48話 お食事会なのじゃ!!
さて、そんな訳で数日後、待ちに待った生徒会内でのお食事会が始まる。
当初は留学生の自国の料理だけであったが、話が大きくなり、皇国内の地方の料理を出し合う事になっていた。
生徒会とは学園内の自治を担っており、その規律は素晴らしいものであるが、今日ばかりはハメを外してお食事会である。幸い生徒会室は広く、ほぼ全員が席に付ける巨大なテーブルもあるから問題ない。
食事は自宅の料理人が学園の厨房を借りたり、自宅で調理されたものを届けたりと、様々である。
なにせこの生徒会に居る生徒はほぼ上位貴族かそれに準ずる者であるからして、それくらいは普通にできるからである。
留学生ともあれば尚更である。
「おお、木幡殿、今日は蕎麦を持って来られると聞いて楽しみにしておったのじゃ」
「これはこれはオドレイ様……。今日は祖国より送られてきた蕎麦の実をふんだんに使用して祖国さながらの蕎麦を味わって頂きたいです」
そう凛として言う彼女は木幡三城。幕府国の重臣の娘である。いわゆるポニーテールという髪型で、黒髪という事もあり非常に様になる姿である。
日本のような文化を持つ国……というよりここでも幕府が存在している事に驚きを隠せないが、話を聞くに私の知っている幕府とは色々と違うらしい。
どうやら遅れておるのは前世の日本であり、こちらの日本的国は皇国には負けるがそれでも立派な国らしかった。
現世において何かと前世は遅れていると痛感していたが、少しはマシになったと言える。
「して、木幡殿。前々から言っていた例の物は……」
「はい、こちらに……」
なにやら第三者から見たら怪しげな取引に見えるが、なんのことはない。
蕎麦という事で蕎麦の実をもってきて欲しいと頼んでいたのである。
無論、帝都にもわずかに流通しているのだが、こういう機会なのだから貰いたいと考えていたのだ。
そして木幡殿は懐からそれなりの大きさの袋を取り出す。
「こちらが蕎麦の実となります」
「おお、これが……」
そう言って袋を受け取り、中身を検める。手のひらには前世と同じ形の蕎麦の実が適量こぼれてくる。
「これが蕎麦の実……四角錐のようになってるんですね」
断りを入れてクラリエルが手に取って見ている。
「うむ。香りも良いのじゃ」
そういって手のひらの蕎麦の実の香りを楽しもうとする。
「むっ。くッ!ショッンッッ!!」
香りを嗅ごうとした瞬間に鼻に違和感を感じて思わずクシャミをしてしまう。
幸い「むっ」の段階で悟って唾が付かないように蕎麦の実を握り、顔と口を腕に埋めるようにクシャミを行う。
第2波が来るのが分かったので「ちょいもっておれ」とクラリエルに全てを手渡して、即座にまたクシャミをする。
「だ、大丈夫ですか? オドレイ様?」
木幡殿が不安そうな顔で気遣ってくれる。
「ううん? どうしたことじゃ。鼻に違和感が……」
「ええっ?」
木幡殿は驚く。無理もない。ここで気分が悪くなっては疑われるのは木幡殿なのだから。
「いや、大した事はないのじゃが……どうやら蕎麦の香りにムセた? ようなのじゃ」
前世では幾らか食べた蕎麦であるが、現世に来てからは見た事がない。というか存在しているか不明だった蕎麦の香りにムセてしまったらしい。
無理もない。この体は前世と違うのだから。
そう、違っていたのだ。前世とは。
それがどういう事であるかを思い知るのは、もう少し後になってからであった。
等と振り返っているが、とりあえずその時は、クラリエルが呑気に蕎麦の実の香りを楽しんでいたのを見つつ、片付けるように指示をして、いよいよ第一品の斉帝国の料理が出てくるという頃になっていた。
よって私は数秒ごとにクシャミがでるのと蕎麦を握った手に痒みが出てきている事を少し気にしつつも、まだ見ぬ料理に心を躍らせていたのであった。
つづく。
どうにか年内中に更新ができてよかったです。
次回は来年の6日となります。
ちなみに自分は特にアレルギーはありません(唐突な告白




