表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
忘却の大樹とラウレル  作者: 桂木イオ
3/10

シェアハウスな弌くんちゃん

ガイア本拠地から十は、地図を頼りにアダマンティス寮へと向かった

ガイア本拠地から外にでると、ブラウン系の煉瓦を使用した家々が広がっていた。

商店街、というよりはバザーに近いのだろう。各々が路上で布を広げ、商いをしていた。


「すごー!家でかっ!」


見上げれば、向かいの家同士で広げた物干し紐に、たくさんの洗濯物がかかっている。なんだか運動会の万国旗みたいだ。


「アダマンティス寮は......うぅ、お腹すいたな…...」


いい匂いがする。10っちゃん何も食べてない。匂いに誘われるまま歩けば、大きな鼠色の蜥蜴が豚らしき動物を丸焼きにしていた。時たまタレを塗っているせいか、豚らしきものはいい照り具合である。


「......食べたい」


しかし、1文無し。ちくしょう。


周りをみれば、ここではきらきらとした石が通過になっているようだった。


「お、嬢ちゃん!どうだい食べてくかい!?」

「お金がないので食べられません!!!」


心の叫びを口にしながら、私はバザーの通りを駆け抜ける。とにかく寮に行かねば!!きっと何か食べ物があるから!!


「お腹空いたよ......ひー」


ヴォディーおじさまからいただいた地図を広げ、場所を確認する。間違いない。アダマンティス寮だ。


まるで集合アパートのような長方形の建物が、ずっと奥まで並んでいる。

すれ違う人達は、ドラゴンの尻尾を生やした人や、獣の耳を生やした人など、色々な人がいた。みなここで生活しているようだ。


「ほんとに、異世界なんだなぁ」


わからないことしかないが、上手くやっていけるだろうか。いや、上手くやっていかなければ死んでしまうのだろう。現状私は空腹で死にそうだ。


「若草の1001番......若草の1001番......」


階段を登り、若草の棟10階に到着する。10っちゃんだし、10階は覚えやすいけどさ?エレベーターないの?足ぱんぱんだよ?


「あー!ここがマイホーム!こんにちはお腹すいた何か食わせろ馬鹿っ!!!」


事前に渡されていた鍵で勢いよく扉を開けると、何かが豪速球で頬を掠めた。え?何事?


「......うっさいんだけど」

「......いやいや、誰?」


鳥かごを腰に巻いた男が、前髪で隠れてない方の青い目でこちらを睨んでいる。


「誰って?人の住処に勝手に入ってきて随分な物言いだね。そっちから名乗るべきでしょ」

「はー!?こっちはこの部屋割り当てられてんですー!!なんで人がいるのさ!!君の方が先に名乗れよ!!」

「なんだよこの短パン野郎!!」

「女の子だ馬鹿野郎!!せめてアマって言え!!」


後から思えば、空腹の苛立ちをこいつにぶつけてしまっていたのだと思う。ごめんね?


私は出会って数分も経たない青い目の青年と口論していたのだが、そういえば書類に注意事項が書いてあったことを思い出した。


「待て、もさ頭の鳥頭野郎」

「おい俺も野郎じゃないんだけど?」

「えっマジ?気づかなかった~」

「......腹立つなお前」


書類を確認すると、アダマンティス寮の案内パンフレットに「なお、収容の関係上、同期の異世界者様が同室になる場合があります」と裏に小さく書かれていた。見つかんないわこれは。○ォーリーかな?


「鳥人間さん、悲しいお知らせです」

「なんだよ」

「私と君は、シェアハウスみたいです」

「......は?俺と、お前が」


露骨に嫌な顔されたー。失礼なやつだ。


「......お世話になります」

「やだ」

「うるせぇお世話しやがれ」

「先輩にその口の聞き方はないだろ」


何か言おうとした瞬間、タイミング悪くお腹が鳴った。

「......」

「......」


睨み合いが続く。この人つり目だから怖いが、勇者たるもの負けてはいけない。


「......弌」

「いち?」

八乙女(やおとめ) (いち) だよ。俺の名前。名前も知らねぇ奴と住むなんてごめんだ」

「......十。(いたり) (じゅう)

「ふぅん......」


な、なんだよふぅんって......!


弌は私を上から下までじろじろと見てから「こいよ」と階段を降りていく。


「どこいくの?」

「飯食い。何も食ってないんだろ。おまけに金もないと見た」


大正解!!すごいぞ弌くん!!10っちゃんお腹空いて死にそうです!!


「奢ってくれるんすか!?」

「貸し。後で返せ」

「ひん......」


借金は嫌だが、弌くんに助けて貰わなければどうしようもない。


それにこの人、口は悪いけど根はいい人そうだし、なんとかなる気もする。


再び階段を降りていく絶望感を感じながら、私は弌くんの後ろについていった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