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でたらめに指をさせ

作者:

扉が開いてその内側には凍りついた獣の遺体が寒々しく並んでおりました。捕まえたばかりの呼吸を手のひらにのせ闇の中へと進んでいくつもりです。太陽を浴びてしまえばそこで終わりなのです。期限切れの牛乳みたいな一日。そこに座って見ています。近づくことを合わせ言葉にしてもどこか足りないように思うのです。目で見たことなのでしょうか。本当に。手を伸ばしてしまって後についてくるものは何もないようです。捨ててきました。ありとあらゆるものは全て。太陽の仕業です。姿を隠さなければ。今、手に入れているものまで全て失ってしまうかも知れないのです。



助けを呼ぶ声が聞こえてきて、それをずっと無視していました。だって誰がそんな余力を残しているのでしょう。誰がそんな義務を負っているのでしょう。扉は閉ざされたままです。生まれてこの方開いたためしがありません。天井を見上げています。痛いのと苦しいのが同時にきて、まだ目を覚まさないままでいるようです。夢に見ることを止めないでいるようです。月が溶けてしまう。熱で身体が支配されてしまう。



星空を追いかけていくように。終わってしまった運命の端っこを掴んでいくように。ふとした時に溢れてしまう涙であるように。生きていくことが怖れそのものであるかのように。過ぎてしまうと離れていくというかのように。思い出は増えていきます。夜に寝言を呟く時のように。



差し当たっての行動を考えているとき、手を止めてしまうのはいつも通り過ぎた後だ。気になってからだ。悪いことを考えているときのように、歌うのはいつだって一人きりであったときのように。信じられるものは既に手の中にあって、ふとした時に口ずさむ言葉。欠片。閉じ込めてしまえば良かったのに。逃げ出そうと思う時はチャンスがない。失敗した時は。変わってしまった時は。どうすればいい。一体どうしたらこの夜から抜け出せるのか。終わってしまう時はいつだって。眠れないなら。窓を開けて。その輝きに耳をすませてください。



誰にも言えないことが一つや二つあって。それを触る時に、身に覚えのないことまで思い出してしまう。先程伺った件についてもう一度お訊ねしたいのですが。それを指し示す言葉は一体、世界のどこにあるのか。教えて、知りたい。疑わないことが何より大切な条件であるかのように。従わないことが悪であるならば。それを選ぶ人のほうがもしかして多いのかもしれないなと思った。今日は電車に乗って遠くの町まで向かいます。美術館に行くのです。



閉じ込められてしまったら、どうやって息をする? 満員電車の片隅で呼ぶ声、聞こえたらどうやって返事をする? 世界が変わってしまうように、夕食の献立も変わらないと良いけど。助けを呼ぶ声が聞こえていますか。周りの音に耳を貸さないで暗いところにだけいて生きていたくはありませんか。手遅れなのですと思いこんで鞄に放り込んだ家の鍵。そのまま失くしてしまってもいいけど、最後にどこか欠けたピースを嵌め込む空白を見つけて。夜に紛れた星の形を覚えていますか。最後にはどうか、手を伸ばせばどこか。歩いていけそうなのです。黄泉の川を渡って会いに行けそうなのです。置いてきたものたちに。これから聞こえる言葉たちに。



何もやりたいことがよく分からなくなっていくそこにあるものはなんで私にあるものは何かしらの価値あるものなんだって全く思えなくてそれでここに欠片だけでも残ったようなそのまま言わなくていいことまでどうしようもなく吐き出してしまうのならやっぱり言わずにおこうと思ったならその手を開いて目をくらますような言葉ばっかり並んでるならそんなことはあんまり気にしないようにしようって笑いかけてくるならその前にどこへでも帰ってくれどこまでも追いかけてくれ何かから逃げ出すように駆け抜けた日々の暮らしの中でもう二度と繰り返さないぞと思ったことでも平気で口にしてしまうそんなことばっかりだ飽き飽きしたなら手を握ってみて消えてないものがあるならそこにはまだあるなら言わずにおいたこと確かめるようにして素晴らしい感想の中でうんざりしてるうんざりしてるならそこに止まっていてはいけない。



企むより先に言わずと知れたことがあるはずだ目でみてないのか気がするだけなのか聞こえない振りをしてなおまだ蠢いているものが塊のようなものが信じたくなるものがあったはずだ。



手を入れろ手に入れろ体ごとその隙間にねじ込め、声が聞こえているはずだ、どこまでも遠くまで響く歌声のような遠吠えのような振動が、枯れ果てた心の奥まで届いているはずだ。



出来事が形作る動きを捉え切れないなら今始めようとしていること全て取りやめて、崖の上に立つ、飛び降りる、死なない、その先までいくだけ、どんなところまで深く潜っていけるのか、分からないところまで行く、海面に突き抜ける時、呼吸はしていなかった、瞬きもしていなかった、体が針みたいになって、空みたいになって、消えてしまう前に、弾け飛びそうだった、乱発する頭の中の中身が、汚い気持ちと綺麗な気持ちが一緒になって吐き出され続けていた、どこへでも、どこにでも、ある、ない、歌を歌う。君のことだよ。

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