35.5話 良かったのじゃ
調子が良かったのでコミケ帰りですが、更新しました。
夜。
月が綺麗である。星屑の尾が一層月を引き立てている。
あのピンクでヒラヒラして嫌~なあの服を着ての撮影会もどうにか終わり、貧困層の子供達への貴族の子の教育もどうにかなっている。
今回の件は私も色々と考えねばならない件であった。
「オドレイ様?」
そう思いに老ける中、クラリエルがベッドより抜け出して窓から月を眺めている私に気付いて、ベッド上より声を掛けてきた。
下着姿のクラリエルもまた良し。である。
現世に来て、私も色々変わったな、と思う所は、どうやら私は幼い女子が好き……なのかも知れないという事であった。
現世では『幼い女子が好き』というのをロリコンというらしい。
最初は衆道の真似事ではあったが、段々熱が入っていき、気が付いたらクラリエルの事が好きになっていた……と言えるほどになっていた。
「いや、なに、物思いに耽っていたのじゃ」
「物思いに?」
クラリエルが不思議そうに尋ねる。
「この世界は、極楽浄土……いや天国などではなく、しっかりとした人の世なのであるのじゃな……と思っていたのじゃ」
私はそう言ってみせる。
私が転生者である事は、クラリエル以外知っていない。現世においては転生者は、それこそ釈迦の再誕と言える程、重要な意義を持っていると書物を読んで理解していた。
それが確信に変わったのは何時ぞやの春の儀のマルジョリーという枢機卿が来た時であった。
それ以前にもマウテリッツも探りを入れる様子もあったし、あまり公言しない方がよい。と悟ったのだ。
驚くべきことにマウテリッツ伯は「もし、お前が転生者なら色々厄介な事になるから、あまり言わねー方がいいぜ」とか言われてたりもしている。……普通言うか?
「人の……世……?」
それはそうと、クラリエルはそう不思議そうな顔をしている。
「うむ。前にも言ったが、前世の戦国の世は兎にも角にも、この世よりも生きるのが大変な世界、もとい国であった。
それに比べ、この世界、この国は非常に豊かで、物に溢れている。苦悩のない世界なのじゃろうか? と思っておったのじゃ」
私はさらに続ける。
「しかし、それは皇家側室での暮らしだからであり、下の者は普通に飢えておるし、苦悩していると判った。なので、ここはやはり人間の世界なんじゃな……と思ったのじゃ」
その件については分かって本当に良かったと思う。
ここは極楽でも浄土でもなく、人の世の中である。と分かったのである。
「……尤も、この帝都では、行き倒れや野垂れ死には表通りでは居ないし、居たとしても即座に片付けられるが、前世での京の都という帝都的な場所では、普通に野垂れ死にの死体があったりと、やっぱり違うのじゃなぁ~とは思うがの」
「そんな殺伐とした世界だったんですかっ」
神妙な空気が一気に緩和しているのが分かる。驚いたクラリエルも可愛いのである。
「うむ。京の都では、中心地から少しでも離れれば何かしら燃えてるか燃やされてたりしてて、空き家は浮浪者か悪党どもの巣窟になってたり、裏路地どころか辻っていう十字路でも人斬りや人攫いとか出てたりとかあったから、人の世とはいえ、こことは天と地程の差があるんじゃ……」
「そこは本当に国の首都なんですかっ」
「うむ、国たるもの、ああなってはお仕舞じゃな」
今でも思い出す京での惨状。
いつしか上洛した際には、まず死体の片づけからせねばならんなぁと思っていた次第である。
そんなこんなで眠りにつこうとしたが、ふと気になって、仕舞っていた『漆黒の鏡』を取り出す。
母上より「いつも身に着けていなさい」と言われ、言われたとおりに懐に忍ばせている。
いつからかクラリエルより、丁度いい感じの巾着袋を貰った。これで首から下げられるようになった。
ミスリル刀もってアウトローな所に襲撃した際にも忍ばせたりもしていた。
そんな訳で取り出した漆黒の鏡を見る。
窓より月光がテラテラと降り注ぐ為か、若干厳しいが、ギリギリ私の顔が見える。
まるで心の中を覗いているような錯覚に至る。
さて、鏡も見たし、仕舞ってさっさと寝るとしよう。
明日も多忙である…………ぐぅ。
つづく。
次回は8月19日です。
次回は絶対にダイジェスト版です。




