06 元正統派王子への罰
「そういえば、まだ一つ残っていたな。そうだ、婚約を破棄しよう。こんなものあっても意味がない」
思ってもみなかったが、その一言がガツンと来た。
その瞬間、私は我慢の限界が来たようだ。
私はつかつかと歩み寄って、その男の頬をはたいた。
「よくも婚約破棄してくれましたわね! 当然復讐しますが、あなたが利用した女性の恨みもまとめて食らうといいですわ」
そして、もう一回ビンタをかましてやった。
それじゃ気が済まなかったので、もう十回くらいついでにやっておいた。
私は、体育館の四隅でこっそり子の成り行きを見守っていた女性たちに視線を向ける。
非道・卑怯男は、今初めて彼女達の存在に気が付いたといった顔で驚く。
「何もないなんて事あるわけないでしょう。間違った関係かもしれないけれど、彼女はあなたを愛して、あなたについてきていたの! 私だって、貴方の中にある可能性を信じて婚約関係を続けてきたのよ、それを何もないだなんて貴方がいうの!?」
思えば、それも一つの才能だったのだろう。
ただ非道なだけの男に、卑怯なだけの男に、大勢の女性がついていくわけはないのだ。
今も彼女達が、この場からいなくならずに、心配そうにしているのがその証拠だ。
彼に利用されていた女性の中にも、利用されていると分かっていながら一緒にいる事を選んだ女性がいた。
その女性の想いを無視しているのが、許せなかった。
「貴方は多くの人を、命の危険にさらしましたわ、だから罰を言い渡します! 貴方についてきた女性全てに、貴方の全てを捧げて、全身全霊で恩を返しなさい。お金も権力も、時間も、体も心も」