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この崩壊した砂漠は残酷で美しい  作者: 桔梗ちゃん
崩壊砂漠 第一話 【出会い、別れ】
15/21

その15

さて、そろそろ第一章も終わります。

 何の音だろうか、確認をしようと辺りを見回す。

 町の入口では微かに音が聞こえるだけで、なにも異常がないように見えた。

 きっと恐怖で落ち着きのない状態だったせいもあるかもしれない。


 「ハっ…… っさーすがリーダー。 容赦ないネ」


 手を頭の後ろで組みながら、楽しみ足りなさそうにする仮面の男。


 「これが私達の仕事。 あそびじゃな…… い……」


 フードの女は武器を手に持ちながら、俺達の方に振り返る。

 それと同時に酷く、先程までの冷酷な顔にハッキリと動揺が出ていた。


 「な…… んで……」


 ――――なぜお前が…… ここにいるッ!


 戦闘の時にあった余裕な態度とは打って変わり、半狂乱にアレックスに掴みかかろうとする。


 「えっ!?」


 突然のことに対応が遅れたアレックスは無防備な状態だった。

 

 「危ない!」


 咄嗟に黄色ちゃんがアレックスをかばう為に、フードの女の前に割って入る。


 「邪魔…… するんじゃねえよッ……!」


 アレックスにつかみかかろうとした体制を変え、黄色ちゃんの腹部に強烈な膝蹴りが入る。

 ブチブチと身体の中から柔らかいものが潰れるような音が聞こえてきた。


 「げふっ…… がはっ……」


 蹴りを受けた黄色ちゃんの口から、おびただしいほどの血を吐く。

 よそ者たち全員が自分たちの持つ武器を取り出したのが見えた。


 俺は…… その場で身体が縛り付けられたかのように、身動き一つ出来なかった。

 猛者に見えたよそ者達を一撃で沈めたフードの女に酷く怯えてえしまう俺がいる。


 フードの女は、そんな周囲の事など気にもせず、アレックスを叩きつけるように組み敷く。


 「な、何のこと……!? 私、あなたたちは噂でしか知らないはずよ……!」


 アレックスが痛みに顔を歪ませながら叫ぶように言う。


 「なに知らないフリしてんだよ…… なぁ……? お前のせいでどれだけ…… どれだけッ……!」


 その返答に、苛立たしげに語気を荒げて拳を振り上げるフードの女。

 魔道士くんと、皮肉マスクがフードの女に諭すように言う。


 「……伝説の何かは知らんが、私の友人達に手を出すのは勘弁してもらえないかね。 そちらの少女にも、多少なりとも恩義があってね」

 「なんか勘違いしてんじゃねのか、あんた」


 だが、フードの女は声には見向きもしなかった。

 拳を振り上げ、グッと力を込めている。


 止めないと…… 俺が、止めないと……!

 震える足を血が滲んでくるほど、強く抓る。


 「やめろよ…… やめろよ!!」


 俺はフードの女目掛けて走った。

 型も脚さばきもまったくない、がむしゃらな攻撃だった。


 それを助力するように、皮肉マスクが剣をフードの女に突き立て、貧乏さんが構えた銃の引き金を引く。

 魔道士くんは魔法なのだろうか。 こちらにまで熱が伝わってくるほどの火を、フードの女に射出する。

 そんな俺達を、横で事の成り行きを見ていた仮面の男がつまらなさそうに言う。


 「おいおイ。 アンタらにはカンケーねぇことなんだわ。 邪魔スんなや」


 そう言いながら、仮面の男の脚が一瞬だけブレた。


 剣が、銃弾が、魔法が。

 そして俺自身が。 

 ボールの様に弾け飛び、壁に叩きつけられ、地面に転がる。

 

 「ぐっ……! おえ”っ……」


 肺から空気が無理やり抜け、こみ上げていた胃の中のものをぶちまける。

 軽く蹴ったつもりなのか。 俺の様子に頭をかしげる仮面の男。

 黄色ちゃんの時に比べてマシ……。 だったのかもしれない。

 だが、俺の戦意を消し飛ばすには十分な威力だった。


 「ヒッ……!」


 うまく吸い込めない空気を死に物狂いで吸いながらなんとか声を出す。

 死にたくない……!

