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この崩壊した砂漠は残酷で美しい  作者: 桔梗ちゃん
崩壊砂漠 第一話 【出会い、別れ】
2/21

その2

ブクマ、評価等々。ありがとうございます!

今回から異世界スタートです


 どれぐらいそうしていただろうか、俺は目の前に広がる光景に、唖然とするしかなかった。

 視界に映る全てが砂漠に早変わりし、雲ひとつない空が太陽の光を容赦なく浴びせてくる、荒れ果てた大地を踊るように巨大なサソリや、子供一人分はある蟻の大群が行進していた。

 地平線の彼方には、そこに山があるのかと錯覚してしまうほど大きなワームが、砂漠の中から顔をのぞかせている。



 「一体ここは…… どこなんだ?」



 数分の時間を懸命に考えて出た第一声が、こうなってしまうのも仕方のない事ではないだろうか。

 誰も俺の問には答えることもなく、代わりと言わんばかりに目の前を高速で通過した、これもまた巨大なカマキリっぽい生物の立ち上げた砂をモロに食らう。


 「おわっ……!」

 

 思わず眼の前を通過したカマキリっぽい生物に驚いて、その場で尻餅をつきながらも目に砂が入らないよう、腕で顔を覆い隠そうとした。

 が、顔を覆い隠そうと上げた腕が何か硬いものにぶつかり、止まる。


 「あれ? ……いつのまにゴーグルなんか着けてたんだ?」


 よくよく自分の顔を触ると、たしかにゴーグルを装着していた。

 茶色を基調としたレンズが別れているタイプの物だ。

 そうして、ゴーグルの他にも改めて服がおかしい事に気がつく。

 自分の服装を見てみると、膝下まで伸びた長い白いローブに防毒用だろうか、アルミ缶ほどのフィルターの付いたマスクが首から下がっている。

 腰にはポーチベルトを巻き付けており、そのポーチからは1Lほどの水が入った水袋と、なんの肉かよくわからない干し肉が7枚ほど入っていた。

 更に、主張するようにポーチベルトの下部に取り付けられた包丁程度の大きさをした片手剣が鞘に収まっている。


 「え? ……は? もしかしてこれ、……異世界に来ちゃったやつなのか?」

 

 いやいや、待て。

 おかしいだろこんなの! 普通は女神様とか神様のいる場所に、なんやかんやで転移して、チート能力なんかもらえたりするもんだろ!

 

 …………

 

 ……



 あー……。 そういえば声みたいなのが聞こえたよな。


 たしかに行きたいって言ったけど、これはさすがに……。

 行き場のないやるせなさを大にして思わず叫ぼうと、大きく息を吸い込んでしまい思い切りむせる。


  「うぇっ……! げっほ……」

 

 身体が拒絶をするかのように、空気を肺に入れた途端、反射的にむせてしまう。

 息をしようと、空気を吸えば吸うほどにむせ返りが強くなっていき、命の危険を感じ始めた時、マスクの存在を思い出す。

 

 「うッ! はぁっ…… はぁっ……」

 

 咄嗟に手でマスクを口元に押し当てながら理解してしまう。

 

 「これ…… 身体に絶対悪いやつじゃねぇか……」

 

 しかし、困ったことになった。

 この際、異世界転移してしまったことは、もう天災のようなものだと思いこむことにして、なんとか納得 ……出来ないけど。

 少なからず、元の世界に帰るにせよ生きていかなきゃならない。

 まずは街を目指す、そして頼りがいのある仲間を見つけて、ひとまず生きていけるようにする。

 そして、最終的に帰還する方法をなんとか探す。

 

 「うん、完璧だな」



 眼の前に広がる果の見えない砂漠を再度見回し、俺は絶望した。



 ― ― ―



 あれから、暫くの間。

 絶望感を噛み締めながらも、俺は砂漠の中を歩き出すことにした。

 だんだんと日差しが、より一層強くなっていき、容赦のない照り返しと直射日光で、喉がすぐに砂漠と化していた。

 

 「あ”ー…… あっちぃな……」

  

 ポタポタと、太陽の反射で白くなっている足元の砂に汗が滴り落ちる。

 落ちた瞬間にフライパンの上に水をかけたような音がする。

 

 「あぁ、もう無理。 限界だ」

 

 水分不足からか、頭痛がしてくる。

 

 「つか、3時間は歩いたぞ…… いい加減、街の一つでも見えてこねえのかなあ!」

 

 半ばやけくそ気味に足元の砂をボールを蹴るように飛ばす。

 足の軌道に合わせるように砂が舞う。

 俺の蹴った場所がすぐさま周囲の砂で埋まっていこうとしていた、その瞬間、太陽に反射して砂以外のものが見えた気がした。


 「ん? 今なんか見えたぞ」

 

 既に歩く気力はほとんどなく、その場で周囲の安全を確認してから座り込み、自分の蹴った場所をほじくり出す。

 不意に掘り進めている途中、硬い感触が手に伝わってくる。

 

 「お? なんだなんだ?」

 

 どうやら両手で抱え込めるほどの何かのようで、硬い感触を頼りに、砂の中から掴み上げる。


 

 それは、自分のローブと同じ様な真っ白な人間の頭蓋骨だった。


 

 「……おいおい。 人が居たのかよ」

 

 完全に白骨化していることもあってか、驚きよりも人がいる可能性があったことに希望が溢れてきた。

 

 「……南無」


 頭蓋骨を目の前に起き、手を合わせていると、先程ほじくった穴から更になにか埋まっているのか、色あせた赤色をしたものが飛び出していた。

 

 「今度は臓器とかじゃないだろうな……」

 

 思わずそう考えたが、白骨化をしているところから見るに、皮膚や臓器などは既に分解されてしまったのだろう。

 恐る恐ると、更に掘り進めていくと、一冊の使い込まれた本が出てきた。

 どうやら日記のようで、内容を見ようとページを何枚かめくってみるが……

 

 「……読めん」


 思わず日記を叩きつけそうになったが、頭蓋骨の空いた目の部分と視線があったような気がして、辞めた。

 しかし、死体を漁った祟りか、掘り起こした砂の中から人差し指ほどのワームが無数に這い出てくる。

 

 「うわっ!? え、気持ち悪ッ!」


 光を眩しがるように蠢くワームを見て、ぞぞぞっと身の毛がよだつ。

 数歩後退りしようと後退を試みた時、ドンっと何かにぶつかる。

 

 「あ、すみませ……」

 

 思わず振り返りながら謝ろうとした俺は、自分のすぐ後ろにいつのまにか居た、見上げるほどのサソリっぽい見た目をした奴に目を疑った。

 ガチガチと1mはある両の鋏を鳴らしながら、鋭く尖った先の濡れた尻尾の針を突きつけていた……。

 やばい、やばい、やばい……!

 幸運なことに、咄嗟に身体を動かすことが出来たのは、褒めてやりたいぐらいだった。

 

 


 俺は一目散にその場を逃げ去った。

お読みいただきありがとうございました!

次回からはこの世界の住人などの説明を少しするつもりなので、お時間がありましたら、

また見てください~!

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