第一話 『出会い』
今日も一日乗りきった。
俺は学校が終わればすぐに帰る。
掃除をするやつ、部活にいくやつ、友達を待っているやつなどいろいろいるが俺はどれにも当てはまらない。
掃除は担当じゃないし、部活にも入っていない。
友達と呼べる人間は………いなくはないが、待つほどではない。
ちょうど今、校門を出たあたりだ。
そろそろ来るはずだが………。
「おーい、なんで待ってくれないんだよぉ〜」
うん、やっぱりここだったか。
こいつは酉島栖那。
俺の中学時代からの友達だ。
「うむ、我ながら見事なほど計算通りだ」
「は?何言ってんの?」
「いや、こっちの話しだ」
「ふ〜ん」
いつもと同じ、たわいもない会話。
まぁ、これでも結構満足してる。
そういえば今日はレンタルCDの返却日だったっけ?
そうだ、返しに行かなければ。
「わるいけど」
と言って、反対方向に行くとジャスチャーをしてみせる。
レンタルショップは不便なことに、家とは逆方向だ。
「ん?あー、わあった。了解、了解」
「すまんな」
長い付き合いだからこれで済む。
あいつは『わるいけど』の、一言で察してくれたようだ。
俺はその後、レンタルショップに行き、CDを返し、また新しいCDを借りる。
そして電車に乗り、家に帰って飯を食って寝る。
………はずだった。
レンタルショップから駅までは結構な距離がある。
だが、近道をすればそうでもない。
わざわざ大通りを通っていては電車を2本は逃す。
そこで俺は出会った。
…………ヤンキーに。
いや、チンピラと言うのだろうか?
そんなことはどうでもいい。
この状況をどうするかが先決だ。
よし、絡まれた時の状況を思い出せばなんとかなるかもしれないな。
−今から5分ほど前−
俺がいつも通り抜け道を通ろうとしていたら、その道を塞いでいる集団がいた。
時間がかかってもいい。面倒はいやだ。
当然のごとく俺は方向転換して戻る。
「おいごらぁ、なにみとんじゃぁ」
見つかった。
ヤンキー(もといチンピラ)のリーダー格の男に声をかけられた。
人間の心理だ。一人が絡めば残りの奴らも全員来る。
「んだてめンごらぁぁぁぁッ!!!いてぇめみてぇのがごらぁぁぁッ!!!」
「をるぅあてめぇぇ、ぅッてん場合じゃえぇんあぞぉぉお!!」
「んじゃごらぁぁあッ!!!んとか言ってみぃぃぃぃ!!!」
こいつらは最高に日本語を支障しているみたいだ。
まともな日本語は最初のやつだけの専売特許みたいだな。
と、思いつつも、正直意味がわからないから苦笑いをしてしまった。
「んだごらぁぁぁッ!!!なにわらっとんじゃぁぁぁ」
「をらぁごるぅあぁぁぁ!!!ぶっこぉされてぇのかごらぁぁぁッ!!」
ほんとに何て言ってんだか………。
まぁ、要約するとこうだろう。
我々、ヤンキー一同はあなたが見ていたことに大変気分を害しています。
そして、見物料として財布を丸ごと置いて行ってください。
そうしていただければ、あなたの体に害は加えません。
我ながら完璧だな。
まぁ、金は持っていなくはないがこんな奴らに渡したくはないな………。
「悪いが、俺は今、金を持っていない。だからここはすまないが………」
そう言って少しずつ後ろに下がっていく。
これで完璧。
………と、思ったのだが。
『ガシッ!」
「おいごらぁ、さり気なく逃げようとしてんじゃねぇぞごらぁ」
リーダー格の男に肩を掴まれた。
あぁ、日本語って素晴らしい。
じゃなかった、さてどうしたものか………。
「調子くれとんじゃねぇぞおらぁぁッ!!!」
「んならぁごらぁぁぁッ!!!いてぇめみてぇんだなごらぁぁぁッ!!!」
「ぶっとばすんぞごらぁぁッ!!!」
と、その時俺の腹部に痛みが走った。
あぁ、殴られたのか。
まぁ、それでもいいか………。
『バキッ』『ドスッ』『ガスッ』『ボカッ』
俺は殴られ続けた。
痛みは伴うが、それで済むならこっちの方がいい。
なんせ一瞬だ。
その時………。
『シャキッ』
ナイフを取り出したやつがいた。
おいおい、それは笑えないぞ。
「しんねぇぇぇごらぁぁぁぁッ!!!」
いや、それはマジでまずいっ。
マジで死ぬって。
「やめぬか」
女性の声だった。
いや、声質的には女の子かもしれない。
そして、その声が聞こえた直後………。
『ドンッ』
そんな音と共に光が拡散し、ヤンキー(もといチンピラ)は吹き飛ばされた。
いやいやいやいや。
なんだよこれ。
三流映画かよ………。
と、思いつつも俺はその光に見とれてしまった。
「あんた、生きてる?」
これが俺と『あいつ』の出会いだった。
さて、どうでしたか?
また一話タイトルが出会いになってしまいました。
なんて言ってないで、どうでしょうか?
まだヒロインもとい死神が出てきてませんね。
予想はできてるとは思いますが軽くネタばれですね。
ではでは、この作品をよろしくお願いします。