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この崩壊した砂漠は残酷で美しい  作者: 桔梗ちゃん
崩壊砂漠 第一話 【出会い、別れ】
14/21

その14

お待たせしました……!!

ブクマもして頂いてありがとうございます。

いよいよアンチフラッドとレッドスコールの戦闘になります。

 「崩壊液が人形になって動いてるの見たことない? レッドスコールはそういう化物なんだけど」


 誰もわからないのか、説明された俺を含め、よそ者達もアレックスの説明に耳を傾ける。


 「とにかく手に負えない強さで夜に暴れまわる化物なの。 そして誰にもどうしようもないその化物を倒せる数少ない人たちが、あのアンチフラッドなの」


 つまり、これは…… 厄介事だな。

 魔道士くんが、ピクりと反応をする。 少しだけ楽しげに、噛みしめるように言う。


 「強いだと……」


 黄色ちゃんも、興味が湧いてきたのか、三人組を見つめながらアレックスの言葉を聞いている。


 「へぇ…… 強い人なのはすごいと思うけど……、なんだろあの感じ、なんか引っかかる」


 俺も同じ気持ちだった。 それは言葉だけ聞けば英雄に近いものなのかもしれない。

 だけど、目の前にいる三人組からはそんな英雄らしさは感じない、それどころかもっと別の……、血なまぐさい泥のようなものだ。


 皮肉マスクもまるで信じられないように首を振る。


 「……一体、どこのおとぎ話かね、それは。 崩壊液が生きているとでも? 死者が動き出すよりも性質が悪い」


 その横で、注意深く三人組を見ていた貧乏さんも信じられないのか、歯切れの悪い返事をする。


 「理解した。 詳しい解説に感謝するわ。 要は”勝てない相手”というわけね。 それを倒せる人達、ね……」


 どこかその言葉には恐怖と緊張感が含まれていた。


 「でも、見てるだけでもあいつらが、とんでもなく強そうってのは分かる」


 俺は自分の手が、わずかに震えていたことに驚いた。

 眼の前に居る三人組から感じるプレッシャー。 離れているというのにもかかわらず、震える手を落ち着かせることが出来なかった。


 そんな全員の感想を聞きながら、アレックスは思い出したかのように指を立てながら言う。


 「あ、これは絶対聞いたことあると思う言葉なんだけど "レッドスコールとあったら逃げろ"」


 そう言うアレックスの言葉には聞き覚えがないのか、黄色ちゃんは首をひねりながら言う。


 「んー。 でも、そんなにすごい人たちがどうしてここに?」


 黄色ちゃんの疑問に答えるように、皮肉マスクも思い当たることがあったのか、俺たち全員に聞こえる声の大きさで話す。


 「その言葉は知らないが、似たようなものならあるね。 ”奴らを見たら逃げろ”だったか…… ともなると、そんな伝説とまで言われる人物がいるということは…… そういうことではないのかね」


