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この崩壊した砂漠は残酷で美しい  作者: 桔梗ちゃん
崩壊砂漠 第二話 【皮肉屋ロネン】
19/21

その2

今回は会話多めですー。

 一瞬の沈黙の後、なにか問題でもあるの? と言いたげに首を傾げるウィンダ。

 信じられねぇ…… こいつら目的も無く今まで進んできたっていうのかよ。


 「なぁ、他の人はどうなんだ。 さすがに一人ぐらい目的があって旅してるんだよな……」


 正直聞くのが怖かった。 だって全員が、え? みたいな態度だもんな!

 俺の考えなど無視するかのようにウィルマがやや声のトーンを落として。


 「アテなんてない。 この砂の海に投げ出されただけ。 向かう方角には希望があるかもしれない」


 つまり目的はないってことだな! クソ!


 心の中で悪態をつきながら、なんだかんだ考えて行動をしてそうな男二人を見る。


 「そこの3人はともかくとして、私はあるかも分からない楽園を探して、あてもなく彷徨っているだけさ」

 「俺は自分の…… 意志に従ってるだけだ。 おれは」

 「つまり全員目的無く旅をしてたってことだな! なるほど! ってバカなのか? バカなんだな?」


 俺はこの仲間たちの輪に入ったことを後悔し始めた頃。 アレックスが困ったように首に手を当てながら。


 「ロネンはともかく、他の3人は具体的な目的地もなく歩いてたなんて…… というかロネンもどこかわかってないなら似たようなもんか…… どこか街に立ち寄らないと、いい加減辛いんだけど。 近くに何かないか知ってる人いないの?」


 そうアレックスが仲間に聞いてみるが、仲間の反応は薄かった。

 ウィルマが少しだけ申し訳なさそうに手を挙げる。


 「……この辺りに土地勘はない。 目印を探すしか無い。 強いて言えば、この方角に進むと崩壊液に沈んだ土地がある。 危険だけど、これ以上の被害はない土地。 私に分かるのはそれだけ……」


 ウィルマの言葉に、アレックスが首をひねり、考えるように。


 「うーん。 そんなところに安全な水や落ち着いて寝られる場所があるとは思えないしなぁ。 ウィンダちゃんは?」


 ウィルマを真似するかのように、ウィンダが はいはい! と元気よく手を挙げる。


 「あたしは特に行く目的地もないし、どうせならみんなについてこうと思ってかな! この辺りはな~んにもわかんないや」


 うん、笑顔で言うの止めような…… 

俺はなぜか嬉しそうにニシシと笑うウィンダを見て、そっと目をそらした。


「それよりもさ。 崩壊液ってなんなのか分かるように説明してくれないか?」


 俺はウィルマの何気なく言った”崩壊液”というワードに引っかかりを覚えた。

 胡散臭そうな者を見る目で見てくるウィルマ。


 「さすがに常識がない。 はぁ、崩壊液っていうのは分かりやすく言えばそうね…… 生きている物質とも言える。 生物や無機物に侵食していき、凄まじいエネルギーを得ることが出来る」

