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今川転生伝 〜41歳のおっさんだけど異界に転生したので、れっつ☆えんじょい。なのじゃ〜  作者: テト式
第5章 日焼けの跡がジンジンしますが、とりあえず活動を開始します。
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70話 ヨハンの遺作についての話なのじゃ


 「やべーよ……ヨハン・ベットリヒ先生。死んでた……」


 そう言って入ってきたメランエルフの青年が一人。恐らくこれがこの通信器の発明主のトマスとやらであろう。


 「今年の夏辺りに病気で死んでた……。葬式もあったけど全く分からなかった……」


 そう言って項垂れるトマスとやら。


 「そ、そいつは残念だったな……あー……うん。それでだ。トマス」

 ジョスがそう気まずそうに言う。


 どうやらこのうなだれる人間の青年こそがトマスで合っているようだ。


 「あー。なんかご客人がいるね。低学年のお嬢さん方だね。申し訳ないのだけど、今日はちょっと駄目っぽいというかなんというか……」


 そういって大変気落ちしている様子を見せるトマス。


 どうやら夏はこの閉鎖された部屋に籠ってヨハンが死んだ事も気づかずに延々とこの通信器を作っていた様である。


 「ヨハンの事、知っておるのか?」


 とりあえずそう尋ねてみる。


 「知ってるも何も、一種の先生みたいなもんだよ。まぁ勝手に先生にしてるだけだったけど……。あの先生、元は宮廷医だったけど、辞めてフリーになったからボチボチ研究見て貰おうって思ってたけど……まさか死んでるなんてなー……」

 トマスはこちらを見ずに勝手に答えている。


 「なんの研究だったのじゃ?」

 さらに聞いてみる。ヨハンは宮廷医だった時から火薬についての研究をしていたから恐らくはそれ絡みであろうとは思うが。


 「燃焼についてとそれを利用した全く新しい道具の開発。特に俺は道具の開発がやりたい」

 トマスは答える。


 「先生が開発した火薬による爆薬は俺の実家は大助かりだったからな。絶対協力してくれると思っていたんだが……」

 でもまさか死んでるとは……と落ち込むトマス。


 「トマスの実家は鉱山の道具を取り扱う商人なんだ。火薬による鉱山用爆弾で鉱山の効率が上がってそれに比例してトマスの実家も儲かったんだ」

 ジョスは言う。


 「なるほど、だからこの通信器なのじゃな」


 私はふむふむと納得をする。


 前世せんごくのよの駿河にも鉱山はある。否、かくいう安倍金山と富士金山は私が収益を伸ばしたと言っていい程に関係がある。大名となってからは領地経営と並行して両金山の開発推進や環境づくりに邁進していたのだ。

 なお安倍金山は梅ヶ島という地名でも知られているので、梅ヶ島金山の方が馴染みがあるかも知れない。


 だから、私も少なからず金山を視察した際にそこで働く者の苦労を見ている。

 とにかく危険が伴う重労働であり、その他の危険――私の時は主に輸送時等――から守ってやらねばならないと理解できた。


 そこにつけて、この鎖による通信器はもっと伸ばせば外の休憩所なり指揮所から中の採掘場所まで連絡が容易くできると理解できる。


 なる程。クラリエルには悪いが、離れた地にいる友人と楽しくおしゃべりをする為にできてはいないという訳である。


 そんな彼を横目に、セバスとオレイユが奥から戻ってくる。



 「ああ、セバスか。ちょっと聞いて欲しい……。ヨハン・ベットリヒ先生が死んでたんだ……この夏に亡くなっててさ……」

 セバスの姿を確認するとトマスは再び話をする。


 「その様子から見るとそうらしいな。それでトマス。今そこにいるお方を誰だと思っている?」

 セバスの呆れた声にトマスは、え。と私の顔を見る。


 「……そう言えば、君、いや貴方の名前聞いてなかったね……自分はトマス。トマス・ルーコメン。機械工学研究所の人ってなってるけど……」

 顔をみて、服装から足までじっくりと観察し、どうやら低学年生だがセバスの物言いといい、高貴な位であると感づいたようである。



 「ふむ、所属部署まで名乗るとは中々気が利くのじゃ。私の名はオドレイ・ドラコ―ヴァ=エルディバ。畏れ多くもエルディバ皇家側室皇女じゃが、今は勉学の身。そなたの醜態と無礼は見なかったことにするのじゃ」