 思わず縋るように助けを呼ぶも、誰も手を差し伸べてはくれなかった。


 痛みと恐怖でどこかぼんやりとした視界の中で、アレックスを今まさに殴ろうと拳を振りかぶっているフードの女が目に入る。

 俺は、定まらない意識の中。 アレックスに必死に手を伸ばした。


 「アレッ…… クスを…… 俺の恩人を、離せ…… よ」




 無情。 フードの女の拳は、容赦なくアレックスに振り下ろされ……


 「そこまでだ」


 当たると思った瞬間、地面が大きく揺れる。

 ミシミシと俺たちが居る場所より町の方から、割れるような音が聞こえてくる。

 それが、気の所為ではなかったことを知る。

 思わず町の天井を見上げてしまう。


 空が…… 落ちてくる。

 突如として街の天井が、崩れ落ちていく。

 ガラガラと大きな音を立てながらも、大きく割れた天井の砂岩が町のいたるところに降り注いでいく。

 馬乗りになっていたフードの女が舌打ちをしながら、とっさにその場から離れ、リーダーと呼んだ男の側に戻る。


 「あぁ…… これで何回目ダ?」


 俺は理解が追いつかなかった。 唖然とする中で、仮面の男は町が崩れていく光景を目の当たりにしながらも、なんてことのないように言う。


 「まっ、俺達にはカンケーのないことだワな」


 鹿頭の男とその傍らにいる女は、黙って街が崩れ去る光景を眺めていた……



 アレックスがすぐさま起き上がり、慌てて自宅の方を見る。


 「天井が…… そうだ! 家は!!」


 そう言いながら駆け出しそうになったアレックスを、皮肉マスクが呼び止める。


 「待ちたまえ。 今行っても街と一緒に岩と地面のサンドイッチになるだけだ。 自ら具材になりたいというなら止めないが、まだ若い命は惜しかろう?」

 「でもあそこには私の母親が!」


 焦った様子のアレックスに、貧乏さんが真剣にアレックスの目を見つめて言う。


「……それは知ってる。 もし行くなら…… 私は止めない。 たとえどんな結末になっても。 それが貴方の選択なら、私はそれを尊重する」


 俺の隣に魔道士くんが歩いてくる。


「きっと避難してるって」


 そう一言だけアレックスに言うと、壁に背中を当ててガスマスクの位置を整える。

 アレックスを呼び止めていた皮肉マスクは、ぐったりとした黄色ちゃんを肩に担ぎながら、俺の前でしゃがみこんで手を差し伸べる。

 

 「君は、この程度で足を止めるのかね? ならば人も化け物も来ないような地下の穴倉にでも引きこもるか、次の人生に期待しているがいいさ」


 期待もしていないような声のトーンだった。

 

「私は…… ああ、いや、私達は彼女に手を貸しに行くかね。 得体の知れない余所者に構ってもらった礼ぐらいは返したいからね」

 

 まるで俺の恩義をその程度かと、あざ笑うかのように。 1時間にも満たない会話をしただけだと言うのに。



 そんな皮肉マスク達を見て、俺は悔しさで涙が溢れてくる……

 だから……。



 荒く息を吐いていた呼吸が落ち着いてくる。

 数回、深呼吸をしてから。 その手を取った。


 「あんたらはやっぱイカれてるよ…… でも…… 俺だって負けないぐらい頭のネジが飛んでるのかもしれない」


 手を取った瞬間、グイッと引き上げられ、ふらついた意識も覚醒する。

 鮮明になったその目に映った景色は、ズーガの町が完全に瓦礫で埋もれていく様だった……。

 

 瓦礫の雨から必死に逃げるように、何人もの人がマスクを着けながら暗い外へと避難をしてくる。


 「はぁ…… よかった…… 本当に良かった……!」


 生きていることを心の底から喜ぶようにする者。 家族の者に手を繋がれて避難した、表情の死んだ幼子など、皆必死に避難をしていた。


 だがそこには…… アンジュさんの姿はなかった。



 避難している人達を見て、アレックスがマスクを着けていないことを思い出す。


 「そうだ、マスク! アレックス、マスクは!?」


 焦りながらマスクの存在を思い出した俺は、アレックスが家に作業着ごと置いていったことも思い出す。


 「クソっ……! マスクは、家に置いてきてる!」


 俺がそう言うと、気がついていなかったのか、アレックスが大きく咳き込みだす。

 マスクがなければどうなるか…… すぐさま死にはしないだろうが、間違いなく命に関わる。

 俺は意を決して自分のマスクを脱ぎ去る。



 その脱いだマスクをすぐさまアレックスに被せた。


 「アレックス、お互い交互に息をし合えばしばらくは行けるはずだ…… だから、アンジュさんを、探しに行こう」


 こくりとアレックスが頷く。

 走り出すアレックスを筆頭に俺とよそ者達もついて行く。


 去り際に、皮肉マスクが今なお傍観をしているアンチフラッドを見て吐き捨てるように言う。


 「……やれやれ、英雄とは見方を変えれば悪魔になるとはよく言うが、今この瞬間、この街のものにとって君達はただの化け物に成り下がったのだろうね」

最後までお読みいただきありがとうございます。


次回投稿は一日間隔が空きますのでよろしくおねがいします。

感想などで気になった箇所があれば教えてくださいませ~


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