 「つまりあれか。 その崩壊液とやらを取り込めば、俺でもお手軽に強くなっちゃうってこと? その割には名前が不穏だよな」


 これなら手軽に最強になれるじゃないか。

 むふふとニヤける俺を心底ゴミを見る目でウィルマが呆れる。


 「無謀。 崩壊液は生物には諸刃の剣。 過ぎた力は取り込んだ本人の意志すら崩壊させて、膨大な力の行き場がないから、もれなく身体も四散する」

 「だから”崩壊液”なのか……」


 なにそのウィルス兵器、怖い。

 少しビビる俺に対して、ウィルマはさらに付け加えて、俺のマスクを指差す。


 「この砂漠、いえ。 世界中で崩壊液が砂に混じって漂ってるの。 マスクをしてるから知ってるのかと…… いえ、ごめんなさい。 貴方は異世界から来た人だったわね」


 逆に謝られても困るんですが……

 何とも言えない微妙な空気を変えるため、改めて旅の目的を聞く。


 「ロネンとシクソンは、この辺の土地勘とかあるのか? 安全な街とかの情報もあれば教えてほしいんだけど」

 「さてね、私もここらへ来るのは初めてでね。 とにかくは街を探して歩き回るしかないかね。 なに、能天気にふらついていれば、街なんていずれ見つかるものさ」

 「何日経つか、何か月必要かは分からないがね」


 こいつらマジかよ……

 最後の希望のシクソンはどうだ。

 いや、駄目そうだ! なんか既に興味がなさそうにポケットに手を入れてる。


 「俺は黙って君たちについていくよ…… 君らがどう思うともね」

 「なに? 前に他のみんなに何かしたの?」

 「俺は皆に何もしてない……」


 もう話は済んだと、朝日を浴びながら湖に向かって歩き始める。

 俺は歩き出したシクソンの背中を見送り、近くにいる仲間の方を見ながら全員に聞こえるように言う。


 「…………本当にそんなノープランでなんとかなるもんなの?」


 俺の呆れ半分の疑問にウィンダが腰に手を当てて少しだけ膨らみのある胸を張る。


 「大丈夫だよー。 それで長生きしてるもんね!」


 うん、威張る事なのかそれ……。

 ウィンダを皮切りに、ロネンとウィルマも考えている事を話す。


 「死にかけたことは数えきれないがね。 最も、プランを立てるための情報がないのだから、結局は総当たりになってしまうのかね」

 「……なんとかするしかない。 なんとかならない時は私達が死ぬ時だから。 でも進まなければ見つかるものも見つからない」


 本当に大丈夫なのかこの面子は……

 幸先が良いと思いきや、逆に不安の種が増えてしまった。

 俺…… 生き延びれんのかなぁ。


 不安が顔に出ていたのだろう、アレックスも心配そうに俺を見てくる。


 「シンヤ、大丈夫? 顔色悪いよ。 熱中症になったりしてない?」


 違うんだ……。 違うんだよ、アレックス!

 どちらかと言うと、顔色よりも幸先が悪いんだよ!

 そんな事を守ってもらっている立場な以上言えるはずもなく、誤魔化すように俺も歩き始める。


 「大丈夫。 ちょっと今後について心配事があっただけだ。 とりあえず何があるか、何もないかもしれないどこかへ進むとしよう」


 先頭を少し先に行くシクソンの背中を追いかけていく。

 すぐに飲水にありつけると思ったのも束の間、あざ笑うかのように進めど、楽園は同じ距離だけ離れていく。

 しかし今更戻るわけにもいかないだろう、仕方なく進み始めた俺達。

 突如、遠くの後方から微かに大地を何かが駆ける音がしてくる。


 「聞いたことないんだけど、これって砂漠では何の音?」


 少なくとも、俺には聞き馴染みのない音で、思わず後ろをついてきていた仲間に確認する。

 その瞬間。 遠くで大きな砂煙を引き連れながらも、こちらに爆走してくる無数の巨大なサソリ。 ”バークス”を見つけてしまう。

 その数なんと十頭越え。


 「やべえぞ! 後ろからバークスが追ってきてる……!」


 俺は仲間に迫りくる危険を知らせようと大声で叫ぶ。

 チラりと後方を確認したウィルマが、先程までの呑気な雰囲気から一変、焦りにも似た緊張感を漂わせ始める。


 「……! 後方警戒、対象数確認、急速に接近中……」


 咄嗟にウィルマが後ろを見て、膝撃ちの体制になりながら銃を構える。

 その目は真剣そのもので、熟練の廃品回収業者スカベンジャー と呼びたくなるほどだった。

 俺は恐怖心から、一気に心強く感じてしまう。


 「おぉ。 ウィルマの姉さん! やっちゃってくだせぇ!!」


 へへっ。 トラウマなんでね。 アイツは……

 続けてそう言おうとした瞬間。 俺の首根っこをロネンが力強く持って引っ張っていく。


 「予想はつくが、たいていろくでもない音かね。 早く走ったほうがいいぞ」


 そうだけ伝えて、俺を俵担ぎしながら走り出す。

 他の仲間の心配をしたが、ウィンダも必死にアレックスの手を引っ張りながら走り出していた。


 「……駄目だよあれ! 強い魔物だよ!!」

 「え、なになになに! 何が来てるの!?」

 「この音は前にも見た蟲さんだ! 絶対に逃げなきゃぁ!」

 「蟲!?やだやだやだ!」


 走るアレックスの困惑した声を聞きながら、俺はロネンに引っ張られ、ぐんぐんと距離を離していく。

 だが、ロネンよりも速い人物が居た。 そう、シクソンだ。

 無駄に綺麗なフォームをして仲間の中で一番のフィジカルを見せつけていた。

 ……いやお前、魔道士じゃないのかよ!!


 それよりもウィルマが遅れてるけど大丈夫なのか?

 俺は心配する様に、シクソンを見た後に後ろにいるであろうウィルマの方を向く。

 だが、そこには姿はなく。 気がつけば隣でロネンに並走していた。


 「いや、速いな! というかさっきのカッコイイ姉さんはどうしちゃったんだよ!」


 俺の言葉を無視しながら、ウィルマは淡々と告げる。


 「……早急に撤退、敵う相手じゃない」


 そして、一度ちらりと顔だけ振り返る。


 「……対象総数3、前10、後1。 ……追われている?」


 ん? 俺が見たときより多くなってないか?

 ウィルマの言葉が気になり、よくよく追いかけてきている魔物を目を凝らして見つめる。

 バークスの群れの奥に、二回りほど大きなカマキリとカニを混ぜたような魔物が横歩きで追いかけてきていた。


 「これ、食物連鎖か!? いや…… それだとしたら俺達が最底辺なのかこれ」


 幸先はどうやら不運の連続なようだった。

 俺、早速死んだかもな……

 そう心の中で俺は泣き言を零した。

最後までお読みいただきありがとうございました!

さて、アナザーサニーデイは。 シンヤ君は無事なのでしょうか!?


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