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完璧で超人で最強の元カノ  作者: Leica/ライカ
第四章 帝国祭編
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ユキちゃん、カスミちゃんコーデ対決

「すまない、こんなことに巻き込んでしまって」

「いえ、二人とも楽しそうなので私は大丈夫ですよ」


凄い勢いで走り回り、あれが良いとかこれが良いとか目を輝かせてる二人を見ると怒る気持ちもなくなる。


「まぁ、私も悪い気はしていないがな」

「ふふ、エリーちゃん本当にカスミさんのことが好きなんですね」

「そうか...?それならもう少し言うことを聞いてもらいたいが...」


やれやれと言いたそうだがどこか嬉しそうでもある。無邪気な妹を見守る姉のような目で、実際に姉がいるユキにとっては馴染み深いものであった。


「君とリンネも仲が良かったのだな」

「はい、この間お茶会をして仲良くなりました」

「茶会か...」

「.......?」


ふと会話が途切れ、小さな沈黙が流れる。先ほどまでは優しい目をしていたのに今は遠くを見つめ、心ここにあらずといった様子だ。


「カスミさん?」

「...!あぁ、すまない。少し考えごとをしてしまってな」


ハッと我に返ったカスミはぎこちなく笑った。


「あの...」

「カスミちゃん~準備出来たよ~」


ユキの言葉は遮られ、近寄ってくるエリーに試着室へと誘導された。


「お待たせ~ユキちゃんに似合うもの選んでおいたよ」

「カスミちゃん~私のセンスに驚かないでよ~」


二人とも自信満々に笑っている。若干不安を覚えるがまずは一着目である。


それぞれがカーテンの向こうに行くと選んだ服が中に放り込まれていく。


「わ...」

「これは...」


「ふふふ~どうなるかな~」

「絶対可愛くなってる自信しかないですよ」


着替える音がかすかに聞こえ、重い鎧を脱いだり拳甲を外す金属の音も聞こえる。


数分待つと中から声が返ってくる。


「あ...あの...一応...着れた...よ」

「ユキちゃんどう?良い感じでしょ?」

「こんなの着たことないから...ちょっと恥ずかしい」


自身のない声からカーテンの向こう側でモジモジしているユキが想像出来る。姿も見ていないのにリンネもエリーも可愛いと口々に漏らしていた。


「わ...私も着替え終わったが...これは...良いのか...」

「自身持ってよカスミちゃん~絶対可愛いから~」


いつも落ち着き礼儀正しいカスミさんの声が慌てている。


「それじゃあどっちから見せる?」

「う~んカスミちゃんからいこう~」

「な...!同時に出るんじゃないのか」

「え~一人ずつじゃないと盛り上がらないでしょ~」

「盛り上がらなくて良い!」


完全にカスミの方が押されている。にやにやと楽しそうなエリーも止まらない。


「じゃあ開けるね~」

「ま...待て...!まだ心の準備が...!!!」


登場したカスミを見た瞬間、リンネの口からは無意識に綺麗と発していた。


黒のワンピースに白い小物を加え、持ち前の赤い髪が一層目立っている。靴は上げ底でよりスラッとした印象を与え、クールな仕上がりなのに恥ずかしがっているのがポイントである。


