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今川転生伝 〜41歳のおっさんだけど異界に転生したので、れっつ☆えんじょい。なのじゃ〜  作者: テト式
第1章 え!?この状態からでも入れる保険があるんですか!?から始まる異世界転生★
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4.99話 あるいはマウテリッツ・ナッサウ・オラニエ=デフアンナッサ辺境伯

地の文無双だったので大幅に修正したら別物になったでござるの巻・続


 「ポウルラードから取り寄せた蜂蜜酒だ。こういうの好きだったろ?」


 ややあって、兄フィリップルの要望で二人きりで話したいとして個室に案内し、酒を進める。


 やはり仲が悪くても兄弟であって、好みは把握している。フィリップルの好みは蜂蜜酒であった。


 「ふん。貰おうか」


 棚よりのぞかせた酒の種類を把握し、まぁ酒の趣味は良いのがお前の取柄だ。と小言を言うフィリップル。


 「それで兄上。父の命を帯びて遥々こんな最果ての地へお越しいただいた訳ですが、どのようなご用件で?」


 酒を注いだグラスとつまみをフィリップルへと渡し自虐的な皮肉を言うマウテリッツ。


 「……お前。歳は今年で32か」


 「兄上が33ならそうなりますな」


 え、何。唐突に。と言わんばかりに面くらったマウテリッツだが、質問に答える。


 「相変わらず女を食い物にしているのか?」


 「食い物って人聞きが悪いな。手を付けた女は軒並み経済的な支援を行って愛人関係で今も保ってるんだぞ」


 「……我がオラニエ家の名を掲げて各地を傭兵、いや盗賊の真似事をして略奪した女だろうに」


 フィリップルは苦々しい顔をして嫌味を言う。


 兄フィリップルの言う通り、マウテリッツはこのナッサウの領地が与えられる前は、独自の傭兵団を作ってエルディバ皇国中を転々としていたのだ。


 そもそも圧倒的な軍事力と魔法技術によりミイソス大陸に覇を唱えたエルディバ皇国であるものの、下々の草民の支配は貴族や領主達に任せざるを得ず、結果、貴族や領主間のいざこざは絶えなかった。

 そのいざこざを正す法はある。それによる解決の場も州(国)ごとにある。だが皇国は広大であり、とてもすべてを裁くには至っていないのが現状であった。


 そんないざこざを解決する為、あるいはさらにややこしくするために活躍したのが傭兵であった。


 領地問題であまり派手に騒ぐとエルディバ行政府の耳に入り、良くて領地没収。悪くて皇国領からの除外と成敗戦争に発展してしまうので、貴族間・領主間の争いは両方合わせて1000を超える軍勢の衝突は起こらない。


 またそんな下らない事に折角の収入源となる農民や平民は使えないので、傭兵を戦いの毎に雇い入れて戦わせるという具合である。


 マウテリッツはそのビジネスに目を付けて、流れ者の傭兵を200名。そこに食い扶持欲しさに志願した流民や農民、市民等を50名。あとは直属の騎士が100名の計350名程の傭兵団を結成し、エルディバ皇国中を転々として、一稼ぎ、否、五稼ぎぐらいしたのであった。



 「いや、だから略奪ではなく、しっかり相手の合意の下で……」


 「ああ、確かに女との合意はあった。 だがその女が既に付き合ってた男の承諾はなかった! 貴様は婚約者・既婚者問わず手を出したのだ!これを略奪と言わずになんという! そもそもだ!頼んでもない貴族同士の争いに勝手に介入しては金をせびり、相手が渋ったら我がオラニエ家の名を持ち出しては金を強奪する! これを盗賊団と言わずになんというか!」


 「いいじゃねぇですか。これで百年前から続く争いに終止符が打たれた領地も少なくありませんでしたぜ。そもそも兄上や教会の依頼で()()()()()()()()()()()()()だってシッカリこなしてたじゃねぇですかよ」


 酒が入り熱くなる兄に対して涼しい顔で答えるマウテリッツ。


 「それはそうなんだが、帝都のサロンでお前は『戦争好き』『乱暴者』『素行不良』と叩かれ、少なからず我がオラニエ家の名誉を傷つけているのだぞ。少しは謙虚になったらどうだ」


 「へいへい。だからこうして大人しくこんな僻地で魔物狩りや野盗狩りに勤しんで暇してるじゃねぇですか」


 マウテリッツの反論にうぐぐと唸るフィリップル。


 「それで、兄上はそんな昔話をしにここへ来たと?」


 「いや、そろそろ貴様も身を固める時期が来たのだ」


 「身を固める? いや、そんな兄上、私はそんな――」


 マウテリッツは笑いながら頭を振って見せる。


 「オドレイ・ドラコーヴァ=エルディバ。テルティバの名家ドラコーヴァ大公家の女性が第三皇女に収まり、子をなしてその第一子だ」


 だが、兄は弟の拒否を無視しして、勝手にえんだんを進める。



 「は?」


 予想外のエルディバの名にさしものマウテリッツも思考が停止してしまった。


 「無論、第三皇女もとい側室である以上、エルディバの姓は捨てる事になり、まかり間違ってもお前に皇位は回って来ない。安心しろ」


 「しかしそうなると私はドラコーヴァ大公家の後継となるのでは?」


 「それも大丈夫だ。結婚の暁にはこの領地はお前の一族の物。つまりオラニエ公家から独立し、お前達夫婦は新たな姓を名乗る事になる。デフアンナッサ家なんかどうだ」


 攻守逆転とばかりにマウテリッツの疑問にスラスラと答えて見せる兄のフィリップル。


 「そ、それは中々いいネーミングですな。しかしそうなるとドラコーヴァ大公家は誰が? 確かあそこは現在の当主の息子が死んで娘が一人。その娘も皇室に入って世継ぎがいねぇ筈ですが?」


