58話 海水浴は楽しいのじゃ!!
さて、そんな訳で潮浴もとい海水浴であるが、これが中々楽しいのである。
まず手始めに水を飲み、よく手足を動かす運動をした後に皆でワーと波に向かって突撃を行う。もうこれで楽しい。
そしてわいのわいのと水を掛けあったり海の中に潜ってみたり、海の中の足が届く砂地がどこまで続くか試してみたり、色々と楽しい。
しかしの中の足が届く砂地がどこまで続くか試す時に、あまり遠くに行ってはならないと厳重に注意を受ける。ご丁寧に深くなる部分辺りに小舟まで用意して厳重に見張っているのだ。ご苦労な事である。
なお、言うのが遅れたがマウテリッツ殿や見張りの小舟の者や一部の護衛の兵たちは上半身裸だが、下半身は布の短いズボンを履いている。否、本当はズボンではなくパンツと言われている。しかし私は短いズボンと表記しておく。
何故マウテリッツ伯以外にもそのような姿をしているかと言うと、私達が溺れた際にすぐに助けに入る為だという。確かに水中では鎧は勿論、服を着ていると重くなって沈んでしまうので理にかなった理由である。
ましてや今ここに居るのは皇家側室とその友人の貴族達。何かあれば一大事である。
さて、先ほどから心配しているかと思うが、私たちは泳げるのだ。
前世でも泳げたし、この世でも泳げる。
そう言えば言うのを忘れていたが、この世界には湯舟がある。しかも泳げる程広い。
以前、オレイユの黒い肌をゴシゴシして胸を揉んだ際に風呂へ入ったが、浴室がかなり広いのである。無論、それは皇家のみの話だろうが……。
ともかく、浴室が広ければ浴槽もまた広い。そういう訳なので浴槽で泳ぐ練習をしたのである。
さて、そんな訳で一通り泳いだら、なにやらヴィヴィアーヌが砂の塔を普請していたので、私のその普請に加わる事とする。楽しい。
しかし途中から方向性の違いから別々の塔を普請する事となった。
途中、塔に飽きたので城を作る事となった。ビビアーヌは「砦ですか姉上!」とめっちゃ目を輝かせて言ってきた。ヴィヴィアーヌだけではなく、クラリエルやサシャ、オデッタやヴァレリー氏、マウテリッツ伯までもが、私が作った城を「砦」と認識したらしい。
無理もない。前世の日ノ本の城は土を掘り固めた山城や丘城が多く、平野の城も周りを空堀や水堀を作っており、如何にも戦の為の城なのだ。現世における美しい城とは全く別であるのだから。
それに現世は石やレンガなる砂を押し固めた(焼き固めた?)石で作るのに対して、前世ではほとんど土である。土を掘るか盛るかして木の柵や壁、そして櫓を建てるのが普通なのだから。
なお三城殿は故郷の古いお城に似ているとの事であった。
さて、そんな訳で、海水浴も終わり、日が暮れてきた。
昼食を食べてから海水浴に着いたのでこうなるのは分かっていたので野営を行う。ここを野営地とする。
そもそも今回は野営をする事を最初から決めていたのである。
幸い、ここは貴族用の浜辺で、このように野営する貴族の為に竈や井戸、雪隠等が設置されている。雪隠はここでは皆トイレと呼んでいる。
そういう事なので、今日はここでおしまいである。
夕食後、マウテリッツ伯と夜の海を一緒に見たり、星屑の尾や星座……前世では星官と言った。を見て夜更かしをした。
その際に交わした会話は……正直恥ずかしいから省略させて欲しい。
なお、その後見た夢の中で『のぶなが』が出て来て
『お主は知らんだろうが、日ノ本の城はお主が死んだ後に劇的に進化して、天主閣なる南蛮にも負けぬ城郭ができたのだ!』
と、天主閣と呼ばれる物を出現させていた。
夢の中なのに騒がしい奴である。ちなみにその天主閣なる建造物がある城の構造というか地形は、大坂にある本願寺に似ていた。あそこは淀川・大和川が流れ込んで天然の水堀状態で経済的にも防衛的にも重要な要地であった。
とりあえず私は背中に下げてある刀で『のぶなが』を適当に切り捨てる等するも、分裂したり笑いながら私が死んだ後の世の移り変わりを本当かどうかは別として語っていた。
本当に夢なのに騒がしい奴である。
つづく。
本当は昨日うpしたかったのですが、諸事情で今日になりました。
普請は工事という意味で使用しています。
次回は5月5日を予定しています。




