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34話 将棋大会への参戦はできなくなったのじゃ…


 さて、あれから数日経過した。


 大局から言えば、ガストビ商会は滅び、レグザッグ商会も会主の変更と事業の縮小を余儀なくされた。


 ガストビ商会の会主であるバイラス・ガストビはあの日、路地にて死んでいた(なんでもオレイユの師匠が殺したらしい)のをオレイユが発見し、それを我々が騎士団に提出し、その亡骸は広場にさらし者にされた。


 エルディバ皇国の皇家側室の子の馬車を襲ったという前代未聞の事件を引き起こしたのである。


 ガストビ商会の幹部達の半数以上が処刑されるか投獄される事となり、ガストビ商会は滅んだのである。


 ……最も、使い出のある幹部は、顔や名前を変えて替え玉を使用して生きていると言うのがマウテリッツ伯からの情報である。


 これには少し説明がいると思われるが、要は幹部の中には『ボスとその側近連中が勝手に計画してるし、実行犯は外部の下請けがやった事で、なんでそれで俺が死なねばならんのだ』という幹部も多く、鞍代えは比較的容易に行われた、というのが『生きている』の真相であった。


 要はエドワードフ商会へ吸収や鞍替えをしたのである。ガストビ商会の利権や縄張りもほとんどがエドワードフ商会に併呑される事となっている。


 表の顔のレグザッグ商会も、会主がガストビ商会とつながっていたというお題目で逮捕・処刑されており、残った経営陣も大規模な改変を命じられ実質的に別物となっているというのがクラリエル談である。




 大捕り物となった今回の事件であるが、警備の大規模な見直しがなされる事となった。


 当然である。というか今までがざる警備だっただけである。


 これまで、側室はそうでもなかったが、今回の襲撃事件を受けて今度は側室も移動時に警備の兵や騎兵が付く事となったのである。


 今までは本当に側室は『ふりぃだむ』という奴で、お忍びで喫茶店へ行って将棋やったりコーフィー飲んだり、馬乗り回したり、ミスリル刀振り回してアウトローな商会に襲撃を掛けてたり等色々出来ていたが、今回の一件からできなくなってしまったのである。


 大変かなしい。しかし仕方ない。


 しかしそうなると斉国の大使館にて毎年恒例の初夏の将棋大会へ参加者として参加できなくなる事を意味していた。


 せっかく考えた対フリードル戦術も気泡と化したのである。


 「個人的に呼び出して対局すればいいのでは?」

 とビビアーヌは言うが、婚約者がいる手前、他の男を呼びつける事ができようか!


 「え? とりあえず大会終了後、優勝するのはフリードル男爵であるからして、それ関係で呼びつければいいのでは?」

 とビビアーヌは続ける。駄目じゃこやつ。婚約者がいる女が他の男を呼びつける事の重大性を理解しておらぬ。


 「そもそも、私名義で呼びつけては全力で対局できぬではないか。令嬢Oとして対局せねばフリードルを殺す事にもなりかねるのじゃぞ!」


 こう説明してやっとビビアーヌが理解してくれたのであった。


 そう、かの対局は令嬢Oとして対局を行っていた。だから負けて放心状態になったとしてもフリードルにお咎めはなかった。


 また、もし、仮定の話であるが、フリードルが貴族ではなくただの市民であったのならば、逆に呼びつけて対局して惨敗してしまう事になっても、市民フリードルの首は逆に安泰ではある。


 たかが卓上遊戯の勝ち負けで市民の首を撥ねるのは皇家の名が廃るという物であるからである。


 つまり、フリードルは貴族であり、私は皇家であるからして、全力の対局はできないのである。


 大変悲しい事ではあるが、しかしフリードルとの全力の対局はできずとも、対局できる機会自体はある。


 私が側室皇家として斉国の大使館にて毎年恒例の初夏の将棋大会に来客として行き、ごり押しで『優勝者には私と対局できる権利』を景品に加えるのである。


 既に手は打っている。母上と関連大臣には迷惑を掛けたが、とりあえず今の所は問題はない。



 さて、これでガストビ商会の側室皇家襲撃事件の顛末は終わった。


 お次はミシェル・テリエ=モンテクッコロと姉ライノーラ・モンテクッコロ=テリエの処罰……処罰? 待遇と言うべきか。


 これも結果だけで言えば、私の部下。もとい、婚約者のマウテリッツ伯の配下になる事となった。


 ミシェルの場合は学園卒業後は近衛騎士団に進む筈であったのだが、今回、『銀仮面とかいう謎の正義の味方を名乗って犯罪者どもを私的に懲らしめていたがために皇家側室の人間が襲われた』のであるからして、本来なら死罪すら命じられる程ではあるが、襲われた本人ヴィヴィアーヌが許すという恩赦が発動し、姉の方の婚約者であるマウテリッツ伯の元に仕える事でその処罰が済んだのである。


 ……あれ、これって普通、ヴィヴィアーヌの婚約者の方に仕えるのが筋ではなかろうか……?


 そう思ったが、事が事であるし、モンテクッコロ伯爵とマウテリッツ伯とは友人であり、ヴィヴィアーヌの婚約者は今の所決まってないので『そういう事』になったのである。本人もそれでいいって言ってるし。


 一応、今ミシェルは14歳であるが、15歳の卒業まで自宅謹慎させるそうである。そもそも基礎学問は既に家庭教師で学習済みで、学園の役目は(学問を究めたいと思わなければ!)社交性を高める事ぐらいしかないので、正直、このまま自宅謹慎したままでも卒業はできるのである。貴族だからできる技らしい。


 姉のライノーラの方も半ば自主的にマウテリッツ伯の下に仕えるという事になったが、ライノーラの場合は大学に進学しているので、それを卒業してからである。


 大学は学園と違って真面目に学問を究める為の機関というか、研究を行う為の機関であり、入ろうと思わなければ入れない特別な学問所だからである。


 

 なお、余談ではあるが、モンテクッコロ姉妹は私の正体を知って大変驚いていた。無理もない。まさか姉の方が仮面かぶって銀狐とか言ってミスリル刀振り回していたのだからそれは驚きもするものである。




 「さて……それで、今回襲撃した施設にとらわれていた奴隷と、売られかけていた貴族の子供の処遇についてなんじゃがな」


 「おう、オドレイ嬢。やっぱり以前言ってたあれか?」


 そして、今、いつものメンバーで会議をしている。題目はガストビ商会のあの施設にとらわれていた子供達である。


 あの施設は、奴隷調教施設であり、ミシェル以外にも多くの男女が囚われていたのである。


 とりあえず、身寄りのある者は親元へ返したが、それでも身寄りのない者も多くいる。


 本来ならエドワードフ商会に流してはいさようなら。ではあるが、私には妙案があった。



 「うむ、以前から伯と話を進めていた『料理店』の従業員にしてしまおうと思っておる」


 私は静かに、だが確かにそう告げたのであった。


 

つづく。

ギリギリ間に合わなくてすみませんでした。


次回は7月の29日の更新になります

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