53話 帰省した訳なのじゃが、見知らぬ童が居たのじゃ
ティバタール城。
そこは大陸を統べるに相応しい天下の名城とも呼べる立派な王宮である。
小山の上に建造されているが、居住スペース等増築に増築を重ね、山そのものが城となっている。
昔、城を踏破しようと探検をおこなったものの、実はそこは居住スペースの一部でしかなかったと判った時は腰を抜かした。
居住スペースの一つと言っても屋敷そのもので、本来なら後宮と言うのが正しいが、何と言っていいのやら……現世の建築学には疎いので、うまく形容できない。しかし聞く話によれば現世においてもこのティバタール城は異質な構造の建築であるそうな。
そんな訳で帰省したのじゃ。
いつものメイドや小間使い達が出迎える。
春までここに暮らしていたので皆顔なじみである。
実をいうと、私の実家はここになるので、私ならばここから馬にでも乗って学園へ通う事が可能であるが、学園の決まりで寮に住んでいるのが現状である。
つまり、週1のペースで帰ろうと思えば帰れるのだ。
入学当初、妹のヴィヴィアーヌが居ないだのなんだの言って腐ってた時期があるが、1週間過ごせば普通に会えたのである。
「あねぎみー。おかえりなさいませー」
さて、屋敷の入り口のエントランスホールなる玄関にて出迎えてくれる自分を姉君と呼んでくれる女子が一人。
……誰?
歳は大体5歳。私と同じ桃色の髪をしている。
服装はかつての私の服装を模しているようである。
……いや、待て。声は男である。まさかこやつは……!!?
「……サシャか?」
私の弟の名を呼んでみる。
「うん、ぼくサシャだよ?」
うむ。
どうやら弟のようである。
そう、これを読み進めている者もすっかり忘れているだろうが、私には弟がいる。
私が5歳の時に生まれたばかりの弟がいると言っていたのを覚えているだろうか?
それがこれである。実の弟にこれとかいうのは良くない。しかしそう言わざるを得ない程の事態であると理解して欲しい。
……どうみても女子なのである。
しかし肩幅と声で、辛うじて……いや、それすら怪しいが……だが、私の弟はサシャと言われているので目の前に居る女子にしか見えない女子がサシャ。という事になる。
「? 姉君? どうしたんですか?」
サシャが不思議そうな顔をする。どうやらこちらの混乱を気取ったようである。
「驚いたでしょう? 姉上」
そう混乱している時に、ヴィヴィアーヌは現れた。
「ヴィヴィアーヌ。これはお主の仕業か?」
「え?」
「え?」
「え?」
三人の疑問に満ちた声が木霊した……気がする。
つづく。
次回は3月3日を目安に投稿予定です。




