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完璧で超人で最強の元カノ  作者: Leica/ライカ
第二章 エーヲ村編
13/71

理由

「ロイ、ユウキ。無理に戦闘する必要はない。避難するための時間を稼げ」

「了解」

「分かりました」


 村は、入り口の炎は消えても今だ業火に晒されている。

 三人が進む先は家も焼け落ち、悲鳴と魔物で埋め尽くされていた。


「あぁぁあ!!」


 あちこちから悲鳴が聞こえる。

 ゴブリン、オオカミ、人の顔と鳥が合わさったハーピー。

 ライオンとヤギの頭に尻尾が蛇のキメラ。

 三メートルを超える一つ目の巨人、サイクロプス。

 下級から中級クラスの魔物が蔓延っていた。


「いやぁぁぁ!」


 悲鳴の先では、サイクロプスの手に掴まれた女性は必死にもがいていた。

 足をばたつかせ、手を必死に叩く。

 しかし抵抗も虚しく、口に運ばれている。


「やだぁぁぁ!」


<仁王:剛斧(ごうふ)


 ギルバが抜いた斧はサイクロプスの足を一振りで両断した。

 更に空高く飛び上がり腕を切り落とす。


「グォォォ!」


 空中で女性を抱え、片手でサイクロプスを両断した。

 一瞬のうちに巨大な体はバラバラとなって崩れた。


 ガシャ


 着地すると重々しい音が鳴った。


「あ......あぁ......」


 肩から下ろされた女性は、ショックで放心状態に陥っていた。


「安心してくれ、もう大丈夫だ」


 そう言い、ギルバはニカッと笑ってみせた。

 その笑顔のお陰か、女性の虚ろな目に少しだけ光が戻る。


「あ......ああ......ありがとうございます......」


 震えた声でそう言うと女性はペコリとお辞儀をした。


「入り口まで行けば保護してもらえる。歩けるか?」


 ギルバの問いに無言で頷き、女性は足を引きずって入り口へと向かった。



「うわあぁぁ!!」


 まだ悲鳴は続いている。

 ロイとユウキは悲鳴の方向へそれぞれ走り出した。

 群がったゴブリンに殴り殺されている者。

 ハーピーの歌声に苦しみもがいている者。

 村の中心は、入り口よりも悲惨な状況であった。


(殺しを楽しんでるのか......)


 ロイの目に映る魔物の顔は生き生きとしていた。

 どうやって殺そう、悲鳴を聞くのが楽しくて仕方ない。

 そんな感情が読み取れた。


「元は人間だったのに......ここまで変わるのか......」


 両刃剣の剣先を地面に突き立てロイは跳躍した。


「ギギ!」

「ニンゲン......!」


「ひぃぃいいぃ!」


<絶夢:五月雨>


 男に群がるゴブリンに刃を突き立てて更に跳躍し、首を斬り落としていく。

 続けざまの五連撃で、辺りにいるゴブリンは全て斬り伏せられた。


「た......助かりました......」

「村の入り口に護衛が待機してる。早く逃げろ」


 刃についた血を払い、ロイは冷静に言った。

 一人を助けて安心は出来ない。

 まだまだ魔物だらけだ。


 ふと、今しがた倒した魔物に目がいく。

 バラバラと光になって消滅し、残骸として武器や鎧が残っている。


「ミル......」


 魔物は人間が変異したもの、だからこそロイには躊躇してしまう時があった。

 もしも魔物になっていたのがかつての友人、恋人、家族だったら、そう思うと剣が鈍ることがあった。

 ロイは胸にしまったお守りに手をやった。

 帝国軍に入る理由は人それぞれだ。

 魔物の殲滅、守りたいもののため、自分の過去を知るため。

 命をかけるほどの覚悟で皆ここにいる。


(俺は......)


 ロイの目的はただ一つ、行方不明になった幼馴染みを探すためだ。

 燃えさかる村の中心でロイは自分の過去と重ねていた。

 幼馴染みを失った日もこんな燃えさかる光景が広がっていた。


「ギシャ!」

「ピイイイイ」

「グォオォオオ!!」


 地獄なのは変わらない、だけど一つだけ違うことがある。

 ロイは武器を構え直した。

 群れる魔物の鳴き声と地響きがロイに迫ってくる。


(あの日から俺は強くなった......)


 ズシズシと重い足音を響かせ、サイクロプスが一頭、こちらに近づいてきた。

 鋭い刃を突き刺し、ロイはまた上空へ飛び上がった。

 サイクロプスの豪腕が真横をかする。

 体をひねって躱し、器用に腕を斬り刻んで進んでいく。


<絶夢:栗花落(ついり)


「グォォォ!」


 勢いよく目に突進し、サイクロプスは頭を大きく仰け反らせた。

 目を抑えようとする両手の間を跳び退き、今度は足に狙いを定めた。


「はぁっっ!!」


<絶夢:菜種梅雨>


 地面に着地した瞬間、四連撃がサイクロプスの両足を斬りつけた。

 そのまま両足の間を抜けて背後に回り込み、背中に向かって一撃を叩き込んだ。


<絶夢:栗花落(ついり)


「倒れろ」

「ガァ?!」


 強烈な衝撃により、サイクロプスは膝をつき、大きな隙を見せた。

 ロイはすかさず跳躍し首元に狙いを定めた。

 

「全力でいく、はぁぁぁ!!」


<絶夢:寒九ノ氷雨(かんくのひさめ)


 両方の刃は加速し両側から何度も攻撃を加える。

 あまりの速さで怒濤の九連撃を叩き込み、また上空へ飛び上がる。


「まだ切断出来ないか......なら、もっと......もっと速く!」


 回転を加え急降下を開始する。

 サイクロプスは手を闇雲に振るも、剣に触れた瞬間に切り刻まれ、大量の血が噴き出した。


<絶夢:山茶花時雨(さざんかしぐれ)


 脳天に一撃を加え、そこから十二連撃が始まる。

 ズタズタに裂かれた首から滴る血、外皮は破れ赤い内部が見えていた。


「ガアァァァァ!!」


 叩き込まれた斬撃によって顔はボロボロに裂け、首は呆気なく落ち、バラバラと音を立てて消滅していった。


「ギ......?!」

「ピイイイ?」


 強力な魔物が打ち倒され、ゴブリンもハーピーも後退る。

 ロイを包囲している魔物の数は多いが個々の戦闘力は低い。

 明らかに怯えているのが見てとれた。


「どうした......怖いのか......?」


 ロイは再び血を払い、冷静にそう言った。

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