66話 妙案の発表会なのじゃ!!!!
時に、貴族はよく横暴であるとされている。
いわく、イチャモンをつけて年ごろの娘を攫っただの、婚約していたのに取られただの。様々な横暴なふるまいをよく聞く。
かくいう私も、前世でも村々に配備した代官が年貢の取り立てが厳しいだの、娘に手を出しただの訴えを多く聞いた。
あまりにも五月蠅かったので、その代官を廃止して、年貢を重くし、その増えた収益分を代官の給料に回すという処置を行った。
その話をクラリエルにしたところ「ちょっと何言ってるかわからないです」みたいな事を言われた。何故と思ったが、現世における農民は基本的に余力がないそうである。
え、農民って食料を生産してる側だからイカホドにもちょろまかす事もできるじゃろうに。と思ったが、よくよく考えれば、前世においての年貢は、鎌倉の幕府の時代より変わっていなかったのを思い出した。ウチはそうそうに変えたが。
さて、毎回毎回話が逸れてしまうが、仕方がない。
とにかく、現世においても前世においても、支配階級は被支配階級から見れば横暴であるとみなされている。
確かに、言われてみれば統治下に入った村々に押し入って、第一村人を締め上げてとりあえず家の一つも燃やして誇示を行うのは横暴ではあるかも知れない。
だからこそ、現世においては貴族は平民に優しくしよう等という思想が蔓延っているのである。
あるいは、現世においては貴族であっても位が低ければいつぞやのガストビ商会という人攫いの餌食、つまり奴隷みたいになり得るので、考慮しなければならないのかも知れない。
前世においては、(現世における貴族に準ずる)武士は戦場においては生きて手柄を立てるか、死んでその首を敵に晒すかの二択ぐらいしかないので、奴隷に落ちるかも等と考慮する必要性がない。
さて、そんな訳で、前回言っていた『平等とかぬかして奴隷制度をなくそうとする不届き者を鞍変えさせる妙案の発表会』である。
会には奴隷制度廃止派の生徒の他にエリーズ等の肯定派の面々もいる。何故か生徒会の面々や教師達も監視のためなのか、私の晴れ舞台だからなのか、いる。
まぁ私はこの数日間、クラリエルや仲間達と共に資料や発表の練習をしていた。抜かりはない。仕込みは上々である。
「そもそも!!おぬしたちは奴隷廃止奴隷廃止というが!その奴隷は、奴隷制度を廃止して奴隷でなくなったら、一体どんな職に就かせる気じゃったのじゃ!」
そう叫ぶように尋ねた瞬間、廃止派の生徒たちが一斉にハッとしたように驚き、互いの顔を見合う。というかざわつく。
やはり、何も考えていなかったらしい。
「その奴隷は、今までろくに文字の書き方も学ばせずにいたのであろう? そんな奴隷という職にしか就けないような人間を、奴隷という職に就けさせないようにしたら、どうなるか考えた事はあるのじゃ?」
畳みかけるように尋ね、廃止派の代表格の一人に手で発言を促すように指す。
「……考えておりませんでした」
震えるようにそう発言する代表格。素直でよろしい。
「うむ、素直でよろしいのじゃ」
これである。
クラリエルやオデッタ、ヴァレリー氏に学園内外から情報を得た処、どうも奴隷を辞めさせた後、どうするかをあまり考えてないようであると思っていた。
そう、つまりこのままでは奴隷制度廃止で奴隷を廃止にしたはいいが、それで得たは『元奴隷という肩書の、手に職どころか、読み書きもろくにできないような貧しい者達』しかない。という悲惨な事態になりかねない。
曲がりなりにも、奴隷は主人に身元を保証されているのである。寝泊まりする場所も、とりあえず今日と明日の飢えを凌げる程度の食事も用意される。
それをお上が無理やり引き裂くような事は、必ずや多大な混乱と悲劇を生むであろう。
そういう旨を彼らに告げた.
「しかしオドレイ様。その寝泊まりする場所や食事も満足に与えない者がいるのですよ」
手を上げて反論を行う者がいた。
「うむ、ならばそれらを処罰する法を定めて守らせれば良かろうなのじゃ」
つまり、鞍変えさせる妙案なるものは
『奴隷制度自体は存続させるが、食事や寝床の質、待遇の向上(主に鞭打ち禁止)やケガや病気の治療の実施や義務化や読み書き等の教育の実施』という奴隷の待遇改善・地位向上である。
これだけではない。
「「上訴権の制定と一部奴隷の解放?」」
皆が口をそろえて言う。
「まぁこれは行く行くの話。奴隷でも読み書きができるようになってからの話じゃがの」
「上訴権……といいますと、まさか主を訴える事が!?」
そういうのはエリーズ。奴隷制度肯定派としても中々認容できるものではないだろう。一見すると。
「左様なのじゃ。ただこれは先の食事や寝床、待遇の件でしか訴えられず、また訴えが偽りであった場合は処罰を与える事になるのじゃ」
「上訴権を認めれば、例え無意味な鞭打ち等の虐待で苦しむ奴隷達が訴えれば、その鞭打ちをする主は処罰され、奴隷たちは新しい主の所へ行く事になります」
オデッタが畳みかけるように支援する。
「なるほど……。しかし一部奴隷の解放? 解放には反対だったのでは?」
「制度自体の廃止には反対じゃが。解放は良いと思うのじゃ。
奴隷の中には相応の知識や技術を持つ者も中にはおるじゃろう。
その者らを職人という形に解放を行うのじゃ」
かくして奴隷は解放されたという実績は作られるし、解放された技術奴隷達もやる気が出るであろうし、解放されなかった奴隷達も頑張れば解放されるかも!とやる気になるし、それで得をするのは奴隷を持つ肯定派の方々である。
我ながら、皆ある程度幸せになる素敵な案であると思う。
案の定、ふむふむと肯定的な声が上がっている。
どうやら、双方の妥協点を設ける事ができたようである。
さて、閉会の言葉を述べるとしよう。
「最後に……確かに神は人の上に人は作らなかったのじゃ。
しかし、現実は人の世であるからして、人の上に人を。という仕組みになっているのじゃ。
もし、一番下の奴隷を廃しても、奴隷よりもマシな、二番目の者達が奴隷の扱いをされるだけなのじゃ。
よって、私は奴隷制度を維持し、一番下の奴隷の扱いを良くする事で、帝国全体が良くなっていくと信じているのじゃ」
そう言い終えた時、皆から喝采を受けた。
廃止派や肯定派のみならず、先生方も拍手をしている。
うむ、どうやら成功である。
クラリエルも「お見事ですオドレイ様!」と喜んでおるし、「最の高」とヴァレリー氏は良いというサインである親指を突き立てる仕草をしている。
オデッタも「お疲れ様」とねぎらっている。
うむ、大変有意義な一日であった。
つづく。
※これは、曲がり間違っても自分が処刑される事はあっても、自分は性奴隷にはならないだろうという思考の持ち主の主張です。
圧倒的強者の思考が書けたと思います。
遅れて申し訳ありませんでしたが、次回は1週間後、来月になると思います。