 満更でもない様子のマウテリッツだがそれでも疑問は尽きない。


 「その現当主の弟、お前の婚約者から見れば叔祖父しゅくそふが継ぐ手はずになっている。だから安心してお前達夫婦はこの地を治め続ける事ができるぞ」


 フィリップルはにこやかに言う。


 つまり、オドレイはドラコーヴァ大公家も継げず、エルディバ帝にも(第一皇女のサヴァチエ家の子らが先だから)なれず、どこか適当な名家の人間の物にならざるを得ない娘であるのだ。


 そしてその適当な名家の人間というのが、自分なのである。


 マウテリッツはそう解釈し、そんな哀れな少女オドレイの待遇に憐れみの感情を禁じえないと思いつつも、内心、そんな高貴な女を超合法的に犯せるという事実に喜びを感じていたのであった。


 「……ん。待ってくれよ。確かそのオドレイって五年くらい前に生まれたって聞いたが……?」


 「ああ、今はまだ5歳だ」


 「5歳……!」


 その年齢に驚きを感じ得ない。と言った様子のマウテリッツ。


 「流石に即座に結婚とはいかずに婚約という形になるが、5年10年後に結婚と相成るが……いや、別に結婚しても構わないが……」


 「流石に5歳児に手を出す趣味はねぇよ」


 「まぁそうなるわな」


 「だが10年後が楽しみって奴だ」


 「まぁ。そうなるわな」


 流石、我が愚弟、いくら『乱暴者』の異名はあっても、少女性愛(ここでいう少女性愛は3歳以上から15歳以下までの広範囲)の趣味はなかったと安堵するフィリップル。


 だが油断はできない。現皇帝も第三皇女のドラコーヴァ家の女を娶ってからというものの、成人しても背丈が子供並みのホビエルフ好きや胸が小さいか、ない女性が好きかのように振る舞いだしている。現に皇室で働くメイドは胸が皆ない。


 愚弟もいずれそうなってしまうのではないか。あまり好きではない愚弟なれど身を案じてしまう兄であった。


 「10年後となるとお前は42歳となるが、我が皇国の貴族間では70歳と13歳の間に子を成したという話もあり問題は全くない。安心して手を出すがいい」


 「……ああ、そうさせてもらうぜ」


 一瞬の間にフィリップルは思う所があったが、気にせずに蜂蜜酒を味わうのであった。


 ………


 ……


 …


 それから数週間後、マウテリッツは帝都ディバタールに居た。


 あれからというものの、とんとんと話が進み、ついに面会の日程を組む段階まで進んでいた。


 無論、縁談だけが帝都に居る理由ではない。皇国の貴族は皆そうであるように、マウテリッツも自分の領土から算出される物資や交易品をここ帝都で売りさばいている。そうでなくとも色々と仕事はある。


 今月中には面会は行われる。だがまだ第三皇女側の調整ができてないからもう少し待て。と言われている状況下で、マウテリッツは、未来の嫁であり親が定めた運命から逃れる事ができない哀れな姫君を一目見たいと考えていた。


 それというのも、独自の情報網だとどうにも活発な娘で妹と同い年の従者を引き連れて色々と走り回っているという話であり、姿容姿も魔法の摸写による人物絵で把握済みであった。


 かくしてマウテリッツは多忙なれど単純な書類処理作業の合間に野暮用を見つけ出し、まんまと登城する事と相成った。



 だが登城したマウテリッツが遭遇したのは、厩舎の邪魔にならない処でワンワンと泣く三人の幼子達であった。身なりからすると少なくとも名門貴族の子であると判る。


 「おい、ありゃなんだ」

 マウテリッツは馬を曳きつつ遠巻きに見ている厩舎の人間に尋ねる。


 そして泣いてる幼子は、なんと目的のオドレイ・D=エルディバであり、周りの子はその御供だそうな。という事が判明した。


 「なんだぁそりゃ……」

 使用人の話を聞くに、どうも泣いてる理由が馬の生殖器の去勢だと言うので呆れを通り越して困惑する。


 「まぁいい。お前、俺の馬を頼む」

 マウテリッツはしばし考えをまとめていたが、そう言って手綱を使用人に渡してオドレイに歩みを進める。


 いつまでも泣かせておけば周りの使用人達の首が物理的にも危なくなるからである。


 「おいおい。どうしたんだい嬢ちゃん達」


 マウテリッツは笑みを浮かべながらさり気なく近づく。


 重ねて言うがマウテリッツは、実の兄に『貴族の服装でなければ山賊だと思われるだろう』とか言われる程の顔立ちである。


 なので、本人の予想からして『もっと泣く』か『黙る程ビビるか』の二択であると思っていた。


 だが、目の前の幼子はそのどちらでもなかった。


 「は……ハラミイシ……?」


 「は?」


 幼子は今まで聞いた事がない『何か』を口走った。


 この出会いこそ、エルディバ皇国のみならず、今後の人類の歴史にとっての重要な出会いの一つとなったのであった。


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