 そういうこと…… とは、つまりここにその化物が……。

 化物の姿も見たことがないのにも関わらず、全員の深刻な表情に、今俺達が置かれた状況が決して楽しげなものではないということは分かる。



 固唾をのんで見守る中、門から見える外の景色は既に日が沈んでいるのか、どこまでも黒く。 闇が先の景色すらも遮断している。


 不意に、ポツポツ…… と雨音がしだす。

 片膝をついていた鹿頭の男が、門から見える空を見上げながら言う。


 「降ってきたな……」


 だが、これは唯の雨なんかじゃなかった。

 雨音がしだしたかと思えば一転、すぐさま激しい雨音が街の天井を叩き、崩壊液の砂粒が町の外に吹き荒れる。

 とても、この状況で外に出て活動しようとは誰も思わないほどに。


 そんな鹿頭の男の側でスコープを覗いていた女が口を開く。


 「…………来た」


 その言葉と同時に、遠くの闇と砂粒に紛れ、仄かに青い光点が浮き上がってくる。

 ひとつ、ふたつ。 と浮き上がりだした青白い光は、奥に奥にと続き、40ほどの大きな光の集まりになる。

 その小さな光点はどれも、まるで部隊のように綺麗に並んでいた。


 俺はその光景に目を奪われていた。 美しいから、幻想的だから。 違う。

 そんなものなんかじゃない、光のひとつひとつが俺の身体を射抜くように殺意をばらまいている。

 思わず一歩、後ずさりをしてしまう。


 「なん…… だこれ、一体何が来たってんだよ!?」


 アレックスに聞こうと俺は語気を強めて肩を掴んでしまう。

 だが、アレックスはぶつぶつと怯えたように震えた声で、独り言を言っていた。


 「あ…… えっ…… 嫌だ……」


 カタカタと歯がぶつかる音が聞こえる。 アレックスがじっと見つめるその光が顕になる。

 半分が崩壊液によりぐずぐずになった状態の人間にしか見えないもの。

 悲鳴のような、消え入りそうな声でアレックスがその化物の名を口にする。


 「レ…… レッドスコール!!」


 俺は、いやこの場に居た全員が同じ反応だったのかもしれない。

 奴らと目があった瞬間。 ゾワゾワと背中に悪寒が走り、冷や汗をぐっしょりと掻いていた。

 ホラー映画ではよく目にする、そう。 ゾンビに近いものだった。

 だが、目の前にいる奴らは違った。 ふらふらと動いてるわけでもなく、ゆっくりと歩いてくるわけでもなく。

 俺たちを見つけた途端、綺麗に並んでいた光点が散る。


 早い、なんて優しいものじゃなかった。

 風を切る音が聞こえるほどには、その化け物たちの身体能力が次元一つ違うことは言うまでもない。

 街目掛けて襲来するレッドスコール達に、どこか現実離れしていたのだろう。

 ズーガの住民は少しだけ、この状況に理解を要してから逃げ惑う。

 町中に響く悲鳴。 逃げ惑う人々。

 そんな様子には目もくれず、ついにアンチフラッドが動き出す。

 


 鹿頭の男がゆっくりと立ち上がり、背中に携えた一振りの剣を迫り来る怪物にむけて突き出す。


 「では、始めるとしよう。 殺戮を」


 鹿頭の男の一言で、側に居た二人が動き出す。

 長身の筋肉質な仮面の男が、化物に負けない速度で肉薄する。

 化物が迎撃しようと荒々しく豪腕を振るう。

 ハッキリと目では捉えられなかったが、一瞬だけ仮面の男の姿がブレた気がした。

 その瞬間。


 ――――パァンッ!!


