表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

8/21

その3

「た…すけ……て…。」

奥の部屋から聞こえる女性の声が。

驚いて振り向くと、そこには血を流したアザだらけの女性が助けを求めている。


「アンヌさんっ!」

「待てっ!」

家の中へ飛び込むユウリの手を掴み、引き止める。

「ユウリちゃん!ダメだ!」

「で、でも!アンヌさんがっ!」


家の扉からユリアを引き離そうとしたところ、

「わわわっ!ナニナニっ!?」

「こら!暴れるなっ!」

目を離したスキに、男がフィンを小脇に抱えて走り去ろうとしていた。


「あ、コラ、テメェ!俺のフィンに何しやがるっ!」

ーバキッ!ー

「グェっ!」

俺は男の後頭部目がけて打点の高いドロップキックを見舞う。

後頭部を蹴られた男はつんのめって倒れ込む。


「フィン!大丈夫かっ?!」

「うん、びっくりしたけどフィンは大丈夫!でもお姉さんが!」

「わかってる!トラブルはゴメンなんだが…!」

俺はフィンの無事を確認すると、部屋で倒れているアンヌに回復魔法をかける。

「アンヌさん、大丈夫かっ?」

「お姉さん、大丈夫っ?!」

「う…うぅ…。」

アンヌの傷は見た目ほど酷くなく、回復魔法で傷はみるみる消えて行く。


アンヌの治療が終わり、奥のベッドへ寝かせると、俺は気絶している男のもとへ。

前のめりに倒れこんだせいで、顔面を石畳に思い切り擦り付けたようで血だらけだ。

「うへ、痛そ。」

俺は出来るだけ男の傷を見ないように、手を後ろでに縛り上げた。

治してやらないのかって?

俺は男には厳しいし、相手が犯罪者なら尚のこと、だ。


「さて、街の警備兵か憲兵に引き渡すか。ユウリちゃん、詰所はどこかな?」

ーし~~~~ん………ー

返事がない。

「ユウリちゃ~ん…。」

俺は呼びかけながら部屋を見回す。

ヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイ!!!!!

俺は男を床に転がすと、慌てて家を出る。

「ユウリちゃん!」

家の前の路地を見渡すが、ユウリの姿はない。


「!」

石畳の路地の上、うっすら積もった白い雪を見ると、

扉の前で俺たちが争った跡の中から、一つの足跡が向こうへと続いている。

大きさから大人の男…くそっ!仲間がいたのか?!


「女の子なら、男が担いで行きおった…。」

騒ぎを聞きつけ、窓から覗いていた爺さんが教えてくれる。

「爺さん!見てたならなんでっ!」

俺は爺さんに掴み掛かり抗議するが、

「すまんな、老いぼれでは止められんよ…。」

「あ…。」

すまなそうに視線を逸らす爺さんの腕は、枯れ木のように細い。

「俺の方こそ、すまない。」

俺は掴んでいた爺さんの手を離す。

「すまないが爺さん、明氷亭の女将さんを呼んで来てくれないか、金なら…!」

「金なんかいらんよ。」

爺さんはポケットに入れた俺の手を制すると、腰をさすりながら歩いていった。



「いつまで寝てんだっ!」

ードッ!ー

家の中に駆け込むと、転がっている男の腹を思い切り蹴り上げる。

「ぐえぇっ!!」

男は吐瀉物を撒き散らしながら、床を転げ回る。


「ハヤト、ユウリは?」

心配してフィンが顔を出す。

「…拐われたっ!クソッ!」

「わ、私のせいでユウリちゃんが…?」

壁に寄りかかりながら、アンヌが奥から出てくる。

「アンタはまだ寝てろ、後で話を聞かせてもらう。」


「フィン、コイツを見張ってろ。

明氷亭の女将さんが来たら、ユウリちゃんは俺が追ってる事を伝えろ。」

「わかった!フィンに任せて!」

フィンは鼻息荒く、控えめな胸をドンと叩く。


「よし、任せたぞ!」

俺は家を飛び出すと、足跡の続く方へ駆け出す。

と、その前に!

「フィンっ!」

俺は家の前でフィンを呼び、

「ソイツが暴れたり、オマエが危なくなったら、いいな、構わずやっちまえ。」

フィンが黙って頷くのを確認し、俺は足跡を追って走り出した。


つづく


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