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果てなき航路を進む為に  作者: 高災禍=1
18/23

第017話『全力全開(50%)』

よろしくお願いします

 あれから数刻が経った頃、レナ達は『ファースト』の近くまで来ていた。

 元護衛の人達を縄で縛って連れて行ったので、そろそろ日が暮れそうである。

 そんな元護衛の人達を見て驚く他の行商人が何組かが居たが、レナ達は見事なスルースキルでやり過ごした。

 元々レナ達はVR時代ではかなり有名になった事があるので、この位の視線なら何も問題はない。行商人組もこんな事はたまにあるので、そちらも問題ないようだ。


 「もうそろそろで『ファースト』じゃな」

 「今回は色々とありがとうございました」

 「何。乗って行く為の馬車が壊れては、此方も困るからのぅ」



 そんな風に話し合っていると、不意にレナが馬車から飛び降りた。


 「レナさん?」

 「先に行っておれ。………頼むぞよ」

 

 ルークス達は何が何だか分からなかったが、レティシアは『その言葉』で今、何が起きているかをおおまかに理解した。


 「了解しました」


 レティシアはルークス達に早く向かうように頼んだ。

 その一連の行動でルークスは気付き、レナに声を掛ける。


 「また会おう」

 「何、戯けたを言っておる。そちらが万が一に死ぬ可能性を考えないのか」

 「貴女達を信頼しているだけだ」

 「よく言うわい」


 レナは苦笑をしながら、ルークス達に別れを告げる。

 

 

 レナが今まで乗っていた馬車が見えなくなった時、レナが纏う雰囲気が変わる。

 傍に生える木々が風がないのに枝や葉を揺らし、隠れていた動物たちは一目散に逃げ始める。風音は金切り音を発し、この周辺が暗く感じる。

 レナが選んだこの場所は『ファースト』から一キロメートル以上離れている場所だ。加えて周囲には木々以外、目立った障害物がない。


 レナは態々、余裕をもって自身の魔術が当たらない距離へと移動していた。


 「少し手ごわいのぅ」


 今回の敵は手加減出来ない事を感覚でも理解できた。もしも手加減でもしようものなら、レナの人生はもう少しで尽きるだろう。

 加えてレナ自身は、まだこの世界で全力で戦った事がない。

 だから力加減が分からない。だから敵が近くに来るまでにウォーミングアップを行う事にした。



 ♦  ♦  ♦  ♦



 「来たか……………の?」


 そこに来たのは、ロビソンだった。否、「ロビソンだった」という方が正しいか。

 レナはロビソンを埋める際に死んでいるかを確認をした。確認したから分かるが、彼は確かに死んでいた。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()自分の判断に信頼をしている。

 だからこそおかしい。

 そしてレナは一応ロビソンに向けて、『鑑定』を行う。


 「そうか………」


 鑑定結果が表示されなかった。


 人に向けてなら、どれだけ高位の者であっても、鑑定結果の断片だけなら入手できる。だが魔物に対してならば、鑑定結果は表示されない。

 ロビソンだった者は、腰に差してあった鉄の剣を抜く。そんな一連の動作さえも、レナの知るロビソンでは行えない程、綺麗な行為だった。

 さっきの速度でさえも、レナの知るロビソンでは、一生を掛けても届かない速度だった。


 並外れた速度と高い剣技を持っているだろう、先ほど死んだ男。

 この者を表すとしたら、


 「亡者じゃろうな」


 その言葉を合図にして、二人の戦いが始まる。



 ♦  ♦  ♦  ♦



 「『鬼化』『身体強化』『雷神の現身』」


 レナは今出来る最大限の強化を自身に施して殴り掛かる。

 対して亡者は鉄の剣を構え、切り掛かる。


 そんな火花が散る程の攻防を先に制したのは、レナだった。


 一瞬の攻防の隙をつき、亡者の懐で渾身の一撃を叩き込むが、一撃を与えたレナの表情は苦虫を嚙み潰したようだった。

 それもそのはず、亡者は攻撃が当たる瞬間に後方に飛ぶ事で、ダメージを減らしたのだった。

 