 いつの間にしゃがみこんでいたのか、仮面の男は地面に手を付けて、体をひねりながら、化物の崩れた顎目掛けて、蹴り抜いていた。

 ただの蹴りから出たとは思えないほどの炸裂音が、入り口で見ている俺達にすら響いてくる。

 しかし、それ以上に。 その蹴りを受けてなお、倒れない化物がいた。


 「綺麗な蹴り…… けど、あれで倒れないアレも厄介! あれがレッドスコール……」


 黄色ちゃんが感心しながらも声が上ずっているのが分かる。

 その横で、皮肉マスクも余裕はないのか、マスクは三人組の先頭に釘付けになっている。


 「……いやはや、今しがた話に聞いただけではあったが、話に聞く以上の化け物ではないかね…… どちらともね」


 まったくもってその通りだ。

 冷たい汗が背中を流れ落ちていく感覚、口の中が緊迫した空気でカラカラと乾いてくる。


 「……強い」


 魔道士くんは一言、そう言って今なお繰り広げられる激闘を見ている。

 不意に、俺の袖を掴まれる感触があった。 アレックスだ。

 怯えているのか、カタカタと俺の袖を掴む手が震えていた。


 「アレックス……。 だ、大丈夫。 きっと。 あの人達が守ってくれるよ」


 俺だって逃げたしたいほど怖かった、だが。 眼の前でこんなにも怯えている女の子が俺を頼ってくれてるんだ。

 そっと、アレックスの手を掴み、ギュッと握る。


 きっと俺の手も震えていることがわかってるだろう、でも。 見栄ぐらいはったっていいじゃないか。

 少しだけ安心したのか、アレックスの震えが少しだけマシになる。


 「う、うん……」


 そして、俺達の思っていることを代弁するように、貧乏さんが頬に冷や汗を流しながら言う。


 「……あれがレッドスコール。 禍々しい見た目………… それにあの一撃、これが伝説の存在なのね」


 全員がその場に目が貼り付けられていると、状況が変わる。

 怪物と何度目かわからない攻防を繰り広げていた仮面の男は、大きく後方に跳躍する。


 「アー…… やっぱまだ自力じゃ殺せねーカ…… まっソリャそうだわな」


 まるで倒せないことが分かっていたかのように肩をもみながら簡単に言う。

 その男の様子を見た三人組のフードを被った女が、呆れた。 と言いたげにライフルを構えた状態で、マガジン下部にある筒状の穴に、薄い緑に発光するカプセルを差し込んだ。


 「だからこいつと戦う時は、ちゃんとこれを武器に挿入しろって言ってるじゃない」


 そして発砲。 ガゥンッと、耳をつんざく轟音を鳴らしながら放たれた銃弾は、まっすぐと薄緑色の尾を引きながら仮面の男と対峙していた一体の化物の頭を捉えた。

 その瞬間、豆腐を地面に叩きつけたように、あっけなく頭部が吹き飛ぶ。


 「まったく…… 遊びじゃないんだ。 真面目にやれ」


 そう言い放つフードの女に、仮面の男は、硬いねえ……。 と言った後、仮面の下部を浮かせる。


 「んじゃちょいと本気、だスか……」


 先程のフードを被った女が持つカプセルと同様のものを取り出し、頬張る。

 バキバキ、ボリボリと何度か咀嚼した後。 再び怪物の群れに突っ込んでいく。

 再び放たれた蹴りが、こちらも同様に薄緑色に発光し、今度は化物を崩壊させる。

 四肢や臓器が見えたりなんて生易しいものじゃない。 文字通り、挽肉になっていた。


 「う”っ……」


 それを見てしまった俺は、胃から胃液がこみ上げてくる。

 必死に何度も荒い呼吸を繰り返し、ぎりぎりのところで精神と、胃液を押し戻す。

 アレックスが心配そうに、俺の顔を見ていた。


 「大丈夫、シンヤ……? 顔色が悪いよ……」


 俺はぎこちない笑顔を浮かべながら、手汗で滑るアレックスの手に力を込める。


 「大丈夫。 慣れなきゃいけないから、この光景を見て、慣れなきゃ。 俺はいつまでも命のやり取りに怯えてしまう」


 そこからは一方的だった。 むしろ本当の化物はどっちなんだと言いたくなるほどに凄惨な状況だった。

 化物には統率を取りながら連携して攻撃をする知能はあるようだが、恐怖や痛み。 そう言った感情は無いように見える。

 学習をしない化け物たちを、作業をしているかのように淡々と殺していくフードの女と仮面の男。


 「……? あのカプセルが、あの化け物を倒す秘訣。 なのかね? もっとも、それ以前の技術が凄まじいがね……」

 

 皮肉マスクが興味深げに二人を見ている。 いや、よそ者達は常に目の前で起きている戦いに、強さの秘訣を見つけ出そうと釘付けになっていた。

 しかし、いくら強くても数が不利だ。

 光点はどんどんと闇に紛れて出てきているのだから、むしろ最初よりも増えているようにすら錯覚してしまう。


 もしかしたら、負けてしまうのではないか。 そんな考えが脳裏によぎった時。


 今まで戦闘に参加せず、町の入口に立っていた鹿頭の男が口を開く。 


 「我々は…… アンチフラッド…… 死を運ぶ者」


 そう言いながら背中に帯刀した装飾のない大きな剣を取り出し、片手で持つ。

 ゆっくりと、その身にあまる大剣を天に突き出し、キラキラと鹿頭の掲げた大剣から紫色の光が集まりだす。


 前に出ていた仮面の男が鹿頭の行動を確認し、その右隣へ跳躍する。

 フードの女も、狙撃体制を止め。 鹿頭の左隣に立つ。


 「この街に死を届けに来た」


 鹿頭の男はまだ何体も居る怪物と対峙する。




 場が揺れた。 空間が揺れた。 世界が揺れた。




 力の奔流が、目に見えるほどの輝きを放ちながら刀身にまとわりついていく。


 「これが私の必殺」


 「遠い過去の一撃」


 「……その身で思い知るが良い」



 ――――真・魔力破断



 溜まりに溜まった力が振り下ろされた先に炸裂する。

 目の前の砂漠、遥か地平線まで、巨大な谷ができた。

 耳をふさぎたくなるほどの衝撃音が、風が。 遅れてやってくる。

 そして、時が動き出したかのように、砂の波が谷を埋めていく。

 そこには怪物、レッドスコールは跡形もなく消え去っていた……。


 「な…… なんだったの……」


 アレックスが俺の手を握ったまま、目を何度も瞬く。

 俺は、自分の声だと思えないほど震えた声で言う。


 「…………これが。 ……アンチフラッド」


 目に焼き付いた光景に身体の全細胞が警笛を鳴らしている。

 黄色ちゃんが俺の背中を叩きながら声を掛ける。


 「あれがレッドスコール、そしてそれを倒すもの…… 到底あたしたちでも敵うとは思えないね…… 大丈夫?」

 「あ、あぁ。 正直、大丈夫とは言えない」


 俺の漏らした本音にアレックスも怯えながら頷く。

 よそ者たちは以外にも、冷静に見えた。 見えただけで、実際は警戒を厳にしているのだろう。


 「人間技とは思えないね。 だからこそ、伝説と言われている、とうことかね」


 軽口を言わない皮肉マスクの反応を見れば明らかだ。

 そして、頭のイカれた魔道士くんはまったく怯えていないようで、むしろ好戦的な声をだす。


 「ふー、そうか…… 俺はあれを越えなければいけないのか」


 一体こいつはどこを目指してるんだ……。 そう言いたくなるが、今この状況に置いて、魔道士くんのその精神力は見習いたいものだ。

 しばらく周囲の人間が沈黙を続ける中、俺の耳には何か別の。 



 そう、パキパキとなにかにヒビが入る音が聞こえていた。 

最後までお読みいただきありがとうございます。


次回はシリアス回に重たい話になるのでご注意くださいませ。

私情で遅れることが多く、すみません!


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