ。誰が1番掘り出し物を見つけられるか勝負だみたいな話になりました。
聖地の形の都合上、放射状に道が延び、さらに丸く円を描くような道がある。バウムクーヘンのように道が通っている。
さらに、円の中心に、塔に近い方はしっかりした家の形をした店舗が多かったが、1番外の外壁近くになると幌を張ったような露店タイプの店が多かった。
鍛冶屋はしっかりした店構えのあたりに多い。
今のところ武器防具で追加はいらないので、俺は露店の方に向かうことにした。面白いものも多いかなと思って。
結論。面白いものが多すぎてお財布緩みそうだから危険ゾーンだった。
本当に雑多なものが多いのだ。布だったり食器だったり入れ物だったり花瓶もあった。
クランハウスの部屋が狭くて辛い。もっとスペースがあったら買っちゃうなこれ。
壁に掛ける絵とかも綺麗な風景とかもいいが、謎のドット模様とか、はがきくらいの大きさの絵がたくさんは、壁にかけたら楽しそうだなと思っていくつか買っちゃった。二段ベッドの壁のところに飾りたい。
リアルの家は、かなりすっきりしている方だ。なぜなら掃除がめんどうだから!! 掃除をしなくて済む家にしてる。めんどうじゃん?
その反動か、クランハウスの部屋は大事にしたいんだよねと最近思い始めました。いや、金たくさんつぎ込んだってのもあるけどね!
『柚子ちゃん到着なのじゃ~カニの神様の加護もらったぞ?』
『えっ!! 柚子……どうやって!』
『これからも小人族たちと楽しく酒を酌み交わせますようにってお願いしたのじゃ。効果は酔い耐性じゃ』
『いらねええええええええ!!!』
『すでに散々飲んでないともらえなさそうだし』
『セツナが1番酒酌み交わしてるだろ? 柚子の次に。ちょっともらえるか試してきてくれよ』
俺はそこまで一緒に酒飲んだ覚えはないんだが……で、やっぱりもらえなかった。
『12星座の加護にしてはしょぼくない?』
『宝珠とは違うし?』
『双子座の加護に比べたらしょぼしょぼな気がする。きっと続けたら効果が増大する系だと思うわ』
『成長型はあるかもしれぬでござる』
なんてことを想像しながら、もう夜もかなり更けてきたから食事にしようという話に。
と言うか流れてくるいい匂いに耐えきれなくなった。
『小人族の酒場がたくさんなのじゃっ』
うっきうきの柚子だ。ゲーム内時間22時過ぎているというのに、人の通りが多い。露店もライトで照らしまくって夜市のようでかなり楽しかったが、酒場には負ける。
小人族で溢れかえる酒場はそれはもう、酒酒酒! 樽がなぜテーブルの横に!?
『この世の楽園なのじゃ~!!』
柚子がこの店がいいと言い張るのでそうしたのだが、かなり大きな酒場で、大盛り上がりだ。
奥まった席に案内されると、問答無用で木のジョッキが出てきた。注文前に酒が渡される……お通し?
「さあ、名物は地底ワニのグリル、バーベキューソース味だよ!」
「お願いするのじゃ!」
生き生きとした柚子に思わず笑った。
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