 ならば次も攻に入る。


 レナは亡者に対して殴り掛かる事はせずに、その場に両手を付ける。


 「『雷柱檻』」


 そのレナの言葉を発した瞬間、レナの手のひらを中心にして白色の魔法陣が発生し、その場から魔法陣が消える。その消えた瞬間に亡者は、幾つかの白い柱に貫かれる。


 だがそんな攻撃も関係ないといったように、亡者は鉄の剣で叩き割る。

 そして次は此方と言わんばかりに剣速を上げる。一撃一撃に剣撃波が発生し、レナへと襲い掛かる。


 亡者の固さとレナの捌き技術からどちらも有効打を打てず、またしても膠着状態に入った訳だが、そんな中でもレナは次の一手を打った。


 「『覇掌』」


 今度は少し色見掛かった小さめの魔法陣が、レナの手のひらの先に現れる。そして腰溜めした一撃が亡者を襲う。

 その威力は、先ほど叩き込んだ拳の一撃を軽々と超え、亡者は後方へと飛ばされる。


 この魔術は、レナが創り出した内の一つ。

 魔術を創る際には、使用する魔力値を決めてから各パラメーターを振るのだが、この魔術は、「距離」のパラメーターを完全に捨てる事で、火力に殆ど振ったのだ。加えて、魔力の消費量もかなり少ない。


 後方へと飛んでいく亡者をレナは見つめるが、まだ支障がないように動くようだ。

 

 だが魔術を発動する時間は稼げた。


 「『打ち鳴らすは轟音。照らすは破壊の輝きを。抜刀【武雷剣】』」


 姿を現すのは、本来の姿をした2メートル程の古代剣。

 黒いオーガ戦の時は触れていなかったが、この剣には自身への恩恵がある。それは『雷神の現身』の効果を上げる事だ。


 『雷神の現身』は神経信号の速度を上げる魔術だが、そこに『武雷剣』の魔力や雷の力で何故か効果が上昇する。

 だが、こんな魔術は単体だけでも厳しいのに、重ね掛けに加え、効果を上昇させている。こんな真似は、レナと同レベル帯でも無理だろう。

 秘密は、『再生』のスキル。

 魔術による効果の反動は、この『再生』スキルで抑えている。


 その魔力に当てられ、亡者は一瞬足を止める。


 だからこそレナは、その瞬間を待ってましたとばかりに再度魔術を使用する。


 「『多重転移』」


 レナの足元に魔法陣が現れ、レナの姿が消える。

 その瞬間には、亡者の後ろへと姿を現し、一撃を加える。

 亡者はすぐに後方へと反撃を行うが、そこにはレナの姿は無かった。

 またしてもレナが現れ、一撃を加えるが、亡者の反撃は当たらない。


 この攻防でレナは、亡者に対して移動を制限するような、そんな傷を何度か与えた。


 次の魔術を確実に当てる為に。


 そしてレナは最後の転移で亡者から離れ、詠唱を開始する。


 「『雷神の一撃は、数多の軍勢を滅ぼす豪の剣なり。真名開放【武雷剣(タケミカヅチ)】」


 これが『武雷剣』の本当の一撃。

 全長が10メートルを超えた古代剣が周囲の木をなぎ倒し、強大な一撃が亡者を襲う。

 亡者は先ほどまで回避行動をしなかったが、この一撃には過剰に反応をし、避けようとする。


 しかし、ここで響いたのは、先ほどの幾つかの傷だ。

 この魔術は見れば解るとおりに、大振りな魔術だ。反撃されれば、殆どは被弾するだろう。だからこそ、逃げれないように傷を付けた。


 こうして亡者は、白光の中へと消えていった。


ありがとうございました。


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