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この命果てるまで  作者: エビス
序章
4/52

変わった世界

 意識が徐々に覚醒し、ひんやりとした感覚が身体に伝わってくる。

 どうやら床に倒れていたみたいだ。


「うっ・・・!」


 うめき声を上げながら起き上がると辺りを確認してみる。

 そこは意識を失う前と変わらない教室の中で他のクラスメイトも意識を失って倒れていた。俺の近くでは、小野寺くんと永瀬さんも倒れている。


(一体、何が起きた・・・?)


 太陽が点滅し、その後、一段と強く輝いた所までは覚えてるがそれ以降の記憶がない。


 あれは自然現象なのか?それとも他国の攻撃?


(・・・分からない。取り敢えず倒れている人を起こすか・・・)


 考えるのを止めて倒れている小野寺くんと永瀬さんの肩を揺さぶり呼び掛けてみる。


「小野寺くん、永瀬さん。起きてくれ」


 そうやって何度か呼び掛けていると二人の瞼がピクリと動き、ゆっくりと目が開かれた。

 数回の瞬きの後、泳いでいた視線が俺を捉える。


「んっ・・・風音くん・・・?」


「鈴斗・・・?」


 二人がそれぞれ俺の名前を呼ぶ。どうやら記憶はしっかりしているらしい。


「起きれるか?」


「あ、ああ・・・」


「うん・・・」


 二人は身体を起こして立ち上がる。

 起きた二人は、俺と同じように周囲を見て言った。


「一体、何があった?」


「分からない。俺もついさっき起きたから」


 教室の中では、一人また一人と倒れてた生徒が意識を取り戻し始めていたが、全員状況を飲み込めずポカンとしていた。


 そのうちに誰かが呟く。


「電気点けようぜ・・・」


 確かにあんなに輝いていた太陽はいつの間にか沈みかけ、教室内はかなり薄暗い。

 電気の近くにいたクラスメイトは状況を察して電源のスイッチを押してくれた。


「あ、あれ・・・?」


 だが明かりは点かない。

 何度スイッチを弄っても駄目だった。

 これはまさか、停電?


「ス、スマホ・・・! スマホのライトがあるよ・・・!」


 別のクラスメイトが思いついたように言う。

 その言葉を受けて、みんなスマホを取り出しライトを起動させようとした。


 しかし、


「スマホ、点かない・・・!」


「私のも!」


「俺のも駄目だ!」


 教室からそんな叫び声が次々に上がる。

 当然俺のスマホも点かない。

 小野寺くん達はどうかと思って彼らに視線を送るが、二人とも画面が真っ暗なスマホを持って首を横に振った。


「どうなってんだよ・・・」


 誰かがそう言ったが、答えられる人はいなかった。

 そうやってみんな黙っていると階段を駆け上がる音がして、一人の教師がドアを開けて教室に入ってきた。

 このクラスの担任で地理を教えている丸山先生だ。

 話しが面白くて、ノリも良いから生徒からは好かれている。


「おい!怪我している子はいないか!?」


 丸山先生は普段のノリの良さが嘘みたいに真剣な声で俺達に聞いてきた。

 それを受けて、異常な事態だということを悟ったクラスメイト達は、口々に先生に応えた。


「だ、大丈夫です!」


「生きてまーす!」


 それを聞いた丸山先生は、ホッとした表情になるとこちらを落ち着かせるように言った。


「みんな! 混乱しているのは分かるが現状を確認してるからここから動かないでくれ! それと、もし怪我人がいたら手を貸すように!」


 先生は、それだけ言うと隣のクラスの様子を見に行こうとする。

 その時、彼の背中に一人の女子生徒が手を伸ばした。


「ま、待って先生! 弟が家に・・・! 連絡を・・・!」


 名前は、宮住(みやずみ)さんだったか。

 目立つようなタイプではなく、かといって角に居る訳でもない、普通の人だ。


 そう、()()()()()()だった筈だ。


 そんな彼女の伸ばした腕が窓際から教室のドアまで五メートル位伸びて、出ていこうとした先生の肩を掴んだ。


「「えっ・・・?」」


 その光景に見ていた全員が驚く。

 掴まれた先生も振り返り、伸びた腕を見て驚く。


「あっ・・・えっ・・・わ、私・・・!」


 何より腕を伸ばした宮住さん自身も自分の身体の変化に驚き、直ぐに先生から手を離した。

 バチンという音を立てて、彼女の伸びた腕が元に戻る。


「あっ、あっ・・・な、ナニコレぇ・・・」


 宮住さんは、震えながら自分の腕を見て、ヘナヘナと床に座り込んだ。

 直ぐに先生が駆け寄り声を掛ける。


 それを眺めなから俺は一人思っていた。


(あれは・・・"能力"だ)

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