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35話 残った料理の有効利用なのじゃ!


 「『料理店』……ですか?」


 オレイユがそう口を開く。


 「この前言っていた、あの事ですね?」


 クラリエルは目を輝かせて言う。


 「なんの事ですの?」


 ヴィヴィアーヌはきょとんとした顔をしている。


 「うむ、クラリエルにはちらりと言ったかもしれないがの。この宮廷の食べ残しや余った食材などを、民間に払い下げたいと考えておったのじゃ」


 私は構想を告げる。


 前々からここの宮廷料理は見事ではあるが、どうも破棄する物が多すぎる気がする。


 調べてみたら、大半は使用人達が食べたり稀に横流しされているとの事である。


 ならば正式に残った料理を民間の料理店に卸せば儲けとなるのではなかろうか?


 「確かに!そうですね!!」


 その話を聞いたクラリエルは興奮したように言う。


 「実はですね!前聞いた時からずっとずっと考えてたんです!お父様にもお話してて!!」


 そう鼻をふんすしながら語るクラリエル。かわいい。


 「それでですね!これが現在の所の試算なんですけど! あ、従業員はもう確保されてますね」


 そう言って『新事業』と書かれたノートを取り出し、開いて見せる。


 ………


 ……


 …


 「……これは、クラリエルが書いたのかの……?」


 「はい。一部お父様に教えて貰いましたが……あの、駄目……でしたか?」


 震えた声で言った為か、クラリエルは不安そうな顔をする。



 ……これが私と同い年の女子が書いたというのか……? という程の出来であった。


 「いや、実に見事である。クラリエル。お主才能あるのじゃな」


 「え!? あ、ありがとうございます!!」


 私の言葉に、素直に喜ぶクラリエル。かわいい。


 「今回の件、クラリエルの家であるゴッター家に任せようと思っておったのじゃが、どうやらクラリエル自身に任せるべきであろうと思うのじゃ」


 そう言いつつ、新事業のノートをマウテリッツへ渡す。


 「ええ!!? そ、そんな……私にはとてもそんな!」


 「クラリエルが適任だと思うが、どうかの? 無論資金はゴッダ―家に出せるし問題なかろう」


 「いいと思うぜ。表向きは貴族連中の子供は礼儀作法の講師として貧困街の子供に教える。という体にもできるし、料理店の従業員の教育の問題もクリアだ。というか、凄い出来だな……これ」


 マウテリッツも賛同しつつ驚愕する。


 ちなみに、囚われていた貴族の子供とあるが、それらの大半は貧乏貴族であり、マウテリッツ伯が少し『説得』しただけで言う事を聞いてくれるようになってくれたそうである。証拠もあるらしい。



 「あ、ありがとうございます!尽力いたします!」


 そう言ってお辞儀するクラリエル。かわいい。



 「……お待ちください。お嬢様」


 「なんじゃオレイユ。せっかくいい感じに終わる所じゃったのに」


 「申し訳ありません。しかしあえて言わせていただきたいのです」


 オレイユはそう膝をついて意見具申の構えを見せている。


 「申してみるのじゃ」


 「はい。……確かにその料理店の出資はゴッター家に頼めばよろしいかと思いますが……しかしこちらとして一銭も出さないのは聊か問題かと思われます」


 オレイユは意見具申を行う。


 確かに、場所や従業員を用意するから金を出せ。従業員の礼儀作法の教育費もだ。と金を出させるのは聊か気が引けるというか、誠意がないというか、多分、前世せんごくのよでは絶対金出さないよね……って話である。


 しかしである。


 「確かにそうなのではあるが、我らは側室の子。先立つ物等、何もないのじゃぞ?」


 あるとすればマウテリッツ伯に貰ったあれやこれ……あれやこれ?


 「いや、あったな。諸侯貴族から年初めの会に貰った贈り物の数々が。 あれをどうにか売りさばいて……と言ってもはした金にしかならぬか」


 「それでも有力貴族からの贈り物ですよ。それなりの値になるでしょう」


 ふむ、ではそうしようか。と思った矢先、マウテリッツ伯が考え込む仕草をしているのに気が付く。


 「ぬ、どうしたのじゃ。伯よ」


 「ん。ちょっと。な」


 伯はそう言うが、何かを隠している。


 「……なあ、オレイユ。あの襲撃の時にオドレイが着ていたあの服ってまだあるよな?」


 そう言って確認を取るマウテリッツ。


 「ええ、血が付いていたので洗って今乾燥中ですが……まさか!?」


 オレイユはそう言う、何かに気づき驚愕しているようである。


 「ああ、そのまさか。だ」


 「そんな!皇家側室であられるのですよ! そんな事をしたら!」


 「ああ、だから一回だけだ。この手はこの件のみだ。何度も使えん」


 またしてもマウテリッツ伯とオレイユだけの会話である。


 蚊帳の外であるヴィヴィアーヌがあくびをしている。見事なあくびである。


 「ええい!一体何を話しておるのじゃ!話してみせろなのじゃ!」


 「オドレイ嬢の服を売るんだよ」


 マウテリッツ伯がそう言ってみせた。



 ………


 ……


 …


 ?


 「いや、売れんじゃろ。服」


 「いや、売れる」


 「え、服じゃろ? 売れたとしても米のヨールルトも買えぬ値打ちじゃろう?」


 礼儀用のドレスならまだしも、あんなただの外行きの服装。売れる訳がなかろう。


 「いや、多分、最低価格はミスリルブレード1本は買える位の値打ちで、多分売れる」


 「はっ!? ミスリルブレイド!? 最低価格がこの刀が買える程の値打ち!?」


 そう言って背中に下げている刀を見せる。


 マウテリッツ伯から、10歳の誕生日にもらった刀である。


 鉄よりも硬い鉱石で作られた刀で、大変軽く、木刀並みに軽くて不安であったが、先の襲撃時に大変な切れ味を発揮してくれた。愛刀である。


 あまりの切味に、感動して名前まで付けてしまった。刀の名は『ドラゴン・ロワリング・ブレード』。この世界の名である。カッコイイであろう?


 話がそれてしまった。


 「冗談であろう!!服ごときにそんな高値が付くはずがなかろう! これでも値段の高い安いは見分けがつくのじゃぞ!」


 そう怒って見せる。


 「皇家側室の娘が袖を通したって謂れがある服なら、屋敷だって買える程の値打ちを付ける奴もいるぜ……」


 だがマウテリッツ伯はそう残念そうに言う。


 「馬鹿な! そんなに言うのなら屋敷が買える値段で売って見せるが良い! 見事売って見せたらお主が前にくれたピンクでヒラヒラして嫌~なあの服を着てやるのじゃ!!」


 そう啖呵をきる私であった。





 今にして思えば、何故この時こんなに怒っていたのだろうか?



 答えは考えても出ない。答えなどなかったのかも知れない。





 「似合ってるぜ。オドレイ」


 そう笑顔で映像を記録する魔法水晶を掲げてみせるマウテリッツ伯。おまけになんかヨハン・ベットリヒもいる。


 心なしかオレイユも何故かニヤニヤしておる。何故。


 ……こんなの……!


 「こんなの、裸より恥ずかしいのじゃ!!」


 ……マウテリッツ伯からもらった、ピンクでヒラヒラして嫌~な服を着て、私はそう叫んだ。



 つづく。


これで第2章終わり…かな?次回はダイジェストや設定になると思います。


次回は8月5日になります。

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