 その言葉に、トマスは平伏するのみであった。


 なおその光景をセバスはあーあ。と呆れており、ジョスはニヤニヤして見ていた。

 

 

 「して、ヨハンが死んでおったと嘆いていたが、もしそなたが良いのなら弟子のゲルデ・シュレッターとは知り合いじゃから呼び出そうと思えばできるのじゃが……」

 「え!? ほんとうですか!」


 その言葉にトマスは歓喜の声をあげる。


 「しかしオドレイ様。ゲルデ氏は今ナッサウの工房にいますよ。呼び寄せるにしても……」

 クラリエルがすかさず言う。


 「む、そうであったか……」

 そう言えばそうであった。


 「……なんで弟子と知り合いなんだ……?」

 ジョスがぼそりと言う。


 「そもそも私もヨハンから錬金術の手ほどきを受けてな。ウナギの脂に関する論文を書くのに手伝ってもらったのじゃ」

 その言葉を受けて、私は説明を行う。


 「ウナギ……沢山食べましたね……」

 「うむ、良きウナギであったな」

 等と、昔でもない話に花を咲かせる私とクラリエル。クラリエルは大変だったというが、私は大分楽しんでいた。


 「あっ。あの論文、オドレイ様が書いてたんでしたっけね……」

 そう控えめに言うセバス。

 「あ、ああ。うん。中々、うんよく書けてたと思うぞ。うん」

 ジョスも歯に衣着せぬ物言いをする。


 「そうなると……オドレイ様、ヨハン先生は最期に何か発明品を作っていた筈なんですが、何かご存知でしょうか?」

 何かを察したようにトマスは話を振る。


 「発明品。はて何があったのじゃ……?」

 『共同体についてと望ましくない影響を食い止めるために』以外にヨハンの奴、なにか作っていたのか?と思案する。


 「……そういえば……確か火薬で動く機械を作ってた……とか言っていたような……」

 クラリエルはそう顎に手を当てて思考の海から情報を引き上げてみせた。


 「それだ! その設計図、あるいは論文か何かあればぜひ見たいのですが……」

 「すまないのじゃが、望み薄。じゃな……果たして彼女が亡き師の遺作を見せてくれるかはわからぬのじゃ……しかし、言うだけ言ってみるのじゃ。過度な期待はせずにまっておるといい」

 トマスは喜ぶも、即座に私に過度な期待はするなと釘を刺され、しゅんとする。



 「さて、中々良い発明だったのじゃ。必要とあればそなたの発明を私の婚約者マウテリッツ伯に話をしてみるのじゃ。精進するといいのじゃ」


 そんな訳で帰る事とする。


 「ここは入り組んでますから、わかる道まで案内いたしましょう」

 そう言ってセバスは案内役を再び買って出る。


 その言葉に甘え、私たちはセバスの案内の元、帰る事になった。


 ………


 ……


 …


 「ジョス、あの論文、1シーズン50匹。年100匹程度の実験とか舐めてるだろこいつ。皇室サマがお遊び気分でやるんじゃねぇ。って言ってなかった?」

 「しいぃぃぃ!!!言うんじゃねぇ!!!首が飛ぶ!!!」


 残された2人はそんなことを話していたとか話してないとか……。







 つづく。


遅くなりました…

とりあえず1シーズン50匹、夏と冬の計100匹程度の統計でしかないので、夏休みの宿題的には花丸ですが、卒業論文としては卒業できないかなとは思います。


次回は今月中にもう一回更新したいです!

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