68話 新発明とやらを見にいくのじゃ!
さて、あれからしばらく経つ。
すっかり秋だが、何故か前回の発表会の熱に飽きが来ない。ついでに休日の空きもない。
あの発表会の後、外部からの手紙やサロンや夜会の招待や訪問が増えた。
学生の奴隷廃止運動を辞めさせた人物として、知識人の中では持ち切りらしい。
こういう知識人の繋がりも無碍にはできない。否、現世においては学問も多岐に渡り、統治するにしても必要となる知識が多く必要であるが、人の頭はそう多くは入らない以上、知識人の知り合いは時として名将よりも重要となる。
……と信じたい。
最初の頃は有象無象の、廃止した後は何も考えてないタイプの人間の多いサロンが多かったが、今はこれは。これこそが知識人であると言いたくなる程の人間がいるサロンが多くなっている。
そんな訳で休日も時として分刻みでサロンをハシゴしたりする時もある。
おかげでマウテリッツ伯と会う時間が減っている。かなしい。
ちなみに、サロンというのは談話室でお茶や菓子を嗜んであれこれ雑談したり今回のように奴隷廃止のあれやこれを話したりしたりしなかったりする、いわば『雑談会』という意味である。
夜会もそんな感じである。夜会の方はダンスパーティーという意味が強い。その後は……うんまあそういう意味でも夜会って事である。ちなみにそんな訳で夜会は学生の身という事もあり丁重に断っている。
さて、延々とサロンの話をしているが、今現在はサロン廻りは今日はお休みである。
たまには部屋でゆっくり……としたいが、残念ながらそれも違う。
今日は学園内で面白い発明をした輩がいるというので、会いに行こうと思う。
さて、会う前に知っておかねばならないこの世の理とやらを語らねばなるまい。
なんと、この世界では通信魔法なる『遠くの拠点と会話ができる魔法』が存在するのである。
伝令がいらなくなる。凄い。まさに異界。
しかしながら、弱点もある。まず、魔法石の関係で特定の施設間しか通信ができないし、気象条件が悪いと使用できないものとなっている。
これは転移魔法と似ている。転移魔法も特定の施設でしかできない。しかも国を跨いだ場合は1日休まねばならない決まりである。最も気象条件は関係がない。
そんな通信魔法であるが、気象条件や施設に捕らわれない画期的な発明をしたという話を聞いたので、見に行こうという話になった。
「して、ここはどこじゃ」
「申し訳ありませんが、どうやら迷ったようです……」
オレイユが申し訳なさそうに言う。
「この辺り、本当に迷いやすいです……」
続けてクラリエルも言う。
そう、そんな発明を見に行こうと思い立ったはいいが、三人して迷ってしまったのである。
学園要塞には様々なエリアがあるが、ここは大学生の、それも研究を行うエリアであり、大変迷いやすいところであった。
否、迷いやすいならまだよい。
所々、机などにより通行止めになってたり、「お嬢ちゃん達綺麗だね。何学生? どんな髪の毛のケアしてる?」とやせ細って眼鏡を掛けた男とも女とも言えない人物に声を掛けられたり、極めつけはキエエエエと奇声を上げながら部屋から飛び出して来たり、「気にしないでくれ。課題が終わらずに発狂しているだけなんだ」と冷静に解説をしてくれる目が虚無の学生やら、スラムなど目ではない魑魅魍魎が跋扈する空間であった。
こんな事ならヴァレリー氏辺りを連れてくればよかった。
「というか、そもそも目的地はどこの部屋なんじゃ」
「確か……土木学研究室だったと」
「え、私は建設技術開発室だと聞きましたが」
クラリエルとオレイユはそう口に出すと、互いを見合う。
「……私は機械工学研究所と聞いたのじゃが」
私がそう言うと、三人の間に沈黙が流れる。
なんたることか。三人とも全く別の名前の場所を探していたのである。
「別に責めはしないのじゃ」
クラリエルの目が死を覚悟しだすのをみて、慌てて修正を入れる。
「……何故三人とも誤った名称を覚えているのかが謎ですね……」
「オレイユ、だから責めてなど……」
「いえ、責めてなどいません。ただ、どうして三人とも別の名称なのか。というのを……」
オレイユの言葉に確かに。と思った。
こういう場合、大抵は誰かが間違っているが他の二人は合ってるかその逆である場合が常である。
だが、今回のように、三人とも別々の名前を出したのは初めてである。
何かがおかしい。
「おや、そこにいるのは……まさかオドレイ様!!?」
違和感を口にするよりも早く、状況を一変する声が響く。
つづく。
大分掛かってすみませんでした。
一週間後にまた更新したいです。




