第014話『シャドウウルフの塩胡椒焼き』
よろしくお願いします
レナ達は村を出て十数日経った訳だが、今現在はとある森の中に居る。
この森は魔物が多く、あまり人が立ち入らない。冒険者だったとしても、目の前の魔物と戦っていて奇襲を受ける事なんてザラだ。高ランク冒険者ぐらいなら立ち入っても大して問題ないが、態々この森に来る物好きは殆ど居ない。偶に魔物を間引く為に冒険者達が来るくらいだ。
で何故レナ達はこの森に居るのかというと。
「『ファースト』という町に入る為じゃ!」
「どうかしましたか、主?」
「何故じゃが、言いたくなったんじゃ…」
この世界では、一般的に地図は秘匿されている。なので目的地に着けるのか心配になる。
それよりも一番の問題は、若い女性?が二人組で旅をしているという点だ。殆どの場合、不審に思われる。そして何か問題を起こした際に、一番に犯人と思われるのはとても不味い。
幸いにもこの森の近くに『ファースト』へ行く行商人がよく使うルートがあるらしいので、偶然にも襲われてくれないかと待っているのである。そして行商人に付いて行くつもりだ。
そんなこんなで数日間、待ち続けている訳である。
因みに判断基準は、『気配感知』で行っている。
レナが「誠実そうな人じゃなくてもいいから」と思ったり、二人で産地直送のシャドウウルフを塩胡椒で焼いた物を食べたりしていると、レナの『気配感知』に反応があった。
「ようやくの反応じゃ。行くぞよレティシアよ!」
「了解しました」
という訳だが、向かう前に物資の回収や火消しを行う。流石に火事を起こしたり、食料などを忘れて行くのは不味い。
そして準備してから、人を助けに行く事にした。
♦ ♦ ♦ ♦
「『ファースト』の町は、あと少しかな?」
「あの目印があるから、もう少しだな」
と言いつつ、行商人達は馬車を走らせた。この行商人達は、兄弟で行商をしている。
最近は売り上げが良かったので、一度は『ファースト』で商売をしてみたいという事で向かっている途中だ。
「ハハッ、俺様達おかげだな!」
「そうだな!」
そう言ったのは、冒険者達だ。
『ファースト』という町に向かう為には、冒険者を雇うのは常識だ。
しかしこれは冒険者の半数に言える事だが、態度があまり良くない。冒険者の中でも駆け出しを終わった人達が特に顕著だ。
因みに行商人達は、仕事はこなしているので黙認している感じだ。
「おっ、また獲物が来たな」
最近は何故か魔物が多い。
この場に居る皆が思っている事だ。話を聞いた限りでは、3回に1回ぐらいが普通とされているが、今回はもう5回目だ。
ただ道中で狩った獲物の一部が冒険者の物になるので、冒険者の士気が下がらないのが不幸中の幸いである。
「おい、不味いぞ!」
確認を行っていた冒険者が声を荒げると、みんなの視線がそちらに向いた。
「マジかよ。シャドウウルフの群れじゃねーか!」
シャドウウルフとは、単体ではⅮランクの魔物だが、群れとなるとCランクとなる。しかも足が速いので、只の人が逃げただけでは直ぐに追いつかれる。
そんな時に冒険者達が、踵を返して逃げ始めた。
「おい、勝手に逃げるな!」
「しょうがねーだろ、こんな所で死にたくねー!」
「契約はどうした」
「そんなの関係ねー!」
行商人達も如何にかしようとしているが、もう手遅れだ。シャドウウルフはもう近くに居て、この馬車を包囲した。
そして行商人達は、己の運命を悟った。
死ぬのだと。
「これが終わったら、可愛い女の子を抱くんだ」
「俺は美しい女性がいいな………」
両者共、こいつと死ぬのかと思ったが、俺達らしい最後だとも思った。
出来れば死ぬ時は痛くなければいいなと二人は覚悟して目を瞑った訳だが、一行に待っても痛みが不振に思った。
不思議に思った行商人の一人は、恐る恐る目を開けた。
それはもう一人の行商人が目を開けた、同じタイミングだった。
シャドウウルフ達は行商人達に目を呉れづ、突然一体のシャドウウルフを潰して現れた女達を警戒した。
そんな緊張の中、女の一人が話掛けてきた。
「そこの者達、お主らに礼を払う覚悟があるかの?」
聞こえたのは、鈴の音のような声だった。
血や臓物が散らばっているのにも関わらず、その姿は神秘的だった。昔に女神の像を見た事があるが、それよりも綺麗だと思った。
しかし男は、今死ぬ所だった事を思い出した。
そして言った。
「ある!」
「なら良いぞよ」
そう少女が言った瞬間、一体のシャドウウルフの首が飛んだ。
首を飛んだのを合図にして、次々と首が飛び、燃やされていった。
最後の一体に対して、少女が近づいていった。シャドウウルフは「これが俺の最後の一撃だ!」とばかりに少女に噛み付こうとした。
しかしそれよりも早く、少女の拳がシャドウウルフの頭に直撃した。そしてその拳が直撃した事により、辺りに脳漿などが飛び散った。
最後の一体を倒した事を確認した少女は、こちらへと向いて話し掛けてきた。
「それでお主等に頼みがあるのじゃ」
男は後悔した。
何故自分達みたいな行商人を助けたのか。
確かに最近は売り上げが良く、行商人の中ではそこそこに売上高が伸びていた。
だが、そこそこだ。
別に行商人の中で五本の指に入る訳ではないし、自分達に何か特別な才能があるわけではない。そんな事は自分がよく解っている。
ならば、何か非合法みたいな仕事を頼むかもしれない。
「何でしょうか?」
そう男は、恐る恐る答えた。
これから話される内容について、自分が納得できる答えになるように抗おうと頭をフル回転させた。
「お主等、『ファースト』へ向かう途中じゃろ。童等も載せてくれんかの」
その答えはフル回転させた頭でさえ、「?」を浮かべるばかりだ。
その顔は人生でも類を見ない、何とも閉まらない顔だった。
ありがとうございました。
因みに今後は約2倍に増やす代わりに、週に1回ぐらいになります。