いつの間にか用意した点数表を出し、リンネとエリーの合計は満点の二十点を叩きだしていた。


「カスミちゃんカッコイイ~」

「カスミさん綺麗~」

「くっ...このような恥...」


赤面するカスミに場は更に盛り上がる。一方まだ出ていないユキはハードルが上がり心臓がバクバクと鳴っていく。


「それじゃあ次はユキちゃん」

「おぉ~楽しみ~」

「ちょっと待って...やっぱり恥ずかしい!」


開けられていくカーテンを必死に抑えて抵抗し、全力で止めようと試みる。


「ユキちゃん、往生際が悪いよ~」

「そうだぞ~覚悟を決めろ~」

「私も見られたんだ君にも出て来てもらわないと困る」

「ああぁぁ...だめ...!!」


力自慢のユキでもカスミが加わった三人には勝てず強引にカーテンは開かれた。


「お~超可愛い~」

「やっぱり似合うと思った~!」

「これは...私の目から見ても良いな」

「あぅ...ううぅ...」


ユキが着ていた服はリンネとお揃いのものであった。黒のショートパンツなんて履いたこともなく、脚なんて見せる準備もしていない。


上は白と半透明な上着を羽織り、これまた腕を見せる気なんてなかった。


恥じらったような仕草と衣装を見た瞬間、リンネとエリーは頭を抱えながら満点の点数表を出した。


「可愛すぎてずるいです」

「も~やば~い」


慣れない服を見られているだけでも顔が熱くなるのに褒めちぎられて更に温度が上がっていく。


どうすべきか分からずカスミもユキもカーテンの向こうに隠れ、一着目は引き分けで終わった。


「じゃあ次はこれね~」

「ま...まだやるのか!」

「ユキちゃん、はいこれ」

「え...えぇっ!」


放り込まれた衣服に二人はまた驚きの声を上げた。


「さてリンネさん~次はどのような仕上がりになりますかね~」

「ふふふ、今回は可愛いではなくカッコイイ系を意識してみました」


審査員のような口調で話し合い、どこからか用意された長テーブルに座って二人の着替えを待つ。


文句は言いつつちゃんと着替えてくれる辺りカスミもユキも楽しんでくれているのだろう。言うまでもなく一番楽しんでいるのは審査員側ではあるが。


「あの...リンネちゃん...これって付けなきゃダメ...?」

「渡したものは全部付けてね~」

「うーん...ううぅん...」


悩んでいるのか着替える音がピタリと止み、ずっと唸っている。


カスミの方は特に問題もないのか淡々と着替えているようだ。


「カスミちゃんの方はちょっと時間かかるから~ユキちゃんから出てもらお~」

「準備出来た~?」

「..........うん」


もう観念した弱々しい声が返ってきた。


「ちょっと元気はないですが準備出来たそうですよ」

「おぉ~それでは登場してもらいましょ~」


どうぞ、というかけ声と共にゆっくりとカーテンが開けられていく。


「あ...あうぅ...変じゃ...ない...」


イメージとしては執事。あえてスカートではなくズボンスタイルにすることでかっこよさを演出している。


全身真っ黒のいかにも仕事の出来る雰囲気、ネクタイもばっちりと決まっている。


だが、最も注目すべきは目。


「ひゅーひゅーユキちゃんカッコイイ~」


ユキが最期までごねた原因、それは眼帯である。きっちりとした格好にあえて一つ加えることで印象をガラッと変えることが出来るのだ。


「やっぱりカッコイイ~似合ってますよ!」


「うぅ...見ないで...」


クールに決まっているのに動きは乙女そのものである。そんなギャップが審査員の心を鷲掴みにした。


またしても満点を叩きだし、リンネに至っては悶え苦しんでいる。


かっこよさを追求したはずなのにいつの間にか可愛さに変換されている。ユキの魅力の前ではどんな格好でも似合ってしまうのだ。


「次はカスミちゃんの登場だ~」


エリーのかけ声と共に勢いよくカスミが登場する。


自信満々の表情と相まって皆の視線は釘付けになる。


黒の和服に赤い袴、桜の刺繍が施された羽織が和の雰囲気を強く出していた。


どちらかと言うとカスミは鎧やドレスが似合う顔立ちをしている。それにも拘わらずここまで着こなせるのは彼女の魅力あってのことだろう。


「てっきり変なものを着せられると思っていたが...」

「む~私のこと信じてなかったの~?」


ちょっと不服なのか目を細めてエリーは抗議する。ぶーぶーと怒り方も可愛くて全く怖くない。


「良いな~カスミさんのはカッコよくて」

「ありがとう。君のも魅力的ではないか」

「うぅ...そんなことないですよぉ...」


羨ましがってはいるもののユキにもカスミにもそれぞれの魅力がある。二人が会話しているだけでおしゃれレベルが上がっている気がする。


審査員の評価は文句なしの満点。二回戦も引き分けに終わり、コーデ対決は更にヒートアップしていく。


「じゃあ次はこれ~」

「待て...もう良いだろう」

「ユキちゃん、これも着てみて!」

「え...ちょ...ひゃあぁ!」


問答無用で着替えさせられ次々と変身していく。


ユキは白衣を着せられ研究者になり、フリフリのドレスを着せられてお姫様になり、最終的にはクマをモチーフにしたパジャマを着せられていた。


カスミはシスターのような格好をさせられたり、踊り子のようにお腹の見える服を着せられたり、最後にはウサギ耳がついたパジャマを着ていた。


「エリー...」

「リンネちゃん...」


「なに~?」

「どうしたの?」


「私で遊ぶな!!」

「私で遊ばないで!!」


散々やりたい放題されたユキとカスミの怒りが爆発し、店内に怒号が響き渡る。


こうしてユキちゃん、カスミちゃんコーデ対決は引き分けのまま終わった。

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