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33.6話 実は生きてた


 今日はツイてなかった。


 食い詰め物の俺は、羽振りのいい奴隷商人のしがない兵隊をやっていた。


 なんでもその商人がその業界を賑わせている小娘を捕まえただとかで上機嫌だった。


 その小娘は貴族出の上物。おまけにその姉が探しに来たのでこれも捕まえたって話で、俺ら末端にも回ってくるんじゃねぇかって話で、盛り上がってた矢先の夜だった。


 仲間と「あーあ。今頃幹部様と主人様はお愉しみ中かぁ」と今日もくだらねぇ下衆みたいな話をしていた時だった。


 怪力女が現れ、仲間を皆殺しにされちまったんだ。


 こんな仕事だ。いけ好かねぇ奴や昨日今日知り合った奴もいる。浅くねぇ間柄も中にはいるが、金さえありゃ切っても惜しくはない奴もいた。


 そんな仲間達が、突如現れた怪力女に皆殺しにされた。ある仲間は剣ごとナイフでブッた斬られ、ある仲間は腕が変な方向に曲がって驚いている合間に首を変な方向に曲げられ、ある仲間は普通に刺されて殺されたり。様々な殺され方をされた。……俺は医者でもなんでもないから、中には生きてる奴もいるんだろう。現に壁にめり込んだ奴とか居たし、生きてそうな奴も居るんだろう。


 だが、そんな事より一番驚いたのは、その怪力女の表情だった。


 無表情。とも言い切れない顔だった。笑っている? いいや、違う。あの顔は……まるで……。


 『歩いてる時に虫でも踏みつけるような、悪意すらない行為』をする顔だった。


 と、まぁ無駄にカッコイイ表現するけど、俺の記憶はここ辺りで一旦消える。


 多分、半殺しにされてそのままボスの部屋に引きずられたんだろうと思う。


 

———————————————————————————————


 「うわぁ……ひどいっすね。これ」


 「ああ、全部あの人間の方のメイドがやった事らしい」


 二人の男……エドワードフ商会の人間が死屍累々の廊下を歩く。


 廊下には腕や首が変な方に曲がってたり、頭が明らかにへこんでいたり、胸のあばら骨が圧倒的な暴力によって折れて露わになっていたり等、文字通り見るに耐えない惨状となっていた。


 中には腕だけで済んだ者もおり、うめき声をあげている所をエドワードフ商会の人間が回収して治療を施している。


 「あのメイド、セシャソン家の出だって聞きましたが、マジっすか」


 「しい。迂闊に声に出すな。聞かれたら首がもげるぜ」


 そのような事を言いながら、二人は廊下を進み、大部屋……ここの組織のボスが使用していた部屋へと至る。


 「でけぇオーガっすねぇ……」


 「うちのボスのお達しだ。解体して豚の餌だそうだ」


 「オーガ喰うんすか、豚」


 「人間食うからなぁ。豚」


 そこにはオーガの死骸に数人の解体者が既に作業をしていた。


 「え? エサにするのは中止? なんでまた?」


 「このオーガ。薬漬けで食わせるのは駄目なんだとよ」


 二人はそのオーガの解体に参加するも、すぐにそのような報を聞く。


 「あー道理で筋肉が硬すぎるだと思ったんだ」


 「しゃーない。とりあえず、土に埋めるから解体は続行だってよ」


 こうして再び解体を開始する解体班。


 「んにしても、このオーガもあのメイドの?」


 「矢で弱らせたのは飼い主の貴族様って聞いたけどな」


 「あのメイド。なんでも『契約者コントラー』って話だぜ?」


 「『契約者コントラー』!? なんだそれは」「なんだそれ」「なんすかそれ」


 解体班は思い思いに雑談を行うが、一人の言葉に反応する。


 「んだよ、知ってるの俺だけかよ……これだから学のねー奴は……」


 「へいへい、おぼっちゃまの学にはかないませんよ」「いいから早く教えろ」


 等、減らず口を叩く解体班の面々。


 「宗教用語で、勇者との契約者って意味で、勇者様の力を一部得ている人間の事を言うらしいぜ」


 「へぇ。流石学校出てるだけはあるな」


 「勇者様は怪力だったって事か?」


 「しらねぇよ。でも太陽使って魔王倒したんだからすげぇ強かったんだろ」


 「多分、話聞いてたけど、多分そいつは『なんだかよくわからねぇが、とにかくすげぇから勇者様絡みにしちまおう』っていう話なんだと思うぞ」


 「ちげぇねぇな。こんなオーガを大体一人でナイフだけで殺るとか勇者様の力得てるからとしか考えられねぇしなぁ」


 そう言って他愛もない話をしていたが、ふいに物音がする。


 全く予期していない場所からだったので、解体班は驚く。


 「なんだ!?」


 「崩れた壁際からだ!」


 「誰か居るのか?」


 そう言って解体班の一人がオーガが破壊したとされる壁に近づく。


 「おい!人が倒れてるぞ!まだ生きてるぞ!?」


 「嘘だろ、この壁の壊れ方からすると叩きつけられた感じじゃねぇか」


 そう悲鳴にも似た驚きでもって人間を発見する。


 「おい!大丈夫か!?」


 そう言って介抱をする解体班の一人。


 「うう……はっ。俺は……!」


 「気が付いたか!?」


 「う、うわああああ!!こ、殺さないでくれえええ!!!」


 倒れていた男性が発狂したかのように悲鳴をあげる。


 「え? あ」


 解体班は気づく。


 自分たちが、解体に適した姿恰好をしている事に……。


 倒れていた男は後に語る。


 『あの日は本当にツイてなかった。怪力女に半殺しにされて、オーガに向かって投擲されて、壁に叩きつけられて、気が付いたら血まみれのエプロン姿の野郎が目の前に居るんだからよ……』


 つづく。

契約者コントラー=チート使い

契約者+前世の記憶=転生者

となっております。

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