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完璧で超人で最強の元カノ  作者: Leica/ライカ
第四章 帝国祭編
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悩みの種

「まぁ、驚くのも無理はない」


コーヒーを飲み、テラは冷静に話し始めた。


「裏切り者という文字しか見えなかったから誰なのかも分からない。だが...この帝国軍領が魔物に侵攻される。その映像だけは見えた」


「それって...」


「あぁ...非情にまずい事態だな。今からどれだけ手を打とうがこの事実は変わらない。そこは最高司令にも報告済だ」


確定した未来って...ここが魔物に攻められる...?


「それって何時くらいなのかは分かるんですか?」


「さぁな...そこまでは分からない」


「........」


「........」


何時になるか分からない、それでも確実に起こる事象。


「どうしても防ぐことは出来ないんですか?」


「無理だな」


「......」


「......」


ユウキとユキは目線を交わして押し黙った。


どうしたら...


「どうして私達にこの話を...?」


「それはな...」


テラの表情は一瞬曇る。しかし、普段の顔に戻り淡々と言葉を続ける。


「映像の中ではお前達が戦っている姿も映っていた。根拠は薄いが...死にかけても尚戦っている奴を疑うほど私も鬼じゃない」


コーヒーを飲み、テラはこちらを見つめてきた。一応信頼されているのだろうか。言葉も少なく、表情でも読めないがそう思っても良さそうだ。


「じゃあこの話は僕達以外は知らないんですか?」


「あぁ、そうだな。裏切り者の件は怪しいと思った者を私に報告してもらいたい。大変だが出来るか?」


「.......」


「.......」


再度二人は視線を交わす。出来るだろうか。そもそも検討もつかない。Q総司令...?カスミさん?エリーさん?

それともロイ...ククル...ルーミさん...


ルナの名前が出た瞬間、ユウキは思考を止めた。裏切り...そんなことをするような人には見えない。だけどもしかしたら...という嫌な感情が渦巻く。


二人は黙り込んだ。


だが...


「分かりました。出来る限り頑張ります」

「疑うのはあんまり得意じゃないけど私も頑張ります」



「お前ら、随分と顔つきが変わったな」

「....?」


帝国軍に所属したばかりは無理をしているのが見え見えだった。戦わなければいけない。でもその覚悟が足りていないように見えた。


ユキも安全な任務から一変し、命を落とす可能性に直面した。その事実を受け止め、彼女の闘気はより一層高まった。当の本人は気づいていないようだが。


やれやれ...年寄りみたいな思考になっているな...


「とにかくこのことは他言無用だ。任務中も探るのを忘れないでくれ」


「はい」


「分かりました」


「話は終わりだ。帰りはノアに送ってもらえ」

最期のクッキーを口に含み、コーヒーを飲む。カタンと椅子から立ち上がる二人を見る。


今は何も知らなくてもいい。


テラの脳裏にはあの日見た光景が蘇ってくる。意識が途絶えているユウキは血まみれのまま倒れ、ユキも満身創痍でユウキを抱える。そんな絶望的な状況のユキの視線の先には赤く煌めく魔族の目。


ゆっくりとこちらに歩み寄ってくる。もはや戦う気力もなく、ただ見ることしか出来ないユキ。映像はそこで途切れた。


.........


疑えるはずもない。あそこまで魔族と戦う二人を私は信じるしかない。


テラが見た未来。その先は死か、あるいは。

そんな未来を二人に教えるべきか。テラは頭を悩ませた。


こんな能力なんてなければ、悩むこともなかったんだがな…


テラはコーヒーを飲み、深いため息を吐いた。

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