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そのご

―数年後


『やだー、アイス買って帰るの~!!』

 遮断機が下りはじめたその前で、母親の腕を引き、地団太を踏む少女。顔を涙と鼻水でぐちゃぐちゃにし、泣き喚き、叫ぶ彼女の声を、私は心底から耳障りに、憎たらしく思う。



―死ね、死んでしまえ、お前なんか。



 お前のその声は、表情カオは、そうはできなかった私の心を逆なでする。



 気付けば私は、少女の腕を掴んでいた。その次の瞬間、少女と目が合う。一転、恐怖に彩られた少女の瞳に、私は満足感を覚え、心の底から笑った。しかし、その本物の笑顔―私の仮面を被っていない笑顔は、少女にはそうと分からなかっただろう。



 だって、私にはもう顔は無いのだから。



―あんたも私と同じになればいい。


 私は叫ぶと、少女を放り投げた。傍らにいた少女の母親には、何が起こったか理解できなかったであろう。傍目には、急に少女が線路の真ん中へと、飛んで行った風にしか見えないのだから。


 警笛の音が響く。宙に浮いたままの少女の体に向かってくるのは、かつて私を跳ねたのと同じ特急列車―





20XX年□月◆日午前9時ごろ、●●県○○市▲▲町の○○鉄道××線の踏切内で、20代の女性が、■■行特急に跳ねられ死亡。顔の損傷が激しく、身元の特定が難航した。自殺とみられている。

また、以来、その踏切で、少女の死亡事故が相次いでいる―


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