第016話『後悔』
よろしくお願いします。
ロビソンは、元々連合国の教国の住人だった。
小さい頃にエクストラスキルが発見されてから、彼を取り巻く環境は突然に変わった。
親の態度は急に変わり、「大きくなったら、聖騎士になるんだよ」と言われ続け10年ぐらい。隣の幼馴染は「将来はロビソンと結婚するんだ」と満面の笑みに変わった。
何時からか、ロビソンは当たり前だと思うようになった。
「自分は特別な人間なんだ。だから自分が困っている人を助けるんだ」
と。
彼はいろんな人を助けた。
道具屋の娘を暴漢から助けたり、道で魔物に襲われている親子を助けたり、通り魔に襲われていた若いカップルを助けた。
今回は、馬車に乗っていた男二人と女の子二人を助けた。
そして彼は、少女に恋をした。
幼馴染や道具屋の娘や襲われていた少女や若い女性など沢山の女性を見てきた。しかし彼女は、その誰よりも美しかった。馬車が揺れるごとに彼女の白い肌が目に映った。
そんな彼は、彼女と結婚するべきだと思い始めた。
そんな時、良くない知らせを聞いた。
彼は焦った。
自分はⅮランクで一人。それに対して相手はⅮランクで複数人。どう考えても勝てる戦いではなかった。そしてそこに今まで感じた事が無かった責任が押し寄せてきた。
(もう無理だ)
しかし、そこで彼女が目に入った。
そしてロビソンの目に活力が戻った。
彼女を怖い目に合わせる訳にはいかない。彼女を魔の手から助けるんだ。そう思ったロビソンはすぐに行動に移した。
元護衛達に対して、自首するように頼んだ。
彼はどう足掻いたって、元護衛達には勝てないと知っていた。だから自分でも良くないと思う頭脳に期待した。もしかしたら助かるんじゃないかと。
しかし元護衛の人達は、そんな彼の事を相まったく相手にしなかった。
だからロビソンは、一か八かの賭けに出た。もう貴方達には逃げる場所なんて何処にも無い事を、馬車の方を指しながら言った。
だが、そんなロビソンの体に元護衛達が抜いた剣が刺さった。そしてその体は、冷たい地面へと落ちていった。
彼は本能的に失敗した事を理解した。
しかし彼は、諦めなかった。
彼は最愛の彼女を助ける為に元護衛の一人のズボンの裾を掴んだ。その瞳には、死ぬ事を覚悟をした色をしていた。この命が尽きるまで、彼女を助けようとした。
そんな彼の覚悟も虚しく、掴まれていた元護衛の剣が振り上げられた。そして彼の頭を問答無用に真っ二つにした。
(あぁ、僕は死んだんだな)
そこは、暗い空間だった。四方八方どこを見ても、そこには無の黒い空間が広がっていた。
そんな中、彼の意識はどんどん薄れていった。
そして残ったのは、『後悔』だった。
この『後悔』が彼の望んでいない事になるのは、少し先の話。
♦ ♦ ♦ ♦
今、レナ達と元護衛達の距離は、数メートル程度。相手は皆が武器を構えている。対してレナ達は全員無手だか、構だけは取っている。全く知らない人達が見ていたら、殆どの人はレナ達を劣勢と答えるだろう。
「なぁ、抵抗しなかったら痛くしないと言ったら?」
「断る!!!」
元護衛の人達の提案は、レナ達によって一蹴された。
そんな答えを聞いた元護衛の人達は、分かっていたといった表情をそれぞれがしていた。
「まぁ、そうだよな」
その言葉と同時に彼等は臨戦態勢へと移った。
そして。
「掛かれーー!」
元護衛の人達は、武器を手にレナ達へと駆けて行った。
だが、そんな彼等の進行先に一本の『白雷』が走る。
そして彼等に少女が声を掛ける。
「それを超えたら、命の保証はしないぞよ」
元護衛の人達は、知った。
この少女は化け物だと。
汗が落ちる感覚が鋭敏に伝わり、唾を飲み込む音が鮮明に聞こえてくる。そして手足が震え、脳は本来の能力の十分の一も発揮出来ない。実際にこの場に居れるのが不思議だ。
そんな時に少女の声が聞こえた。
「ほぅ、中々じゃな。捕まるのなら今じゃぞ~」
何時もなら、少し頭にくる言葉使いもこんな状況ではとても安心できた。
そして元護衛の人達は、そこで降参した。
♦ ♦ ♦ ♦
「……………」
「あら、主。ご機嫌ですね」
今現在レナは、ホクホクとした笑みを浮かべていた。
気絶したら面倒だったから手加減した『威圧』で投降させた訳だが、そこで歩き方や武器の構え方を思い出した。そんな訳でレナが『鑑定』を使用したところ、如何やら肉盾一号(レナ命名)よりもステータスだ高かったのだ。
そんな事を行商人達に伝えると凄く喜んだ。
如何やら冒険者ギルドは犯罪をした冒険者を割高で買ってくれるらしい。
売る場合、厳しい検査を受けるのだが、今回の場合は売り手と奴隷が了承してくれるので、問題ないみたいだ。
因みに何故襲ったのか聞いてみると、
「冒険者は悪質なルール違反をすると奴隷になるんだ。それに加えてあの坊主が言った事で決心が付いたんだ」
「その割には、直ぐに投降したぞよ」
「奴隷になるよりもアンタの方が怖かったんだ」
「ほぅ……」
「だからその笑顔は、止めてくれーー!」
との事だった。
行商人組に聞いてみると、この人達は縄で縛って連れて行くらしい。
こうして死体を埋めて、元護衛達を縛って連れて行く事になった。
些細な変化に気付かずに……。
ありがとうございました。